SS(呪夢)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
任務終わりの昼下がり。教室へと向かう廊下の窓は開けられていて、心地のよい風が吹いていた。報告書が待ち受けているものの、今の私はそこまで気にしていない。どちらかというとやる気に満ちている方になる。学校への帰り道で野良猫と戯れてきたから、萎えていた気持ちを回復できたのだ。
その勢いのままガラガラ、とドアを開ける。閉める時は静かにした。廊下側の席で五条くんが顔を伏せて寝ていたからだ。丸レンズのサングラスをちゃんとたたんで腕の近くに置かれているあたり、しっかり睡眠を取ろうとしているのが窺える。それでもふわふわの耳は小刻みに動いていて、獣人って寝ていても周囲に気を張るのだなぁとぼんやり思った。彼の場合はそうせざるを得ない環境だった、というのもありそうだけれど。
そんな同級生に気を遣って、窓際の席まで静かに移動する。机の横に鞄を掛けて、まっさらな報告書の用紙とペンを取り出す。午前中のことを思い出しつつペンを走らせていく。任務の概要、出現した呪霊、被害の規模……それらを書いているうちにふと視線を感じる。
眠たげな青い目が、こちらを見ていた。頬杖をついて退屈そうに私を眺めている。けれど尻尾はゆらゆらとゆっくり揺れていた。
「起こしちゃった?」
「いや、別に……お前静かだったし」
「そっか。それなら良かった」
会話を切り上げて報告書作成に戻る。しばらくは静かで、ペンが紙の上を滑る音が響くのみ。しかしその静かさもすぐに終わる。
ガタガタと座っていた椅子を引く音が聞こえたと思えば、私の隣の席から椅子を動かして横を陣取ってくる五条くん。背もたれを前にして、そこへもたれかかるように座っている。手元を覗き込んで一言。
「まだ半分も書けてねえじゃん」
「う……書くの苦手だから言わないで……」
いつものからかいモードに入った五条くん。ニヤニヤしながらまた口を開いたその時、強い風が窓から吹き抜けていった。途端に表情が薄れていく整った顔。揺れていた尻尾はぶわりと逆立ち、耳は後ろへ反る。何が原因になったのかは分からないけれど、不機嫌な時の姿になってしまった。
どうしたの、と声をかけつつ伸ばした手は払われる。瞳孔の開いた目が私を捉えた。
「知らねえ奴、触ってきやがって……」
唸るような低い声だった。全くもって身に覚えのないことを言われている。今日はこれまで五条くん以外の獣人と関わってないし、彼が言うように触ってもないし……。
「……どういうこと?」
「……っ、お前からその辺の猫のニオイすんだよ」
「ああ、可愛い子いたから」
そう答えると五条くんはそっぽを向いてしまう。反っていた耳はぺしょ、と折れている上、尻尾は力なく垂れている。私の返事のどこが駄目だったんだろう。
「……俺だって、可愛いって言われるし」
予想していなかった角度からのコメントで呆気に取られる。その言い方だと五条くんは私に可愛いと思ってほしいって解釈されかねないけど、本当にそれでいいの!?
——とは言えず。これ以上彼の機嫌を損ねないように私は観察を続けた。変わらずこちらに背中を向けているけれど、耳は言葉を待っているらしくしっかり私の方を向いていた。時折、尻尾が足の辺りをかすめてくすぐったく感じる。
この姿、ほとんど拗ねた猫と変わらない。
「……可愛い」
そう、本当に可愛かったのだ。私の部屋に敷いてあるラグを大の字で占拠している成人の男を見ながら、心からそう思う。この、見るに堪えない大の字の元凶は私にあるから細かいことは言わないでいる。
「もう行かないって言ったじゃん! なんでまた猫カフェ行ってんのさ」
「ちょっとふれ合いたくなったんだよ」
「僕がいるのに! なんで!?」
好き勝手喚きながら私の財布を物色し始める。そして、レシートを1枚取り出し顔をしかめた。
「……行ったの猫カフェだよね?」
「支援も兼ねてるよ」
相場より割高な額に驚いているのだろう。初めの勢いは無くなり、私の隣に落ち着く。けれど、太く長い尻尾を私の腰に巻きつけてきている。まだ何かしらの追及をするつもりなんだと思って抵抗しないでいると、肩にぐりぐりと頭を押し付けてきた。
「僕の番って自覚ある?」
「いいじゃん猫くらい」
「撫でたいなら僕にしてって言ってるでしょ」
「え〜、あそこの子たち可愛いからなあ」
動きが止まる。巻き付いていた尻尾も離れていってしまった。五条くんは目隠しを下ろしてこちらを見ている。
「僕のことだって可愛いって言ったじゃん」
「はいはい。今でも可愛いよ〜」
「気持ちがこもってない」
文句タラタラな五条くん。面倒モードのスイッチが入ってしまったので、無理やり抱き寄せて頭を撫でてやる。これで大抵は落ち着くのだ。
若干抵抗の姿勢を見せていたけれど、数分経てば大人しくなった。
「……久々会えたのに、知らないヤツのニオイが番からした時の気持ち分かる?」
「連絡してくれたら行かなかったのに」
「すぐに会いたかったの!」
「それは仕方ないねえ」
