act#15
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王都の外が兵たちで騒がしい中、アリアスはカーラーンとその部下とともに、地下水道を進んでいた
この地下水道は王族にのみ伝えられる抜け道でアリアスも昔から知っている道だった
地下水には道を照らす、炎が揺らめいている
『────誰かくるな』
遠くから自分たち以外の足音と声が木霊して、聞こえてくる
男と女、一人ずつだ
「恐らく、王妃かと…」
『王妃が…』
これでもしここでタハミーネと再会したら、タハミーネは自分を覚えているだろうか
それともパルスを襲った者として嫌悪の眼差しを向けられるのだろうか
どちらしにろ、身の安全だけは確保してあげたいもの───
『王妃に危害は与えるなよ』
「はい」
水路を進むと二人の言い合う声が聞こえてきた
…果たして、タハミーネはこんなに声を荒げるような人だっただろうか
『これはこれは……光栄あるパルスの王妃様は民衆を捨て、自分ひとり脱出なさるおつもりか』
王妃と思われる女は黒い外套を着ていた
後ろにはお付きのような若い男が一人濡れて座り込んでいた
服装からして、城の者ではない様子
『あのアンドラゴラスめと似合いの夫婦と言うべきだな。片や兵を捨てて戦場から逃げ出し、片や人民を放り出して地下へもぐる…』
王族のためにこんな訳の分からぬ若い男までは巻き込むとは、エクバターナにはろくな宰相すらいない様子
『王座に座る者の威厳はどこへやら』
「…そなたは何者です!?」
王妃と思われる女が声をあらげた
…この時点でアリアスはなんとなくこの者が王妃でないと気づいていた
『パルスに真の正義を布こうと志す者だ』
王妃と思われる女はその言葉に驚き、アリアスの後ろに控えるカーラーンに目をやってしまった
「万騎長カーラーン様…?なぜこのような所に…」
『カーラーン"様"だと…』
アリアスは自分の予想が当たり、王妃のふりをした女の外套に手をかけた
『王妃ではないな!』
「きゃっ」
外套に隠れていた顔は綺麗な顔だったが、王妃ではなかった
大方、王妃つきの宮女だろう
本物が隠れる時間稼ぎにされたのがわかる
王族とは本当に、他人をいいようにしか使わない
『俺の役に立たぬ者はいらん…』
「…えっ」
アリアスは女の首根っこを掴んだ
『仕える主君を間違えた己を呪え!』
そしてそのまま首を絞める
「あ…あう…」
首の骨が折れる出前で宮女の意識は落ち、そのまま後ろに控えるカーラーンの部下へと引き渡した
起きるまでにタハミーネが見つからなかったらもう一度、タハミーネの場所を聞くだけ聞こう
『おい、そこの若いの』
アリアスは女の護衛を引き受けていた男に声をかけた
『パルスの者じゃないな』
「ただの旅の楽士さ」
『ほう……また随分と悪いときにこんなところへ来てしまったな』
アリアスはそう話しながら自分の服のポケットを漁る
「あんたがそうさせたんじゃないのか?美人まで連れてこうとするし、詫びとしてその面拝ませてくれよ…おっと」
楽士は持っていた灯りを投げようとした
しかしその前に胸元に金貨の入った袋が投げつけられた
『パルスの民でも宮廷に仕える者でもないのに、このような損な役回りを引き受けてくれた礼だ』
「!」
『こちらも無益な血は流したくないので、それで手を打ってくれ』
アリアスはそう言い、王宮へと続 く水路を進もうと踵をかえした
「待て、俺をそう簡単に逃がしておいていいのか」
『二度も言わせるな。それに、旅の楽士なら長生きしろ』
アリアスは仮面越しに少しだけ笑みを見せ、今度こそ本当にその場を去った
「なんだか拍子抜けだな…」
楽士はぽつり、と呟き金貨の入った袋を顔の前まで持ってくる
「なかなか趣味の良い香だ────」
タハミーネのよりよっぽど麗しい香りが金貨の袋からほのかに香った
