「…トレーナーの役に立ちたくてね」

『優しいんですね。他人のために動きたいと思うなんて』

「そんなことはない……」

『どうしてですか？ホロキャスターのおかげで毎日が助かっている人はたくさんいると思いますよ』

「そう言ってもらえると嬉しいものだ。今はメガシンカのことばかりだがね」

フラダリは一呼吸おき、ワインを飲んだ

「私はメガシンカのエネルギーを平和利用出来ないかと思っているんだ」

『平和利用…ですか』

「あぁ、ポケモンはメガシンカする際に膨大なエネルギーを発生させる。それを利用出来ないかと模索している」

やっぱりメガシンカをするときは何やらエネルギーを放出しているんだ、とトワは改めて思い知らされた
あの瞬間に放出されるエネルギーはそのようなことに利用出来ると考えさせるほど価値が詰まっているのだ
トワは本当に使い方には気をつけようと思い直す

『何だかとても大変そうですね』

「今はこの地方に伝わる言い伝えや散らばっているメガストーンに関する資料集めばかりだ」

『そうやって夢中になれるものがあるっていいですね…少しだけ羨ましいです』

いくつになっても夢中なれることがあるのはいいことだとトワは思う

「羨ましい？私が？」

『…わたしはたまにこのままでいいのか？って思うことがあるんです』

アルコールが回っているのか少し饒舌になってきた
酔うと少しネガティブになる癖まで出始めた

『同じトレーナーズスクールに通っていた同級生はほとんどがちゃんと定職についたんです。ジョーイやってる子とかレンジャーの子とか』

ポケモンに関していなくても一般職についた同級生もいる

『それなのにわたしは一人旅に出てばかり…』

「結婚した人もいるんだろう」

フラダリの言葉にトワは力強く頷いた

『そうなんです。それですっ…子どもいる同級生もいるんですよ。前に会った友達には“あんたいつまでも旅するの？”って聞かれたし…』

『そういうこと言われるといい加減わたしもそろそろ同じ地に住み着いて普通に仕事した方がいいのか？って思うんです』

ふと、プラターヌに研究員に誘われたことが頭を過る

「トワの本心はどうなんだ」

『……わたしはまだ旅をしたいです。一度きりの人生好きに生きたいです』

まだ見たことのない景色を、ポケモン
様々なものとの出逢いとの感動を覚えてしまったのだ
それはもう何物にも変えられないかけがえのないものだ

「だったらそのままでいいだろう。無理に人と同じになる必要はない」

『……』

「きっと同級生の中にだってずっとトレーナーを続けたかった者だっていただろう。貴女はその人たちの叶えられなかった夢を代わりに叶える役目だってある」