SS(呪夢)
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身体中が痛い。特に腰辺りが痛む。ゆっくり目を開くと真っ白な天井が広がっていた。消毒液の特徴的な匂いが鼻に届き、ここが保健室であることが分かる。腰を庇いながら上半身を起こす。手持ち無沙汰な様子で携帯を操作している硝子が見えて声をかけた。
「硝子、おはよ……」
「起きたか、ナマエ」
携帯をポケットにしまい、硝子はこちらへと歩いてくる。ベッドの近くにあった椅子へと座り、まだ痛むか尋ねてきた。それに頷いて返せば「それもそうか」と呟いた。
「だって3日間気を失ってたからな」
「え! 嘘でしょ!?」
枕元に置かれていた携帯を確認する。任務に行った日から3日ほどが経過していた。また、その間にメールが何件も届いているらしかった。色々な人から来ているみたいだったが、五条君からのものがほとんどを占めている。試しについさっき来ていたメールを開く。件名は無題。本文には『目覚ましたら連絡しろ』とだけあった。
「なんか五条君からたくさんメール来てるんだけど……」
「あー……、アイツには電話してやって」
「うん、するよ」
どこか遠くを見るような目になってしまった硝子に内心首を傾げつつ、五条君に電話をかける。2コールもしないくらいで向こうと繋がった。
「もしもし、」
「ナマエ! 起きたのか」
「う、うん。ついさっきね」
食い気味に話をしてきた五条君に言葉を詰まらせつつ返事をする。電話の向こうからはエンジン音や、人の話し声などが聞こえてきた。どうやら任務で外にいるみたいだ。
「ごめん、任務中だったかな」
「や、ちょっと前に終わったから大丈夫」
「そっか。お疲れ」
「……今から帰るわ」
「気をつけてね」
「おう」
電話が切れた。携帯を閉じて近くのテーブルに置く。少ししか会話をしていないが、疲れがどっと押し寄せてくる感覚がする。頭がぐらりと揺れた。
「まだ本調子じゃないから、もう少し寝てなよ」
「うん。五条君来たらよろしくね」
「ハァ……分かってるって」
硝子の返事を聞いてから私は枕に頭を埋める。すぐに睡魔がやってきて、気を失うように眠りに落ちた。
次に目が覚めた時、外は少し暗くなっていた。ベッド脇の椅子には五条君が座っていて思わず声を上げそうになった。しかし、静かに眠っていたので咄嗟に口を手で塞ぐ。
いつ見ても綺麗な顔をしている。何も言わなければ完璧なのに、と思いながらその寝顔を見ていた。変な言動してるのもそれはそれで好きだけど。上半身を起こそうとして痛みが走る。「いたた……」とつい声が出てしまった。
「ん……ナマエ……?」
「あ、ごめん、起こしちゃった」
五条君はあくびをしながら伸びをした。サングラスを外して目を擦っている。その仕草がどこか幼く見えた。しばらくぼんやりとしていたが、目が覚めてきたのか彼は口を開いた。
「まだ治りきってないんだな」
「ちょっと痛む感じかな、まだ歩いたりしてないからどこまでできるか分からないんだけど」
「そっか。じゃあ……俺が面倒見てやるよ」
「へ?」
思いもよらない提案に間抜けな声が出た。なぜ五条君がそこまでしようと思っているのだろう。その申し出はありがたいと思うのだが、普段から忙しい彼の手を煩わせてしまうのには気が引けた。私は首を振る。
「いいよ、1人でなんとかできると思うから」
「俺がやりたいと思ってんの。ありがたく面倒見られてろって」
蒼く煌めく瞳が私を捉えて離さなかった。本当にいいのかなと思いつつも、五条君の厚意を無下にすることもできなくて私は頷く。
「じゃあ……お願いします」
「ん」
