アンドラゴラスが殺害された後、イノケンティス王とボダン大司教の対立は激しくなるのは目に見えている
イノケンティスはタハミーネとの結婚を望む
ボダンはそれに反対し、妨害しようとする

それを影から見下すのは、面白そうだ

イノケンティスはタハミーネにそそのかされて、ボダンを追放するか
むしろそれでことが上手く運べば、ルシタニア兵をパルスから追い出せるかもしれない
そうなれば、女が国を動かすのはやはり美貌、ということが事実となる
一方、ボダンはどう出るのか
みすみす追放を受け入れる訳などないからイノケンティスを破戒者、背教者と決めつけ、王位からひきずりおろそうとするか
その後に彼の意思通りに動かせる駒がいるだろう

どちらにしろ、結局タハミーネが幸せになる訳ではない

『…カーラーンが殺しそこねたアルスラーン一党にはアンドラゴラスとタハミーネが生きていることは知られました』

「あぁ」

『それはパルスにいる諸侯にもいずれ伝わることでしょう───私が何を考えているか…分からない貴方ではないでしょう』

諸侯の中にはアンドラゴラスの世に恩恵を受けた者も多い
そうすればアルスラーンに付くよりも 、国王につくと考える輩もまだ沢山いるだろう
パルスの残党を二極に分断し王族同士がぶつかり、勝手に滅ぶかもしれないことだってギスカールは考えているだろう

結局、ギスカールは部屋を出ていった
直ぐの返事は期待していなかったからである
アリアスは一人になり、仮面を外し残りの茶を一気に飲んだ

誰がそう簡単にアンドラゴラスの命を渡すものか────

アンドラゴラスには生きてやってもらわねばならないことがあるのだ
それが済むまで殺すことはさせない



『ただで死ねると思うなよ────』



～END～



(軍師の駆け引き)