SS(あんスタ)
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最近影片さんからの視線が痛い。前々からよく見られている感じはあったけれど、定期ミーティングの前に色々あってからは何か言いたげなオッドアイばかり見る。
他に人がいたら言いにくいことでもあるのかと思って2人きりになる場を作ってみた。あまりそういう状況はよくないと思うけど。
パソコンで作業をしつつたまに視線を向けてみる。少しずつ近くへ来ているみたいだ。そろそろ懐きそうな、そんな微妙な距離感の野良猫を相手にしているような気持ちになる。
「プ、プロデューサー」
「どうしました?」
影片さんが話し始める前に向かい側の椅子に座るよう促す。話しづらい事を言いだしそうな雰囲気が伝わってくる。作業を保存したパソコンを閉じ、話を聞く姿勢を取った。
「番、おらんの?」
「え? ああ、はい。いませんよ」
私の返事を聞くとすぐに表情が明るくなる。そんな影片さんとは対照的に私は拍子抜けしていた。最近は見かける度割と深刻そうな顔をしていたから、何を言われるかとびくびくしていたのだ。
「プロデューサー……?」
「あっ、はい」
回想もそこそこに影片さんの呼びかけで現実へと戻る。呼んだ当人はいつもの鳴き声をあげて何やら考えている様子だった。次はどんなことを言おうとしているのやら。
「お、おれ……プロデューサーの番になりたいんよ」
「なっ……」
言葉が出なかった。影片さんの事が嫌だからではない。まあ、そういう視点で彼のことを見てきていなかったため、好き嫌いでは表現できないところはある。
私の番になりたいと思われるほどに好かれている実感がなかった。斎宮さんと比べると話す回数も少ないし、話したとしても目は合わないことの方が多かった。視線に関してはそれが苦手だという点を考慮してもまあ少ない。ここ最近はほとんどないが、会った最初の頃は避けられているような感じもあった。だから目の前にいるこの人の態度が分からない。どこで好かれたのか。
「んあ……おれ、他のオメガと比べると貧相な体やけど、前よりは筋肉がついてきたって言われるし、プロデューサーの邪魔になるようなことはせえへんし、それで、えっと、」
「大丈夫、大丈夫なので少し落ち着きましょうか」
焦って色々なことを言い始めた影片さんをとりあえず止めておく。彼は耳まで赤くして、はふはふと呼吸が乱れていた。
水でも飲んで落ち着いてもらおうとしたが、私が部屋から出ていこうとすると物凄く血色のない顔を見せられたのでやめた。真っ赤になったと思えば青くなる。これ以上話を長引かせたくはなかったものの、納得のいかない部分を無くしたくて話を続けた。
「1つ聞きますけど、どうして私なんですか?」
「えっ……それは、っ」
あまり良くない聞き方をしてしまったような気がする。もごもごと口ごもる様子を見ながらなんとなくそう思った。
「前はお師さんとそうなりたいって思ってたんやけど、」
「でも斎宮さんにはもういますよね」
「せやから、その、」
「手頃なアルファと番になっておこうと?」
斎宮さんの代わりのようなものだろうか。そう思うと言い方から何から刺々しくなってしまう。せめて表情は無から柔らかいの間を心がける。それでも影片さんは今にも泣き出してしまいそうな表情。
「ちゃう、そんなんやなくて」
「……すみません。少し出ます。これ以上話したら影片さんをもっと傷つけてしまう」
制止の声も振り切って、私は部屋を出る。こんな形で担当アイドルを傷付けたくなかった。
頭の中では以前付き合っていたオメガの言葉が勝手に再生されていた。
──ナマエ? 別に好きでもないけどさ、番になれば色々困らなくて済むじゃん
なんで嫌なことはずっと覚えているんだろう。
初めての恋人で、番うことだって真剣に考えていた人の言葉だった。今思えば番に対してかなり夢を見ていた所はある。