五条君は満足げだ。そしてこちらに体を傾けて頭をポンポンと撫でてきた。優しい手つきに目を細める。甘い雰囲気になりかけたところで私の腹が鳴った。眠っている間固形物を食べていなかったのだ、当たり前である。はじめは黙っていたが、耐え切れないという様子で五条君は笑った。
「腹減った?」
「うん……そうみたい」
「何か作るか」
五条君が腰を上げたタイミングで硝子が保健室へと戻ってきた。手には真新しいタバコの箱が握られている。買いに行っていたからここにいなかったのか、と納得した。五条君は硝子と話を始めた。
「ナマエの世話することにしたけど、なんか気をつけることある?」
「…………あまり激しい運動はさせない、最初はゆっくり歩くくらいにしとけよ」
怪訝な顔で五条君を見たが、ちゃんとアドバイスをしている。私はベッドの上から自分の部屋に戻ってもいいか尋ねた。硝子は頷く。
「無理するなよ。ゆっくりリハビリしな」
「元に戻れるよう頑張るよ」
ベッドから足を下ろす。近くに置かれていた上履きを履いて立ちあがろうとすれば少しよろめく。すぐに支えてくれた五条君のおかげで事なきを得た。すぐそばに整った顔があってのけぞりそうになる。
「ありがと」
「掴まってろ。見てて不安になるわ」
「ん、じゃあお言葉に甘えて」
差し出された腕に掴まって歩き出す。3日間寝ていたから体が鈍っている。しかし、普通に歩く分には問題なさそうで安心した。
それからというもの、五条君は任務に行く時以外は私につきっきりだった。移動などで手を貸してもらえれば良かったのに、食事の手伝いや座学まで口を出してくるようになった。それは体が元通りに動くようになってからも続いた。
その事自体は嫌ではなかったから、本人にやめるよう言わなかった。この状況をそのままにしていれば、好きな人がずっと隣にいてくれるから。
「他の人が見たら、勘違いされちゃうね」
ある時、流石に距離が近すぎると思って私はそんな事を言った。何か言うことで関係性が変わってしまうかもしれないという不安があった。しかし、付き合っている訳でもないからあまりベタベタするものでもないとも思っていたのだ。
私に寄りかかって座っていた五条君が急に姿勢を変える。いきなりのことで私は姿勢を崩しそうになった。
「勘違いも何も、俺たち付き合ってるだろ」
「……へ?」
思わぬ返答に頓狂な声が出た。今の私はきっと間抜けな顔をしているだろう。その顔のまま五条君を見た。冗談を言っている表情には見えない。
「は? お前……忘れたのかよ」
「そういう話、したっけ?」
「しただろ、お前も嬉しそうだった」
どれだけ記憶を辿ってもそれらしいものはない。ここまで来たら五条君にしかない記憶だったりするんじゃないか。何も返事をしないでいると彼は大きくため息をついた。
「ナマエ、死にかけた前後の記憶は」
「え? 攻撃を食らったのと、そのあとは……保健室で目を覚ました時」
「マジかよ……」
五条君はガシガシと頭を掻いた。そしてそのまま頭を抱えるような姿勢になる。何も分からなかったけれど、そっと彼の肩に触れる。身じろぎするものの、拒絶されることはなかった。
「私が何言ったか、教えてよ」
「……俺が助けに行った時、お前……告ってきた」
「待って、五条君が拾ってくれたの?」
「そこからかよ」
呆れたように笑う。五条君が助けてくれたの、全然知らなかった。一応そのことへのお礼を言う。彼は「別にいいよ」と頭を撫でてきた。私はどんな事を言ったんだろう。もう1度、その周辺の記憶を思い出そうとしてみる。
「……あ、好きだった、とか言わなかった?」
「まんまそれ」
「あれさ、夢だと思ってたんだよね。死にかけて、五条君が来てくれて……」
走馬灯みたいなものだと思っていた。だから、この際なんでも良いから全部言ってやろうと思って告白した。そして、五条君はどんな返事してたっけ。