適当な返事をするも手は止めない。指通りが良すぎる髪に、ふわふわの触り心地の尻尾。数日前に見かけた時はもう少し毛艶が悪かったような記憶がある。これを整えて来ちゃう辺りが可愛いんだよな。
それを本人に伝えると調子に乗ってしまうから言わないけれど。
その勢いのままガラガラ、とドアを開ける。閉める時は静かにした。廊下側の席で五条くんが顔を伏せて寝ていたからだ。丸レンズのサングラスをちゃんとたたんで腕の近くに置かれているあたり、しっかり睡眠を取ろうとしているのが窺える。それでもふわふわの耳は小刻みに動いていて、獣人って寝ていても周囲に気を張るのだなぁとぼんやり思った。彼の場合はそうせざるを得ない環境だった、というのもありそうだけれど。
そんな同級生に気を遣って、窓際の席まで静かに移動する。机の横に鞄を掛けて、まっさらな報告書の用紙とペンを取り出す。午前中のことを思い出しつつペンを走らせていく。任務の概要、出現した呪霊、被害の規模……それらを書いているうちにふと視線を感じる。
眠たげな青い目が、こちらを見ていた。頬杖をついて退屈そうに私を眺めている。けれど尻尾はゆらゆらとゆっくり揺れていた。
「起こしちゃった?」
「いや、別に……お前静かだったし」
「そっか。それなら良かった」
会話を切り上げて報告書作成に戻る。しばらくは静かで、ペンが紙の上を滑る音が響くのみ。しかしその静かさもすぐに終わる。
ガタガタと座っていた椅子を引く音が聞こえたと思えば、私の隣の席から椅子を動かして横を陣取ってくる五条くん。背もたれを前にして、そこへもたれかかるように座っている。手元を覗き込んで一言。
「まだ半分も書けてねえじゃん」
「う……書くの苦手だから言わないで……」
いつものからかいモードに入った五条くん。ニヤニヤしながらまた口を開いたその時、強い風が窓から吹き抜けていった。途端に表情が薄れていく整った顔。揺れていた尻尾はぶわりと逆立ち、耳は後ろへ反る。何が原因になったのかは分からないけれど、不機嫌な時の姿になってしまった。
どうしたの、と声をかけつつ伸ばした手は払われる。瞳孔の開いた目が私を捉えた。
「知らねえ奴、触ってきやがって……」
唸るような低い声だった。全くもって身に覚えのないことを言われている。今日はこれまで五条くん以外の獣人と関わってないし、彼が言うように触ってもないし……。
「……どういうこと?」
「……っ、お前からその辺の猫のニオイすんだよ」
「ああ、可愛い子いたから」
そう答えると五条くんはそっぽを向いてしまう。反っていた耳はぺしょ、と折れている上、尻尾は力なく垂れている。私の返事のどこが駄目だったんだろう。
「……俺だって、可愛いって言われるし」
予想していなかった角度からのコメントで呆気に取られる。その言い方だと五条くんは私に可愛いと思ってほしいって解釈されかねないけど、本当にそれでいいの!?
——とは言えず。これ以上彼の機嫌を損ねないように私は観察を続けた。変わらずこちらに背中を向けているけれど、耳は言葉を待っているらしくしっかり私の方を向いていた。時折、尻尾が足の辺りをかすめてくすぐったく感じる。
この姿、ほとんど拗ねた猫と変わらない。
「……可愛い」
そう、本当に可愛かったのだ。私の部屋に敷いてあるラグを大の字で占拠している成人の男を見ながら、心からそう思う。この、見るに堪えない大の字の元凶は私にあるから細かいことは言わないでいる。
「もう行かないって言ったじゃん! なんでまた猫カフェ行ってんのさ」
「ちょっとふれ合いたくなったんだよ」
「僕がいるのに! なんで!?」
好き勝手喚きながら私の財布を物色し始める。そして、レシートを1枚取り出し顔をしかめた。
「……行ったの猫カフェだよね?」
「支援も兼ねてるよ」
相場より割高な額に驚いているのだろう。初めの勢いは無くなり、私の隣に落ち着く。けれど、太く長い尻尾を私の腰に巻きつけてきている。まだ何かしらの追及をするつもりなんだと思って抵抗しないでいると、肩にぐりぐりと頭を押し付けてきた。
「僕の番って自覚ある?」
「いいじゃん猫くらい」
「撫でたいなら僕にしてって言ってるでしょ」
「え〜、あそこの子たち可愛いからなあ」
動きが止まる。巻き付いていた尻尾も離れていってしまった。五条くんは目隠しを下ろしてこちらを見ている。
「僕のことだって可愛いって言ったじゃん」
「はいはい。今でも可愛いよ〜」
「気持ちがこもってない」
文句タラタラな五条くん。面倒モードのスイッチが入ってしまったので、無理やり抱き寄せて頭を撫でてやる。これで大抵は落ち着くのだ。
若干抵抗の姿勢を見せていたけれど、数分経てば大人しくなった。
「……久々会えたのに、知らないヤツのニオイが番からした時の気持ち分かる?」
「連絡してくれたら行かなかったのに」
「すぐに会いたかったの!」
「それは仕方ないねえ」
適当な返事をするも手は止めない。指通りが良すぎる髪に、ふわふわの触り心地の尻尾。数日前に見かけた時はもう少し毛艶が悪かったような記憶がある。これを整えて来ちゃう辺りが可愛いんだよな。
それを本人に伝えると調子に乗ってしまうから言わないけれど。