オメガが襲われる事件が後を絶たない中、とりあえず番がいれば100%ではないにしても守られる。そういう打算的な部分のある人だったのだろうとは思うけれど、まだ夢を見ていた私とは合わなかった。割り切って考えることができなかった。そこの認識を聞くのも億劫で、それ以来私は番を迎えることなど考えなくなってしまった。
影片さんもああ見えて身の安全なんかをしっかり考えている人だったんだ。私はそれに応えられないから、いい人を見つけられるよう手伝いくらいはしておきたい。
そう決意してからしばらく経つ。私は相性の良さそうなアルファを見つけられないでいた。
「プロデューサー、時間ある?」
「大丈夫ですよ。少し移動しますか」
辺りをきょろきょろしながら影片さんが話しかけてきたので、また難しい話なのだと思い人のいない場所へと促す。私の番の話はもうあれで終結してるだろうから、プライベートな話だったりするのかもしれない。
以前のように机を挟み向かい合って座る。これくらい離れていた方が冷静に話を聞けるのだ。
「この前はごめんなぁ」
「いえ。私が嫌な言い方をしてしまったのが悪いです」
私の事情を知らなかった故の言葉だっただろう。そんな相手に酷い言い方をしてしまった私が悪いのだ。フォローのつもりで言ったけれど、それでも2色の瞳が伏せられていてうまいこと伝わっていないらしい。
「その、あの後お師さんから聞いてん」
「何の話ですか?」
「プロデューサーが前に付き合ってたってオメガの話」
「ああ……そういえば斎宮さんには言ってましたね……」
同じアルファであるからだろうか。彼には色々と話してしまうのだ。あの時は顔色ひとつ変えずに聞いてくれていたような。
「おれにも言ってほしかったなぁ」
「や、なんかその……アルファの人にするのとオメガの人にするのでは気持ちが違うというか」
オメガ全てを悪く言いたいのではないけど、どうしても愚痴っぽくなるので話したくなかった。しかもそこそこプライベートだし。でもそこを口に出してしまうと「なんでお師さんには話せるん!?」とムキになってしまいそうなのでやめておく。
「まあええよ。あの時はおれも伝え方間違えたし」
視線がぶつかる。やっぱり綺麗な目をしていると思う。いつもなら1、2秒とも持たないのに、彼は目をそらさなかった。
「この前のがあるから信じてもらえんと思うけど、プロデューサーに初めて会った時運命やと感じたんよ」
「運命、ですか」
「心臓が痛いくらいにドキドキしてな、体中をぞくぞくする何かが巡る感覚があって……今でもここは痛いけど」
そう言いながら影片さんは胸に手を当てる。私は何も言葉を返せないでいた。
「プロデューサーが考えとるみたいに守ってほしい気持ちもあるけど、でも1番はあんたとずっと一緒にいたい」
「あ〜……それだけ想ってもらえてるのは嬉しいんですけど、やっぱりプロデューサーなので……」
ここまで真っ直ぐに気持ちを伝えられたことがなくて、今更なことを口にして逃げ道を探そうとする。いや本当に今更すぎる。立場のことを気にするのはこの前の会話じゃないと。
案の定影片さんは首を傾げて「この前はそんなこと言わんかったやん」とぽつり。そして瞳をうるうるとさせ始める。
「やっぱりタイプやないんや……!」
「ちが……あ、そういう意味じゃなくて」
「やったらここまで来てなんでそんなこと言うん?」
影片さんの気持ちにしっかり向き合える自信がないのだ。彼はまたいつもの鳴き声をあげ始めた。けれど急に静かになってしまう。
「おれをこのままにしたら、いつか知らんアルファに襲われてしまうで? それでもええの?」
「ゔ、なんでそんな不穏なことを……!」
まるで自分を人質にするみたいなことを言い出す始末。事務所にとっては大事な商品なのだ、そうした事が起きてしまったらValkyrieはもとより私もどうなるか分からない。
