act#2

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名前

『この子がオンバット…』

治療室に足を運ぶとベッドにちょこん、と座ったポケモンは大きな目でトワを迎えた

『(可愛い…)』

「洞窟にいるポケモンなんだけど…貴方初めて見るのね?」

『あ、はい…カロスは初めてで…実は図鑑もまだこちらに対応出来てなくて』

いまだに疲れのとれない身体に鞭打ち、説明する

「それは大変ね。この子はオンバットっていうポケモン。ひこうとドラゴンタイプを持っているわ」

『ひこうとドラゴン…』

トワはオンバットのそばまで行き同じ目線になるようにしゃがんだ

「この子…生まれたばかりなんだけど…」

ジョーイの声が少し沈んだ

『そうなんですか?』

初めて見るからどのくらいの大きさが平均で生まれたてなのか分からない

「えぇ…ひこうタイプやドラゴンタイプのように空を飛べるポケモンは、生まれてすぐに飛べることは、知ってるわよね」

『はい。羽のある子たちはそうですよね』

トワもひこうタイプを育てたことがあるから分かる
進化して羽が生えるポケモンも、だいたいは直ぐに羽ばたくものだ

「────この子、骨が弱いのか飛べないみたいなの」

『え────』

"飛べない"

それは羽のあるポケモンにとっては絶望的な言葉だった

『それはどうして、』

「うちにある機械だと精密検査が出来ないから何も言えないけど、羽に何か原因があるのかもしれない」

ジョーイの言葉を聞きトワはオンバットに目をやる
拾ったときは暗く泥まみれで黒く見えたが、よく見ると薄い紫や桃色の毛並みで、目が大きく愛くるしい顔をしているなとトワは思った
その大き目は不安と恐怖でいっぱいいっぱいだ

『飛べなくて、見放されたのね…』

「ふきゅう…」

飛べなくて仲間からも虐められ、洞窟から逃げて来たのかもしれない

『おいで』

そっと手を広げると、オンバットは恐る恐るその手に触れた

このまま野生に返してもその先は見えている
飛べないひこうタイプなんてすぐに餌にされるだけだ

『一人で逃げてたの?怖かったよね』

トワは優しく抱き上げ自分の体温を分けるように抱き締めた

『ねえ、オンバット』

「きゅお…」

『わたしに貴方が飛べるようになるお手伝いをさせて?そのきれいな藤色の羽で大空を飛ぶ貴方が見たいの』

「きゅ…」

『だから…わたしとカロスを旅してくれませんか?』

トワは真っ直ぐとオンバットの目を見て言った

「おん!」

オンバットの大きな目からは大粒の涙が溢れ小さな羽でトワに抱きついた
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