SS(あんスタ)
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今ほどスマホの充電をしっかりしておくべきだったと思ったことはない。
影片さんから借りたスマホで調べ物をして、タブを閉じようとした時だった。操作をミスして別のタブを開いてしまったのだ。すぐにブラウザ自体落としてしまえば良かったのだけど、それに目を引かれてしまったのがダメだった。
私にはあまり馴染みのないサイト。ボイスだとか同人だとか表示されている。何かの購入履歴……だと思う。並んでいる中で数が多い単語は「お姉さん」だとか「年上彼女」あたり。「甘やかされる」という言葉も多いのかも。
「プロデューサー、調べ物終わったん?」
「あっ! はい、終わってますよ。貸してくれてありがとうございます」
素知らぬ顔で新規タブを開いた状態にして返す。私の役に立てて嬉しい、などとふわふわした笑顔を見せてくれる。そんな風にしているのに、実際は癒しを求めているんだと思うとなんとかしてあげたくなった。
その場は特に触れることなくやり過ごし、後日影片さんを私より近くで見ているであろう人へ尋ねることにした。
「影片の疲れ? 定期的にメンテナンスはしているし、君が仕事量を調整してくれているから、気にするほどでもないよ」
多分これは身体的な疲労を言っていると思う。私はメンテナンスの全容について知らないけれど、メンテ後は影片さんのコンディションが見た目の面で良くなっているから、カウンセリングのような面はないと思っている。その意図がなくても影片さんならメンテナンスでメンタル面を回復してそうなところはあるけれど。
「精神的にはどう思います?」
「流石にはっきりとは分からないね。彼をよく見ている君がそう思うのならそうかもしれないけれど」
君に労ってもらえたらあの子も喜ぶよ、と作業を続けながら斎宮さんは小さく笑う。私よりも斎宮さんの方が良さそう、なんてことはその笑顔の前で言えなかった。
それから私は勉強した。記憶を頼りにあの時見たサイトへ辿り着き、まずは影片さんが見ていたものの属性とあらすじを確認。年上の女性に甘やかされる、みたいなのだと恋人関係にあるものがほとんど。当たり前だけれど。膝枕だとか耳かきとかは立場上できない。
色々と見ていたものの、できることは極力柔らかい声と態度でいることくらいしかないように思えてきた。それは普段の接し方とあまり変わらないが、仕事仲間に対して距離が近すぎても良くないのでその方向で行くことにする。
そうして1週間ほど。目に見えて影片さんの調子が良くなったとか、そういったことは起きていない。疲れていないかと聞く頻度を増やしたけれど、「なんか最近過保護やね」ときょとんとした顔で言われるだけ。方向性が違うのかもしれないと色々模索していた。
ある時、影片さんと一緒に行った現場の近くに公園があった。空き時間に見に行きたいと影片さんの希望で向かうと、何組か親子連れがいた。遠巻きに見ている私たちには誰も気づいておらず、それぞれで遊んでいる。
そんな子どもたちに影片さんは優しい眼差しを向けていた。誰もいなければ少し遊びたかったと言っていたが、この光景を見てみたい気持ちもあったのだと思う。
「ええなぁ」
ぽつり、羨むような声音だった。慌ててその視線の先に目をやると、大人に頭を撫でられている子どもが見える。
そこで1つ思い出す。彼の幼少期はあまり大人に甘えられなかったものだったらしいこと。ぼんやりした表現なのは、本人から詳しく聞けていないからだ。辛かった頃のことは話したくないだろうから今でも深掘りはしないでいるけれど。
そんな経験をしているから、色々な媒体で誰かに甘える体験をしたがっているのかもしれない。ようやく点と点が結びついたような気がしてすっきりした気分だ。
……いや、行動原理が分かったのは良いけど、それをどう受け止めるのかが解決していない。私は大人と言える歳ではあるものの、影片さんとはそれほど離れていない。だから彼の甘えたい欲に対してうまく対応できる気がしない。
