act#16
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それは望まぬ形の凱旋だった
あの頃、無邪気に駆け回っていた王宮にこのような形で訪れるとは思ってもいなかったことだった
辺りからは煙が多数上がり、剣のぶつかる音と人の声が絶えない
アリアスは一人、遠くで繰り広げられる二人の万騎長の戦いに目を向けていた
外套の下に槍を隠して
「カーラーン、おぬし、なぜ国を売った!?」
城の警護に当たっていた万騎長、サームがそう怒りの籠った声で投げ掛けた
「ゆえあってのことよ!!おぬしにはわからぬ!!」
「おおっあたりまえだ!!わかるものか!!」
二人の万騎長はもう何度、剣先をぶつけあったか記憶になかった
サームの目には怒りが籠っている
当たり前だ
目の前のカーラーンが裏切ったから、こうして城は攻められ、ルシタニア軍に侵攻されているのだから
しかし、全てカーラーンが悪い訳ではない
『(巻き込んだわたしが悪いのだ…)』
カーラーンだってこんな形で同じ職を全うするサームと剣を交えたくなどなかっただろうに…
「降服しろ、サーム。……こちらに付けばおぬしの命も地位も保証してやる」
「"こちらに"…だと?」
サームはカーラーンの言葉に眉間の皺を増やした
辺りはもう、カーラーンの部下に囲まれている
……その奥からアリアスが見ていることに気づかずに
「…おぬしは誰に忠誠を誓ったのだ」
カーラーンの低い声がそう問う
「何を今さら!俺はパルスの国王に忠誠を誓っている!当たり前のことを、」
「本当にそうなのか!?忘れたのか!?」
サームの言葉を踏みにじるようにカーラーンは声をあげた
「っ…カーラーン、おぬしルシタニアの蛮人共と付き合ってイアルダボード教にでも忠誠を誓ったのか?」
サームはカーラーンが本当にルシタニア側についたものと信じ、剣を構え直した
「犬が人間の地位だの忠誠だの、片腹痛い!」
罵声を投げつけるとサームはカーラーン目掛けて剣を振るうがカーラーンはそれを避けた
その隙をつき、サームは前方突破を試みてカーラーンの部下を斬っていく
「待て!!サーム!」
カーラーンの制止を無視し、目の前の兵を斬ったサームの腹を一本の槍が貫いた
鎧を突き抜けたそれは、美しい弧を描いていた
「何……者……」
自分を貫いた槍がやって来た方へサームは倒れながら視線をやった
その先には銀の仮面をつけた黒い剣士が立っていた
サームはその者が誰なのか知る前に地へ倒れ、そのまま別の兵に背後を斬られ、意識を闇へと投げた
「…銀仮面卿」
アリアスはコツコツと、ブーツを鳴らし倒れたサームを銀仮面の奥から見下ろす
『ここを突破されてルシタニア兵共の手にかかるのは困る』
アリアスは静かにそう言った
『離れへ運んでいけ。治療も忘れるな』
「はっ」
『俺はタハミーネを探す』
「私も後で向かいます」
カーラーンとはそこで別れ、アリアスは混乱の王宮へと姿を消した
カーラーンは重症のサームを部下に担がせ、人目につかない道を進む
「────巻き込んですまぬな、サームよ」
その呟きは、混乱に掻き消された
~END~
(また、一人巻き込まれる)