SS(呪夢)
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しくじった。
今日の任務対象はそこまで被害が出ていない呪霊だった。その情報が私の油断に繋がったと思う。実際そう強くないものだったため処理自体はすぐに終わったのだが、消滅する前の悪あがきだろう呪いを受けてしまった。命に影響があるものでもなかったのだが、この姿を知り合い——特に恋人——に見られるとかなり面倒なことになることだけは明白だった。
それでも解呪方法を知るために保健室へ行かなければならない。その近くまで来た時、頭のてっぺんにある耳が聞き慣れた声を拾う。目当ての人と1番会うべきでないと思っている人のもの。
どの時間でも彼女はいるから、今日中に行けばいいはず。急ぎの用事でないから、と足早に去ろうとした。しかし背後からはガラガラ、と扉の開く音がする。逃げたいと思っているのに、変化させられた種族のせいだろうか。歩く速度くらいでしか動けない。やがて私は後ろから抱きつかれる。
「戻ってきてたんなら顔出しなよ」
「……そのつもりだったけど」
体を反転させられ、向こうの目隠しが見える。それでようやく私の状況を理解したらしい五条くんは、わざとらしく両手で口を覆う。
「え……超タイプなんだけど……」
「他の獣人にも言ってるの? それ」
「言ってないって! ナマエに猫耳似合いすぎてるからつい」
「はあ」
こうなるのが目に見えていたから会いたくなかったのだ。立ち尽くす私をよそに、テンションが上がった彼はスマホを取り出し並んで写真を撮り始める。騒がしい、と硝子が出てくるまでそれは続いた。
「1週間くらいだな。五条は?」
「僕も同意見。時間経過で無くなるっぽい」
ひとしきり騒ぎ、満足するまで写真を撮って落ち着いた五条くんと、面白いものを見る目になっている硝子の見立ては大体一緒だった。1週間もこの耳と尻尾とやっていかないといけないのかと考えると気分が重くなった。
しかし、悪いことばかりでもなかった。獣人になったことで身体機能が向上したらしく、任務がやりやすくなっていたのだ。それと五条くんのスキンシップを天秤にかけると……ちょっと嫌かもしれない。
今日も五条くんに捕まっていた。彼の太い尻尾を巻きつけられ、身動きが取れずされるがまま。この姿になってから、彼が自在に尻尾を動かせているのが中々難しいことを知った。自分のはそこまで動かせず、その時の気分とリンクして小さく動くくらいでここまではやれない。
「もう少しで1週間?」
「まあ、うん」
そっか、と残念そうな声。そしてぐりぐりと頭を擦り寄せてきた。……私がつけたことない香水と、知らない獣人の匂いがする。ぞわぞわと尻尾が逆立つ感覚。獣人は自分の番への執着が強い。これもこの姿になってから気付いたこと。
五条くんの上着の端をギュッと握った。尻尾が彼に叩きつけるように動いてしまっている。流石にその異変を察知した彼が顔を覗き込んでくる。
「どうしたの? 僕なんかしちゃった?」
「……私、五条くんの気持ちが分かったよ」
「——え?」
「好きな人から知らない人の匂いがしたらイヤ」
途端に固まってしまう五条くん。私はそんな彼の首に腕を回し、いつもされているように上書きしていく。制止の声が聞こえてくるけど従ってやらない。
「わっ」
「これ以上はダメ。理性が……」
私を引き剥がした五条くんが言い切らないうちにもやのようなものに包まれる。そしてそれが無くなった時、彼の残念そうな顔が見えた。頭の上に手をやる。何もない。腰のあたり。何もない。解呪できたらしい。
「猫カフェ通い、やめるよ」
「本当? また色々言って行くんじゃないの?」
「……まあ、行きたくなった時は五条くんの出張とかのタイミングで行くよ」
「それもなんか複雑なんだけど」
今日の任務対象はそこまで被害が出ていない呪霊だった。その情報が私の油断に繋がったと思う。実際そう強くないものだったため処理自体はすぐに終わったのだが、消滅する前の悪あがきだろう呪いを受けてしまった。命に影響があるものでもなかったのだが、この姿を知り合い——特に恋人——に見られるとかなり面倒なことになることだけは明白だった。
それでも解呪方法を知るために保健室へ行かなければならない。その近くまで来た時、頭のてっぺんにある耳が聞き慣れた声を拾う。目当ての人と1番会うべきでないと思っている人のもの。
どの時間でも彼女はいるから、今日中に行けばいいはず。急ぎの用事でないから、と足早に去ろうとした。しかし背後からはガラガラ、と扉の開く音がする。逃げたいと思っているのに、変化させられた種族のせいだろうか。歩く速度くらいでしか動けない。やがて私は後ろから抱きつかれる。
「戻ってきてたんなら顔出しなよ」
「……そのつもりだったけど」
体を反転させられ、向こうの目隠しが見える。それでようやく私の状況を理解したらしい五条くんは、わざとらしく両手で口を覆う。
「え……超タイプなんだけど……」
「他の獣人にも言ってるの? それ」
「言ってないって! ナマエに猫耳似合いすぎてるからつい」
「はあ」
こうなるのが目に見えていたから会いたくなかったのだ。立ち尽くす私をよそに、テンションが上がった彼はスマホを取り出し並んで写真を撮り始める。騒がしい、と硝子が出てくるまでそれは続いた。
「1週間くらいだな。五条は?」
「僕も同意見。時間経過で無くなるっぽい」
ひとしきり騒ぎ、満足するまで写真を撮って落ち着いた五条くんと、面白いものを見る目になっている硝子の見立ては大体一緒だった。1週間もこの耳と尻尾とやっていかないといけないのかと考えると気分が重くなった。
しかし、悪いことばかりでもなかった。獣人になったことで身体機能が向上したらしく、任務がやりやすくなっていたのだ。それと五条くんのスキンシップを天秤にかけると……ちょっと嫌かもしれない。
今日も五条くんに捕まっていた。彼の太い尻尾を巻きつけられ、身動きが取れずされるがまま。この姿になってから、彼が自在に尻尾を動かせているのが中々難しいことを知った。自分のはそこまで動かせず、その時の気分とリンクして小さく動くくらいでここまではやれない。
「もう少しで1週間?」
「まあ、うん」
そっか、と残念そうな声。そしてぐりぐりと頭を擦り寄せてきた。……私がつけたことない香水と、知らない獣人の匂いがする。ぞわぞわと尻尾が逆立つ感覚。獣人は自分の番への執着が強い。これもこの姿になってから気付いたこと。
五条くんの上着の端をギュッと握った。尻尾が彼に叩きつけるように動いてしまっている。流石にその異変を察知した彼が顔を覗き込んでくる。
「どうしたの? 僕なんかしちゃった?」
「……私、五条くんの気持ちが分かったよ」
「——え?」
「好きな人から知らない人の匂いがしたらイヤ」
途端に固まってしまう五条くん。私はそんな彼の首に腕を回し、いつもされているように上書きしていく。制止の声が聞こえてくるけど従ってやらない。
「わっ」
「これ以上はダメ。理性が……」
私を引き剥がした五条くんが言い切らないうちにもやのようなものに包まれる。そしてそれが無くなった時、彼の残念そうな顔が見えた。頭の上に手をやる。何もない。腰のあたり。何もない。解呪できたらしい。
「猫カフェ通い、やめるよ」
「本当? また色々言って行くんじゃないの?」
「……まあ、行きたくなった時は五条くんの出張とかのタイミングで行くよ」
「それもなんか複雑なんだけど」