「プロデューサー、そろそろ時間やで」
「あっ、そうですね。現場に戻りますか」
この件は一旦保留。とりあえずは目の前の仕事をこなしていかないと。
それからしばらく経つ。特に何もしないまま仕事をこなす日々だった。割と大きめの仕事が2人に回ってきたので、顔を合わせることも少なかった上あまり気遣う余裕もなかった。
そして今、修羅場を乗り越えた2人と同じ部屋にいる。斎宮さんは新しいアイデアを思いついたとかでノートへデザイン画を熱心に描き続けている。一方影片さんは机に伏してかなり疲れている様子。普段は艶のある黒髪も、少しくすんでいるように見える。そこに手を伸ばしかけて、あることを思いついた。
「んあ、今疲れとるからお師さんあんま構わんといて……ッ!?」
「すみません、疲れている様子だったので」
頭を撫でていた私の手を掴んだまま、影片さんは固まる。みるみるうちに彼の頬が赤くなっていく。オッドアイが伏せられ手の力も弱まったので、その隙に抜き取る。あまり良くなかったか。効果が感じられず、仕事に戻ろうとした時だった。
「……もっかい、お願いしますぅ」
「嫌じゃなかったんですか?」
「そんな訳やないよ、ただ……びっくりしただけで」
撫でて、と体を縮こまらせてこちらへ頭を向けてくる。求めてくるなら応じない理由はない。もう一度、そっと頭を撫でる。細い髪の流れに合わせて手を動かす。
「お疲れ様です、影片さん」
「…………名前呼び、してくれへん?」
「名前ですか?」
「影片。あまり調子に乗らないよ」
気付かないうちに作業を終えていた斎宮さんがぴしゃりと言う。そして私の方にも向き直り「君もあまり甘やかさないでくれたまえ」と先ほどよりは穏やかな声音。
「これくらいええやん……」
「撫でてもらうくらいはいいよ。でもそれ以上はダメだからね」
彼女の優しさに付け込まないよ、と斎宮さんのお説教が始まってしまった。まあでも、2人ともいつもの調子に戻ってきているような気がするからこれはこれでいいのかもしれない。
影片さんから借りたスマホで調べ物をして、タブを閉じようとした時だった。操作をミスして別のタブを開いてしまったのだ。すぐにブラウザ自体落としてしまえば良かったのだけど、それに目を引かれてしまったのがダメだった。
私にはあまり馴染みのないサイト。ボイスだとか同人だとか表示されている。何かの購入履歴……だと思う。並んでいる中で数が多い単語は「お姉さん」だとか「年上彼女」あたり。「甘やかされる」という言葉も多いのかも。
「プロデューサー、調べ物終わったん?」
「あっ! はい、終わってますよ。貸してくれてありがとうございます」
素知らぬ顔で新規タブを開いた状態にして返す。私の役に立てて嬉しい、などとふわふわした笑顔を見せてくれる。そんな風にしているのに、実際は癒しを求めているんだと思うとなんとかしてあげたくなった。
その場は特に触れることなくやり過ごし、後日影片さんを私より近くで見ているであろう人へ尋ねることにした。
「影片の疲れ? 定期的にメンテナンスはしているし、君が仕事量を調整してくれているから、気にするほどでもないよ」
多分これは身体的な疲労を言っていると思う。私はメンテナンスの全容について知らないけれど、メンテ後は影片さんのコンディションが見た目の面で良くなっているから、カウンセリングのような面はないと思っている。その意図がなくても影片さんならメンテナンスでメンタル面を回復してそうなところはあるけれど。
「精神的にはどう思います?」
「流石にはっきりとは分からないね。彼をよく見ている君がそう思うのならそうかもしれないけれど」
君に労ってもらえたらあの子も喜ぶよ、と作業を続けながら斎宮さんは小さく笑う。私よりも斎宮さんの方が良さそう、なんてことはその笑顔の前で言えなかった。
それから私は勉強した。記憶を頼りにあの時見たサイトへ辿り着き、まずは影片さんが見ていたものの属性とあらすじを確認。年上の女性に甘やかされる、みたいなのだと恋人関係にあるものがほとんど。当たり前だけれど。膝枕だとか耳かきとかは立場上できない。
