act#4
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それは静かな夜だった
『タハミーネ様っ』
「アリアス…」
王宮の離れをアリアスはこっそりと訪れていた
この離れには、アンドラゴラスが連れてきたカユーマルス公の妻であるタハミーネが軟禁状態で暮らしていた
アリアスはアンドラゴラスは苦手だったが、タハミーネにだけはなついていた
「今日は何を持ってきてくれたの?」
タハミーネもアンドラゴラスにすら冷淡な態度をとっていたがアリアスには優しかった
いつもこっそりと自分を気にかけてくれる小さな王女を我が娘のように可愛がっていた
『今日は四葉のクローバーを持ってきたのです』
アリアスは絹張りの椅子に腰かけるタハミーネに近より、その前に跪つき四葉のクローバーを渡した
『本で読んだのです。四葉のクローバーは数が少なく、それを見つけた者は幸せになれると』
「そうだったの」
『タハミーネ様にもわたしの幸せをお裾分けしたくて』
アリアスは四葉を持つタハミーネの手をぎゅっと握った
アリアスはこの離れから自由に行動出来ないタハミーネをいつも可哀想だと思っていた
このようなことを目にすると王族の人間だろうと女性はいつも政治や謀略の道具として扱われ、自由を奪われてしまうのだ
「貴方は本当に優しい子ですね」
タハミーネは優しい手つきでアリアスの黒くしなやかな髪を撫でた
『タハミーネ様の手は柔らかくて大好きです』
アリアスは産まれて直ぐに母を亡くした
そのせいか母からの愛に飢えていた
乳母も厳しさと優しさを兼ね備えた人ではあったが、こうして頭を撫でたりはしてくれなかった
『タハミーネ様』
「なんでしょう」
『わたくしが女王となったらタハミーネ様のような扱いをうける人たちを助けたいのです』
「アリアス…」
『女性を政治の道具になんかさせません。自分で好きな道を選べる…そんな国にしたいのです』
アリアスの言葉にタハミーネはじんわりと、目頭が熱くなるのを感じた
あぁ、どうしてこの子はこんなにもわたしに優しいの───
「貴方が妾の娘だったらどれだけ幸福でしょう」
タハミーネは自分の膝の上でそう意志を示したアリアスの頭をぎゅっと抱き締めた
『わたくしはタハミーネ様と出会ってから、いつも母上が生きていたらこうしてくれるのだろうと思っていました』
「あぁ、妾の可愛いアリアス…どうか素敵な女王になってください」
『タハミーネ様が望むのなら必ずなってみせましょう』
「決して逆風や王弟殿下には負けてはなりませぬ」
タハミーネは何度も慈しむようにアリアスの髪に指を絡ませる
『はい、負けませぬ』
「貴方は妾の可愛い娘────そんな貴方にだけ、妾の秘密を教えてあげましょう」
そう言ったタハミーネの顔は泣きそうだったが抱き締められているためアリアスにはその表情が見えなかった
「──────」
『───────…!』
「良いですか、妾と貴方の二人だけの秘密です」
『決して誰にも話しませぬ。わたくしと…母上だけの秘密です』
二人はそっと額を合わせ、秘密を誓った
その夜、アリアスが離れから出ていく姿を誰かが見ていることなど気づきもせずに────
~END~
(火種はそこに)