act#41
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『面倒だな』
アリアスははっきりとそう答えた
その答えに二人の万騎長は苦笑いを見せた
宛がわれた別宅の中庭には、まだ寒いが暖かな日差しが差し込んでいた
「そんなはっきりと申されなくとも…」
カーラーンはため息をついた
アリアスが二人の万騎長に持ちかけた相談内容は、ギスカールから命されたもので、パルス北西に位置するザーブル城の攻囲だった
今、ザーブル城には王都を離脱したボダンが聖堂騎士団二万の兵とともに立て込もっているのだ
ギスカールはその討伐をアリアスに依頼してきたのだ
『引き受けるべきなのか…?』
「お引き受けくださいませ、アリアス様」
しかし、サームは即答した
カーラーンもそれに頷く
『しかしだな…ギスカールの本心は知れている。わたしたちと聖堂騎士団を鉢合わせて、共倒れすることだ……何か考えがあるのか?』
アリアスはサームを見た
「聖堂騎士団を討つという大義名分があれば、アリアス様は公然と兵を集めることが出来ます。ルシタニア人どもの費用を使って、兵士と武器を揃えることが出来ます」
『確かにわたしの元にはまだ兵士は少ないな……』
「貴女の最終目的のためにはもう少し軍として人を集めるべきかと」
カーラーンが付け加えるように言う
「それに聖堂騎士団もルシタニア人なのです。彼らを討ち滅ぼすことが出来れば、それもパルスのためになります」
『そうだな……』
連れてきたり、追い出したりと、忙しいものだ、と心の中でごちる
サームは考えるアリアスに更に続けた
「貴女は一度、ギスカール公のために、神旗をお守りしました。そのときの恩もまだ返してもらってないのでしょう」
『あぁ』
「いくらでも費用を、請求出来ますし、更に恩を売ることも出来ましょう。聖堂騎士団の立てこもるあの城を、要求なさるのも一案かと存じます」
『なるほど』
それでもまだ、返事は出さない
「アリアス様、まさか負ける…とでもお考えですか?」
カーラーンが、そう聞いた
『わたしだって万が一くらい考える』
「心配なさるな、アリアス様」
弱気なアリアスにまるで、喝を入れるようにサームは言った
「貴女の真の目的に、比べれば城一つ落とすくらい軽いものだと思いませぬか」
"真の目的"────
その言葉は、アリアスを動かす
「それに…二人の万騎長がついておるのですぞ」
サームとカーラーンは、真っ直ぐとアリアスを見つめる
『そうだったな…弱音を吐いてすまない。今回の件、引き受けるとギスカールに伝えてくる』
アリアスはそう言いながら、席を立った
サームも立ち上がろうとするが、アリアスは、一人で良いと制し、その場を去った
「……サーム、おぬしいつの間にそんな過保護になったのだ」
立ち上がり、ついて行こうとしたサームを見かねてカーラーンは言った
「それに、こんなに城攻めに乗り気だとは思わなかった」
「…王弟殿下の探る目が、な」
サームはぼそりと呟いた
「王弟殿下の?アリアス様がアルスラーン殿下をあんなに追い回しておきながら、大した成果も得ぬままペシャワールから戻ったからか?」
「それもあるが…そうではない」
「…サーム?」
「あの男、そろそろアリアス様の本当の正体に気づきそうだ。たまに好奇の目を寄せている」
よくそこまで見ていたな、とカーラーンは驚くような呆れたような表情を見せた
「ザーブル城を落とせば、しばらくはあの男の目からは離れて行動も出来るだろう」
サームはそう言い立ち上がった
「サーム…おぬし…」
「さ、軍を整える準備をせねばな」
サームはカーラーンの言葉を聞こえないふりをして、中庭を後にした
もちろんアリアスは自分が話題になっていることには気づいていない