朧げではあるが、五条くんの笑顔が頭の中に浮かんだ。
「俺も好きって言ってた! あれは夢じゃないよね」
「急に思い出すなって! ……合ってるけど」
「……そっか」
顔に熱が集まっていくのが分かる。頬に触れてみれば案の定熱い。五条君はこちらの顔を覗き込んでくる。さっきまでとは打って変わって余裕そうな表情でいる。
「……で、本当に俺の事好きなの?」
「好きだよ。ずっとこのまま私のそばにいてくれたらいいなって……わっ!」
勢いよく五条君に抱きしめられる。それを受け止め切れるはずもなく、そのままソファーに寝転がる形になった。私に覆い被さった彼は嬉しそうに笑っている。
「ほとんどプロポーズだろ、それ」
「そうかも。でも本心から言ってるよ」
「……ズルすぎ」
「硝子、おはよ……」
「起きたか、ナマエ」
携帯をポケットにしまい、硝子はこちらへと歩いてくる。ベッドの近くにあった椅子へと座り、まだ痛むか尋ねてきた。それに頷いて返せば「それもそうか」と呟いた。
「だって3日間気を失ってたからな」
「え! 嘘でしょ!?」
枕元に置かれていた携帯を確認する。任務に行った日から3日ほどが経過していた。また、その間にメールが何件も届いているらしかった。色々な人から来ているみたいだったが、五条君からのものがほとんどを占めている。試しについさっき来ていたメールを開く。件名は無題。本文には『目覚ましたら連絡しろ』とだけあった。
「なんか五条君からたくさんメール来てるんだけど……」
「あー……、アイツには電話してやって」
「うん、するよ」
どこか遠くを見るような目になってしまった硝子に内心首を傾げつつ、五条君に電話をかける。2コールもしないくらいで向こうと繋がった。
「もしもし、」
「ナマエ! 起きたのか」
「う、うん。ついさっきね」
食い気味に話をしてきた五条君に言葉を詰まらせつつ返事をする。電話の向こうからはエンジン音や、人の話し声などが聞こえてきた。どうやら任務で外にいるみたいだ。
「ごめん、任務中だったかな」
「や、ちょっと前に終わったから大丈夫」
「そっか。お疲れ」
「……今から帰るわ」
「気をつけてね」
「おう」
電話が切れた。携帯を閉じて近くのテーブルに置く。少ししか会話をしていないが、疲れがどっと押し寄せてくる感覚がする。頭がぐらりと揺れた。
「まだ本調子じゃないから、もう少し寝てなよ」
「うん。五条君来たらよろしくね」
「ハァ……分かってるって」
硝子の返事を聞いてから私は枕に頭を埋める。すぐに睡魔がやってきて、気を失うように眠りに落ちた。
次に目が覚めた時、外は少し暗くなっていた。ベッド脇の椅子には五条君が座っていて思わず声を上げそうになった。しかし、静かに眠っていたので咄嗟に口を手で塞ぐ。
いつ見ても綺麗な顔をしている。何も言わなければ完璧なのに、と思いながらその寝顔を見ていた。変な言動してるのもそれはそれで好きだけど。上半身を起こそうとして痛みが走る。「いたた……」とつい声が出てしまった。
「ん……ナマエ……?」
「あ、ごめん、起こしちゃった」
五条君はあくびをしながら伸びをした。サングラスを外して目を擦っている。その仕草がどこか幼く見えた。しばらくぼんやりとしていたが、目が覚めてきたのか彼は口を開いた。
「まだ治りきってないんだな」
「ちょっと痛む感じかな、まだ歩いたりしてないからどこまでできるか分からないんだけど」
「そっか。じゃあ……俺が面倒見てやるよ」
「へ?」
思いもよらない提案に間抜けな声が出た。なぜ五条君がそこまでしようと思っているのだろう。その申し出はありがたいと思うのだが、普段から忙しい彼の手を煩わせてしまうのには気が引けた。私は首を振る。
「いいよ、1人でなんとかできると思うから」
「俺がやりたいと思ってんの。ありがたく面倒見られてろって」
