act#1

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名前

『毛玉…?』

大雨の中、小さな黒い毛の塊が森の中に落ちていた
辺りはもう暗くなってきて、そろそろ街を見つけないと、どこか雨宿りの出来るところで野宿をしなければならない状況だった

「─────ぉ…」

黒い毛玉は小さく鳴いた
まだ、息はある
辺りにはこの毛玉と同じ個体はいないし、トレーナーらしき人間も見えない
もしかしたら、群れから見放されたのかもしれない

『死んじゃだめ…』

トワは小さな毛玉を抱き締め走り出す

カロスに来てまだ、一週間も経っていないトワの瞳には少なからず不安の色が伺える
イッシュ地方の時も遥か彼方の地で時差や、文化の違いに慣れたりするのに時間がかかった
それはこのカロスでもそれは同じ
これでもトレーナーとしては長い方だが、知らない地方をまわるとなるとそれは新人トレーナーと境遇は変わらないと思っていた

『(雨足弱くならない…)』

ランニングシューズは水分を吸い込み重い

『(セキタイタウンに戻ろう…)』

このまま野宿をして腕に抱いている子が死んでは意味がない
自分の力だけで助けられる自信はなかった
トワは急いで11番道路をセキタイタウンの方面へ走る

『負けないで…』

微かに腕に伝わる鼓動が止まないように声をかける

『助けるから…』

ばしゃばしゃと水飛沫を上げ、道路を走り見えてきたセキタイシティのポケモンセンターに走り込む

「────あら?貴方、お昼に出ていった…」

トワの姿に気づいたジョーイが話しかけた

『この子を助けて、ください』

息切れしたまま、必死に状況を伝える

「この子…オンバットね」

『オンバット…』

「かなり弱ってるわ…そこで待ってて」

ジョーイの言葉にトワは頷き、待合室のソファに腰掛けた
途端にどっと疲労感に襲われる

『え、わ』

突然、腰のモンスターボールが揺れ一匹のポケモンが出てきた

『ルカリオ…』

青く艶やかな毛並みのルカリオはきりっとした目付きでトワを睨むように見た

【ます身体を拭け】

『あ、そうだった…』

ルカリオに言われ、ようやく自分がびしょ濡れなことを思い出す

【さっきのポケモン…随分と弱っていたな…】

『オンバットっていう名前しか分からなかった』

トワはカバンからタオルを引き出し髪の水分をとりながらそう答えた
トワのポケモン図鑑はまだカロス地方のポケモンを読み取ることが出来ず、カロスにしかいないポケモンのことは殆ど無知の状態だった
知らないポケモンとの勝負はある意味で賭け事のようで、最終的には力でのごり押しになっていた

『やっぱり図鑑をバージョンアップしないと辛いね』

【そうだな】

『ここの…カロス地方のポケモンの研究の第一人者はどこの町にいるのかな』

【その人物のいる街を目指さない限りこの地方をまわるのは難しいと思う】

『仰る通りです。後でパソコン使うか…久しぶりに全力で走ったら足が、がくがくする』

随分と弱気なパートナーに、ルカリオはため息をついた

それと同時に、呼び出し音が鳴った

『終わったみたい…』

ジョーイが呼び、治療が終わったことがわかった



~END~



(小さな命とのご対面)
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