act#47
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「火だ!火が流れてきた!」
ザーブル城の奥深くの水場から、叫び声があがった
その叫びの異様さに騎士たちは顔を合わせ、水場に駆けつけた。
そして彼らは用水路の口から、水の流れに乗って、火が燃え上がり、流れ出してくるのを見た
これがサームの戦法だった
地下用水路に油を流し、それに火をつけたのだ
地下用水路は、天井と水面の間に空気がたまっているので、火が消えない
燃える火は水に乗って流れ、水場を構成する木材に、燃え移った
水場にかけつけたボダンは、それがパルス人の策略であることをさとり、歯ぎしりした
「おのれ、異教徒よ、狡猾な真似を!」
罵ったところで、火がおさまるわけではない
城内には煙が立ち込めていた
「火を消せ!はやく火を消さぬか」
とはいっても、なまじ水をかければ火は燃えひろがるばかりである
混乱の中々 、風を切る羽音がして、消火を指示していた騎士の顔面に突き立てった
騎士は絶叫をあげて水場に転落し、火柱と水柱の中に姿を消した
仰天していると、別の地下用水路の口から現れた甲冑の群を目にして、恐怖におちいった
「異教徒どもが侵入してきたぞ!」
そう叫んだ騎士は、アリアスの長剣で左肩を割られ、血と悲鳴を撒き散らして倒れた
城内に侵入してきたパルス人たちの姿を見て、回廊のなかにいたボダンは動転した
彼は多くの異教徒を拷問にかけたり殺してきたが、武器を持った相手とは戦ったことがない
ふせげ、と声高く命令しながら、いつの間に姿が見えなくなってしまった
だが、他の騎士たちは狼狽しつつも、剣を抜き放った
「神よ、守りたまえ!邪教徒どもを撃ち倒す力を、我らに貸したまわんことを」
すさまじく血なまぐさい戦闘が展開された
聖堂騎士団は守勢にまわったが、異教徒たちに降伏しようとしなかった
剣と剣が撃ちかわされ、槍と槍がからみあい、金属の響きは城内に満ちた
石の床には血が飛び散り、その上に死者と負傷者の身体が倒れこむ
『ボダンはどこにいる?ボダンを逃がすな』
命令しつつアリアスは剣をふるい続けた
絶対に成さなければならない目的があるアリアスに怖いものなどなく、迷いなく剣をふるった
傍にカーラーンがいるという安心もあるのだろう
二人は互いを守りつつ次々と聖堂騎士団を斬っていき、二人の前後左右には聖堂騎士団の吹き上がる血が赤い霧をつくった
『お前の息子は、なかなかに剛腕だな』
アリアスに続きパルス騎士も武器をふるって、ルシタニア騎士たちを撃ち倒していった
中でもザンデの働きは、とくに目覚ましかった
「息子はダリューンとの一騎打で完敗し、貴女の役に立てなかったと後悔していましたからな」
『そうなのか』
「えぇ、それからは剣の技をきわめるよりも、その腕力を生かすことにしたそうです」
いまザンデがふるっているのは一本の巨大な棍棒だった
樫の木でつくられ、牛の革を巻いて強化し、先のほうに何本も太い釘が植え込まれている
これで叩き殴られたルシタニア騎士の死体がザンデの周囲に積み重なれていた