「お師さんもプロデューサーならええって」
「親公認みたいな言い方……」
「おれの事、嫌いやないんやろ? 別に、え……えっちとかせんでもええから、うなじ噛むくらいなら」
ほら、と襟足を上げてうなじを見せつけてくる。この人、こんな風に自分のペースに巻き込むの得意だったっけ……。
諸々のことを考えると、影片さんと番うのがいい気がしてきた。一途に想ってくれているのなら、それを大切にするのが1番いい。私は両手を挙げる。
「分かりました。番になりましょう」
「……っ、ほんまに!」
「でも、いくつか条件があります」
「条件?」
「はい。うなじは噛みますけど、それ以上のことはしません」
本人がちらっと言っていたことだ。行為をしないくらい大丈夫だろう。
……と思っていたけれど、想像以上に彼はダメージを受けている。ああ、大事なことを言い忘れていた。
「20歳になるまでの話です」
「んあ〜、良かったわあ。その、できないのはえっちだけで、ちゅーとかはしてもええよね?」
「ま、まあそうですね。あと、付き合っていることはファンには分からないようにしてください」
「それも大事やね。おれ、頑張るで」
番になるから、ずっと添い遂げる覚悟があることは分かるだろう。でも、自分の好きなアイドルに恋人がいるというのは複雑なものだ。もう応援できなくなることだってある。彼らはそうした売り方をしていないけれど、そんな思考回路を持ったファンというものは一定数存在する。影片さんもちゃんとそれを分かっているらしい。
「他に何かあるかな」
「それ以外はまだ……後から斎宮さんに聞くのもいいかもしれません」
「せや、お師さんにも報告せんと」
がたがたと慌ただしく席を立つ影片さん。それに合わせて私も立ち上がると、その前に、と彼はこちらを見てくる。
「うなじ噛んでからにしよ」
「ここ事務所ですけど……この後ちゃんと仕事もしてくださいよ?」
その後、ぐずぐずになった影片さんを引き連れて斎宮さんに説明する羽目になったことは言うまでもない。
他に人がいたら言いにくいことでもあるのかと思って2人きりになる場を作ってみた。あまりそういう状況はよくないと思うけど。
パソコンで作業をしつつたまに視線を向けてみる。少しずつ近くへ来ているみたいだ。そろそろ懐きそうな、そんな微妙な距離感の野良猫を相手にしているような気持ちになる。
「プ、プロデューサー」
「どうしました?」
影片さんが話し始める前に向かい側の椅子に座るよう促す。話しづらい事を言いだしそうな雰囲気が伝わってくる。作業を保存したパソコンを閉じ、話を聞く姿勢を取った。
「番、おらんの?」
「え? ああ、はい。いませんよ」
私の返事を聞くとすぐに表情が明るくなる。そんな影片さんとは対照的に私は拍子抜けしていた。最近は見かける度割と深刻そうな顔をしていたから、何を言われるかとびくびくしていたのだ。
「プロデューサー……?」
「あっ、はい」
回想もそこそこに影片さんの呼びかけで現実へと戻る。呼んだ当人はいつもの鳴き声をあげて何やら考えている様子だった。次はどんなことを言おうとしているのやら。
「お、おれ……プロデューサーの番になりたいんよ」
「なっ……」
言葉が出なかった。影片さんの事が嫌だからではない。まあ、そういう視点で彼のことを見てきていなかったため、好き嫌いでは表現できないところはある。
私の番になりたいと思われるほどに好かれている実感がなかった。斎宮さんと比べると話す回数も少ないし、話したとしても目は合わないことの方が多かった。視線に関してはそれが苦手だという点を考慮してもまあ少ない。ここ最近はほとんどないが、会った最初の頃は避けられているような感じもあった。だから目の前にいるこの人の態度が分からない。どこで好かれたのか。