色々と見ていたものの、できることは極力柔らかい声と態度でいることくらいしかないように思えてきた。それは普段の接し方とあまり変わらないが、仕事仲間に対して距離が近すぎても良くないのでその方向で行くことにする。
そうして1週間ほど。目に見えて影片さんの調子が良くなったとか、そういったことは起きていない。疲れていないかと聞く頻度を増やしたけれど、「なんか最近過保護やね」ときょとんとした顔で言われるだけ。方向性が違うのかもしれないと色々模索していた。
ある時、影片さんと一緒に行った現場の近くに公園があった。空き時間に見に行きたいと影片さんの希望で向かうと、何組か親子連れがいた。遠巻きに見ている私たちには誰も気づいておらず、それぞれで遊んでいる。
そんな子どもたちに影片さんは優しい眼差しを向けていた。誰もいなければ少し遊びたかったと言っていたが、この光景を見てみたい気持ちもあったのだと思う。
「ええなぁ」
ぽつり、羨むような声音だった。慌ててその視線の先に目をやると、大人に頭を撫でられている子どもが見える。
そこで1つ思い出す。彼の幼少期はあまり大人に甘えられなかったものだったらしいこと。ぼんやりした表現なのは、本人から詳しく聞けていないからだ。辛かった頃のことは話したくないだろうから今でも深掘りはしないでいるけれど。
そんな経験をしているから、色々な媒体で誰かに甘える体験をしたがっているのかもしれない。ようやく点と点が結びついたような気がしてすっきりした気分だ。
……いや、行動原理が分かったのは良いけど、それをどう受け止めるのかが解決していない。私は大人と言える歳ではあるものの、影片さんとはそれほど離れていない。だから彼の甘えたい欲に対してうまく対応できる気がしない。
「プロデューサー、そろそろ時間やで」
「あっ、そうですね。現場に戻りますか」
この件は一旦保留。とりあえずは目の前の仕事をこなしていかないと。
それからしばらく経つ。特に何もしないまま仕事をこなす日々だった。割と大きめの仕事が2人に回ってきたので、顔を合わせることも少なかった上あまり気遣う余裕もなかった。
そして今、修羅場を乗り越えた2人と同じ部屋にいる。斎宮さんは新しいアイデアを思いついたとかでノートへデザイン画を熱心に描き続けている。一方影片さんは机に伏してかなり疲れている様子。普段は艶のある黒髪も、少しくすんでいるように見える。そこに手を伸ばしかけて、あることを思いついた。
「んあ、今疲れとるからお師さんあんま構わんといて……ッ!?」
「すみません、疲れている様子だったので」
頭を撫でていた私の手を掴んだまま、影片さんは固まる。みるみるうちに彼の頬が赤くなっていく。オッドアイが伏せられ手の力も弱まったので、その隙に抜き取る。あまり良くなかったか。効果が感じられず、仕事に戻ろうとした時だった。
「……もっかい、お願いしますぅ」
「嫌じゃなかったんですか?」
「そんな訳やないよ、ただ……びっくりしただけで」
撫でて、と体を縮こまらせてこちらへ頭を向けてくる。求めてくるなら応じない理由はない。もう一度、そっと頭を撫でる。細い髪の流れに合わせて手を動かす。
「お疲れ様です、影片さん」
「…………名前呼び、してくれへん?」
「名前ですか?」
「影片。あまり調子に乗らないよ」
気付かないうちに作業を終えていた斎宮さんがぴしゃりと言う。そして私の方にも向き直り「君もあまり甘やかさないでくれたまえ」と先ほどよりは穏やかな声音。
「これくらいええやん……」
「撫でてもらうくらいはいいよ。でもそれ以上はダメだからね」
彼女の優しさに付け込まないよ、と斎宮さんのお説教が始まってしまった。まあでも、2人ともいつもの調子に戻ってきているような気がするからこれはこれでいいのかもしれない。
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