「いずれはその素顔を拝ませてもらおう、銀仮面の君──── 」
~END~
(楽士との邂逅)
この地下水道は王族にのみ伝えられる抜け道でアリアスも昔から知っている道だった
地下水には道を照らす、炎が揺らめいている
『────誰かくるな』
遠くから自分たち以外の足音と声が木霊して、聞こえてくる
男と女、一人ずつだ
「恐らく、王妃かと…」
『王妃が…』
これでもしここでタハミーネと再会したら、タハミーネは自分を覚えているだろうか
それともパルスを襲った者として嫌悪の眼差しを向けられるのだろうか
どちらしにろ、身の安全だけは確保してあげたいもの───
『王妃に危害は与えるなよ』
「はい」
水路を進むと二人の言い合う声が聞こえてきた
…果たして、タハミーネはこんなに声を荒げるような人だっただろうか
『これはこれは……光栄あるパルスの王妃様は民衆を捨て、自分ひとり脱出なさるおつもりか』
王妃と思われる女は黒い外套を着ていた
後ろにはお付きのような若い男が一人濡れて座り込んでいた
服装からして、城の者ではない様子
『あのアンドラゴラスめと似合いの夫婦と言うべきだな。片や兵を捨てて戦場から逃げ出し、片や人民を放り出して地下へもぐる…』
王族のためにこんな訳の分からぬ若い男までは巻き込むとは、エクバターナにはろくな宰相すらいない様子
『王座に座る者の威厳はどこへやら』
「…そなたは何者です!?」
王妃と思われる女が声をあらげた
…この時点でアリアスはなんとなくこの者が王妃でないと気づいていた
『パルスに真の正義を布こうと志す者だ』
王妃と思われる女はその言葉に驚き、アリアスの後ろに控えるカーラーンに目をやってしまった
「万騎長カーラーン様…?なぜこのような所に…」
『カーラーン"様"だと…』
アリアスは自分の予想が当たり、王妃のふりをした女の外套に手をかけた
『王妃ではないな!』
「きゃっ」
外套に隠れていた顔は綺麗な顔だったが、王妃ではなかった
大方、王妃つきの宮女だろう
本物が隠れる時間稼ぎにされたのがわかる
王族とは本当に、他人をいいようにしか使わない
『俺の役に立たぬ者はいらん…』
「…えっ」
アリアスは女の首根っこを掴んだ
『仕える主君を間違えた己を呪え!』
そしてそのまま首を絞める
「あ…あう…」
首の骨が折れる出前で宮女の意識は落ち、そのまま後ろに控えるカーラーンの部下へと引き渡した
起きるまでにタハミーネが見つからなかったらもう一度、タハミーネの場所を聞くだけ聞こう
『おい、そこの若いの』
アリアスは女の護衛を引き受けていた男に声をかけた
『パルスの者じゃないな』
「ただの旅の楽士さ」
『ほう……また随分と悪いときにこんなところへ来てしまったな』
アリアスはそう話しながら自分の服のポケットを漁る
「あんたがそうさせたんじゃないのか?美人まで連れてこうとするし、詫びとしてその面拝ませてくれよ…おっと」
楽士は持っていた灯りを投げようとした
しかしその前に胸元に金貨の入った袋が投げつけられた
『パルスの民でも宮廷に仕える者でもないのに、このような損な役回りを引き受けてくれた礼だ』
「!」
『こちらも無益な血は流したくないので、それで手を打ってくれ』
アリアスはそう言い、王宮へと続 く水路を進もうと踵をかえした
「待て、俺をそう簡単に逃がしておいていいのか」
『二度も言わせるな。それに、旅の楽士なら長生きしろ』
アリアスは仮面越しに少しだけ笑みを見せ、今度こそ本当にその場を去った
「なんだか拍子抜けだな…」
楽士はぽつり、と呟き金貨の入った袋を顔の前まで持ってくる
「なかなか趣味の良い香だ────」
タハミーネのよりよっぽど麗しい香りが金貨の袋からほのかに香った
「いずれはその素顔を拝ませてもらおう、銀仮面の君──── 」
~END~
(楽士との邂逅)