「んあ……おれ、他のオメガと比べると貧相な体やけど、前よりは筋肉がついてきたって言われるし、プロデューサーの邪魔になるようなことはせえへんし、それで、えっと、」
「大丈夫、大丈夫なので少し落ち着きましょうか」
焦って色々なことを言い始めた影片さんをとりあえず止めておく。彼は耳まで赤くして、はふはふと呼吸が乱れていた。
水でも飲んで落ち着いてもらおうとしたが、私が部屋から出ていこうとすると物凄く血色のない顔を見せられたのでやめた。真っ赤になったと思えば青くなる。これ以上話を長引かせたくはなかったものの、納得のいかない部分を無くしたくて話を続けた。
「1つ聞きますけど、どうして私なんですか?」
「えっ……それは、っ」
あまり良くない聞き方をしてしまったような気がする。もごもごと口ごもる様子を見ながらなんとなくそう思った。
「前はお師さんとそうなりたいって思ってたんやけど、」
「でも斎宮さんにはもういますよね」
「せやから、その、」
「手頃なアルファと番になっておこうと?」
斎宮さんの代わりのようなものだろうか。そう思うと言い方から何から刺々しくなってしまう。せめて表情は無から柔らかいの間を心がける。それでも影片さんは今にも泣き出してしまいそうな表情。
「ちゃう、そんなんやなくて」
「……すみません。少し出ます。これ以上話したら影片さんをもっと傷つけてしまう」
制止の声も振り切って、私は部屋を出る。こんな形で担当アイドルを傷付けたくなかった。
頭の中では以前付き合っていたオメガの言葉が勝手に再生されていた。
──ナマエ? 別に好きでもないけどさ、番になれば色々困らなくて済むじゃん
なんで嫌なことはずっと覚えているんだろう。
初めての恋人で、番うことだって真剣に考えていた人の言葉だった。今思えば番に対してかなり夢を見ていた所はある。
オメガが襲われる事件が後を絶たない中、とりあえず番がいれば100%ではないにしても守られる。そういう打算的な部分のある人だったのだろうとは思うけれど、まだ夢を見ていた私とは合わなかった。割り切って考えることができなかった。そこの認識を聞くのも億劫で、それ以来私は番を迎えることなど考えなくなってしまった。
影片さんもああ見えて身の安全なんかをしっかり考えている人だったんだ。私はそれに応えられないから、いい人を見つけられるよう手伝いくらいはしておきたい。
そう決意してからしばらく経つ。私は相性の良さそうなアルファを見つけられないでいた。
「プロデューサー、時間ある?」
「大丈夫ですよ。少し移動しますか」
辺りをきょろきょろしながら影片さんが話しかけてきたので、また難しい話なのだと思い人のいない場所へと促す。私の番の話はもうあれで終結してるだろうから、プライベートな話だったりするのかもしれない。
以前のように机を挟み向かい合って座る。これくらい離れていた方が冷静に話を聞けるのだ。
「この前はごめんなぁ」
「いえ。私が嫌な言い方をしてしまったのが悪いです」
私の事情を知らなかった故の言葉だっただろう。そんな相手に酷い言い方をしてしまった私が悪いのだ。フォローのつもりで言ったけれど、それでも2色の瞳が伏せられていてうまいこと伝わっていないらしい。
「その、あの後お師さんから聞いてん」
「何の話ですか?」
「プロデューサーが前に付き合ってたってオメガの話」
「ああ……そういえば斎宮さんには言ってましたね……」
同じアルファであるからだろうか。彼には色々と話してしまうのだ。あの時は顔色ひとつ変えずに聞いてくれていたような。
「おれにも言ってほしかったなぁ」
「や、なんかその……アルファの人にするのとオメガの人にするのでは気持ちが違うというか」
オメガ全てを悪く言いたいのではないけど、どうしても愚痴っぽくなるので話したくなかった。しかもそこそこプライベートだし。でもそこを口に出してしまうと「なんでお師さんには話せるん!?」とムキになってしまいそうなのでやめておく。
