act#21
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「はい。なんでもボダンとかいう司教が焚書の準備を今行っておるようで間に合ってようございました」
『そうか。猿に渡らぬ前に終えたか』
そう、アリアスが密かにカーラーンの部下にさせていたのは王立図書館の書物類を全て入れ換えるということだった
ルシタニア軍がパルスに侵攻しエクバターナを占領すれば必ず王立図書館が餌食になるのは目に見えていた
ルシタニアからすれば全て異教徒の書邪悪な書物で、燃やして当たり前のものとして焚書する────
アリアスはそれを危惧し密かに図書館の中身を入れ換えさせていたのだ
「今晩にでも焚書の儀が行われるようです」
王都エクバターナの王立図書館にはパルスの建国以前から長きに渡って蓄積された人間の思椎と感性の記録である
歴史、詩、地理、医学、薬学、哲学、農事、工芸───本当に様々な知識の詰まったそれらをむざむざと侵入者に燃やされる訳にはいかなかった
何しろあの図書館にはアリアスは幼い頃、世話になったのだ
自分の知識を増やすのと時間潰しにはもってこいの場所だった
そして、幸か不幸か火事から逃れて生きるための術にもなった
仮に燃やされず残されて、ルシタニアの手にパルス国内や近隣諸国の詳細な地図が渡るというのも避けたかった
『そうか。ではあの猿は今晩喚きながら意味もなくひたすらに紙を燃やすのか』
アリアスは仮面越しに楽しそうに笑った
「銀仮面卿」
騎士はアリアスの少し後ろから呼んだ
『なんだ』
「書物の代わりにしたものはどこから集めたのですか」
ふと疑問に思っていたことを聞く
なにせ王立図書館には千以上の書物があるのだ
『お前は面白いことに疑問を持つな』
「申し訳ありません!その、数が数なもので…」
『入れ換えたのは城下の私塾で子どもたちが書いたパルスの文字や数式だ』
「え」
『それから商人たちの古い商売の記録…あぁ、あと貴族どもにこの際燃やして欲しいものはないかと聞いて集めたものだ。どうせ奴ら中身の確認などせん』
仮面越しから聞こえてきた答えに騎士は目を丸めた
「では、あのボダンとかいう司教は本当に喚きながら意味を成さぬものを燃やすのですね」
騎士も込み上げてくる笑いを押さえながら言う
『今夜は本物の猿になるという訳だ』
喉を鳴らしながら笑う姿は後ろから見ても恐ろしく絵になるな、と騎士は思った
今晩、その書物の焚書に踊らされるのがルシタニアの司教だけではないことはまだ誰も知らない
~END~
(打つ手はいくらでも)
『そうか。猿に渡らぬ前に終えたか』
そう、アリアスが密かにカーラーンの部下にさせていたのは王立図書館の書物類を全て入れ換えるということだった
ルシタニア軍がパルスに侵攻しエクバターナを占領すれば必ず王立図書館が餌食になるのは目に見えていた
ルシタニアからすれば全て異教徒の書邪悪な書物で、燃やして当たり前のものとして焚書する────
アリアスはそれを危惧し密かに図書館の中身を入れ換えさせていたのだ
「今晩にでも焚書の儀が行われるようです」
王都エクバターナの王立図書館にはパルスの建国以前から長きに渡って蓄積された人間の思椎と感性の記録である
歴史、詩、地理、医学、薬学、哲学、農事、工芸───本当に様々な知識の詰まったそれらをむざむざと侵入者に燃やされる訳にはいかなかった
何しろあの図書館にはアリアスは幼い頃、世話になったのだ
自分の知識を増やすのと時間潰しにはもってこいの場所だった
そして、幸か不幸か火事から逃れて生きるための術にもなった
仮に燃やされず残されて、ルシタニアの手にパルス国内や近隣諸国の詳細な地図が渡るというのも避けたかった
『そうか。ではあの猿は今晩喚きながら意味もなくひたすらに紙を燃やすのか』
アリアスは仮面越しに楽しそうに笑った
「銀仮面卿」
騎士はアリアスの少し後ろから呼んだ
『なんだ』
「書物の代わりにしたものはどこから集めたのですか」
ふと疑問に思っていたことを聞く
なにせ王立図書館には千以上の書物があるのだ
『お前は面白いことに疑問を持つな』
「申し訳ありません!その、数が数なもので…」
『入れ換えたのは城下の私塾で子どもたちが書いたパルスの文字や数式だ』
「え」
『それから商人たちの古い商売の記録…あぁ、あと貴族どもにこの際燃やして欲しいものはないかと聞いて集めたものだ。どうせ奴ら中身の確認などせん』
仮面越しから聞こえてきた答えに騎士は目を丸めた
「では、あのボダンとかいう司教は本当に喚きながら意味を成さぬものを燃やすのですね」
騎士も込み上げてくる笑いを押さえながら言う
『今夜は本物の猿になるという訳だ』
喉を鳴らしながら笑う姿は後ろから見ても恐ろしく絵になるな、と騎士は思った
今晩、その書物の焚書に踊らされるのがルシタニアの司教だけではないことはまだ誰も知らない
~END~
(打つ手はいくらでも)