『怪我でもしているのか』

アリアスは羽や胸元、足を見るがその様子もない
いくら空へ向けて腕を出しても離れようとしなかった

「ずいぶんと貴女に懐いているようだ」

『わたしに…？』

スルーシは嬉しそうにアリアスに頬ずりをする

『…お前には待っている主人と兄弟がいるのだろう』

アリアスはスルーシを諭すように言う

『それにペシャワールにはお前が本当に仕えて、役に立たねばならぬ方が向かっているのだ』

カーラーンはその姿に、胸が苦しくなる

「スルーシは貴女の役に立ちたいのだと思います」

『わたしの…優しいのだな、スルーシは』

アリアスは感謝の意味を込めて、優しく撫でた

『勝手にすれば良い。餌もたまにはくれてやるが生きたければ自分で取るのだぞ。つまらなくなったら好きなときにペシャワールへ帰れ』


そう言うとスルーシは天高く飛び、バルコニーの上を旋回し始めた

「また随分と面白いものを味方につけましたな」

『動物は好きだ。火事から逃げ延びたときも傍にいてくれたのは狼だった』

アリアスは髪を風になびかせながら言う

『しばらくは好きにさせておこう。わたしに仕えても意味がないと気づけば、いなくなるだろう』



こうしてアリアスは一羽の鷹に好かれ行動を共にすることになるのだった



～END～



(一羽と一人と)