「まあええよ。あの時はおれも伝え方間違えたし」
視線がぶつかる。やっぱり綺麗な目をしていると思う。いつもなら1、2秒とも持たないのに、彼は目をそらさなかった。
「この前のがあるから信じてもらえんと思うけど、プロデューサーに初めて会った時運命やと感じたんよ」
「運命、ですか」
「心臓が痛いくらいにドキドキしてな、体中をぞくぞくする何かが巡る感覚があって……今でもここは痛いけど」
そう言いながら影片さんは胸に手を当てる。私は何も言葉を返せないでいた。
「プロデューサーが考えとるみたいに守ってほしい気持ちもあるけど、でも1番はあんたとずっと一緒にいたい」
「あ〜……それだけ想ってもらえてるのは嬉しいんですけど、やっぱりプロデューサーなので……」
ここまで真っ直ぐに気持ちを伝えられたことがなくて、今更なことを口にして逃げ道を探そうとする。いや本当に今更すぎる。立場のことを気にするのはこの前の会話じゃないと。
案の定影片さんは首を傾げて「この前はそんなこと言わんかったやん」とぽつり。そして瞳をうるうるとさせ始める。
「やっぱりタイプやないんや……!」
「ちが……あ、そういう意味じゃなくて」
「やったらここまで来てなんでそんなこと言うん?」
影片さんの気持ちにしっかり向き合える自信がないのだ。彼はまたいつもの鳴き声をあげ始めた。けれど急に静かになってしまう。
「おれをこのままにしたら、いつか知らんアルファに襲われてしまうで? それでもええの?」
「ゔ、なんでそんな不穏なことを……!」
まるで自分を人質にするみたいなことを言い出す始末。事務所にとっては大事な商品なのだ、そうした事が起きてしまったらValkyrieはもとより私もどうなるか分からない。
「お師さんもプロデューサーならええって」
「親公認みたいな言い方……」
「おれの事、嫌いやないんやろ? 別に、え……えっちとかせんでもええから、うなじ噛むくらいなら」
ほら、と襟足を上げてうなじを見せつけてくる。この人、こんな風に自分のペースに巻き込むの得意だったっけ……。
諸々のことを考えると、影片さんと番うのがいい気がしてきた。一途に想ってくれているのなら、それを大切にするのが1番いい。私は両手を挙げる。
「分かりました。番になりましょう」
「……っ、ほんまに!」
「でも、いくつか条件があります」
「条件?」
「はい。うなじは噛みますけど、それ以上のことはしません」
本人がちらっと言っていたことだ。行為をしないくらい大丈夫だろう。
……と思っていたけれど、想像以上に彼はダメージを受けている。ああ、大事なことを言い忘れていた。
「20歳になるまでの話です」
「んあ〜、良かったわあ。その、できないのはえっちだけで、ちゅーとかはしてもええよね?」
「ま、まあそうですね。あと、付き合っていることはファンには分からないようにしてください」
「それも大事やね。おれ、頑張るで」
番になるから、ずっと添い遂げる覚悟があることは分かるだろう。でも、自分の好きなアイドルに恋人がいるというのは複雑なものだ。もう応援できなくなることだってある。彼らはそうした売り方をしていないけれど、そんな思考回路を持ったファンというものは一定数存在する。影片さんもちゃんとそれを分かっているらしい。
「他に何かあるかな」
「それ以外はまだ……後から斎宮さんに聞くのもいいかもしれません」
「せや、お師さんにも報告せんと」
がたがたと慌ただしく席を立つ影片さん。それに合わせて私も立ち上がると、その前に、と彼はこちらを見てくる。
「うなじ噛んでからにしよ」
「ここ事務所ですけど……この後ちゃんと仕事もしてくださいよ?」
その後、ぐずぐずになった影片さんを引き連れて斎宮さんに説明する羽目になったことは言うまでもない。