蒼く煌めく瞳が私を捉えて離さなかった。本当にいいのかなと思いつつも、五条君の厚意を無下にすることもできなくて私は頷く。
「じゃあ……お願いします」
「ん」
五条君は満足げだ。そしてこちらに体を傾けて頭をポンポンと撫でてきた。優しい手つきに目を細める。甘い雰囲気になりかけたところで私の腹が鳴った。眠っている間固形物を食べていなかったのだ、当たり前である。はじめは黙っていたが、耐え切れないという様子で五条君は笑った。
「腹減った?」
「うん……そうみたい」
「何か作るか」
五条君が腰を上げたタイミングで硝子が保健室へと戻ってきた。手には真新しいタバコの箱が握られている。買いに行っていたからここにいなかったのか、と納得した。五条君は硝子と話を始めた。
「ナマエの世話することにしたけど、なんか気をつけることある?」
「…………あまり激しい運動はさせない、最初はゆっくり歩くくらいにしとけよ」
怪訝な顔で五条君を見たが、ちゃんとアドバイスをしている。私はベッドの上から自分の部屋に戻ってもいいか尋ねた。硝子は頷く。
「無理するなよ。ゆっくりリハビリしな」
「元に戻れるよう頑張るよ」
ベッドから足を下ろす。近くに置かれていた上履きを履いて立ちあがろうとすれば少しよろめく。すぐに支えてくれた五条君のおかげで事なきを得た。すぐそばに整った顔があってのけぞりそうになる。
「ありがと」
「掴まってろ。見てて不安になるわ」
「ん、じゃあお言葉に甘えて」
差し出された腕に掴まって歩き出す。3日間寝ていたから体が鈍っている。しかし、普通に歩く分には問題なさそうで安心した。
それからというもの、五条君は任務に行く時以外は私につきっきりだった。移動などで手を貸してもらえれば良かったのに、食事の手伝いや座学まで口を出してくるようになった。それは体が元通りに動くようになってからも続いた。
その事自体は嫌ではなかったから、本人にやめるよう言わなかった。この状況をそのままにしていれば、好きな人がずっと隣にいてくれるから。
「他の人が見たら、勘違いされちゃうね」
ある時、流石に距離が近すぎると思って私はそんな事を言った。何か言うことで関係性が変わってしまうかもしれないという不安があった。しかし、付き合っている訳でもないからあまりベタベタするものでもないとも思っていたのだ。
私に寄りかかって座っていた五条君が急に姿勢を変える。いきなりのことで私は姿勢を崩しそうになった。
「勘違いも何も、俺たち付き合ってるだろ」
「……へ?」
思わぬ返答に頓狂な声が出た。今の私はきっと間抜けな顔をしているだろう。その顔のまま五条君を見た。冗談を言っている表情には見えない。
「は? お前……忘れたのかよ」
「そういう話、したっけ?」
「しただろ、お前も嬉しそうだった」
どれだけ記憶を辿ってもそれらしいものはない。ここまで来たら五条君にしかない記憶だったりするんじゃないか。何も返事をしないでいると彼は大きくため息をついた。
「ナマエ、死にかけた前後の記憶は」
「え? 攻撃を食らったのと、そのあとは……保健室で目を覚ました時」
「マジかよ……」
五条君はガシガシと頭を掻いた。そしてそのまま頭を抱えるような姿勢になる。何も分からなかったけれど、そっと彼の肩に触れる。身じろぎするものの、拒絶されることはなかった。
「私が何言ったか、教えてよ」
「……俺が助けに行った時、お前……告ってきた」
「待って、五条君が拾ってくれたの?」
「そこからかよ」
呆れたように笑う。五条君が助けてくれたの、全然知らなかった。一応そのことへのお礼を言う。彼は「別にいいよ」と頭を撫でてきた。私はどんな事を言ったんだろう。もう1度、その周辺の記憶を思い出そうとしてみる。
「……あ、好きだった、とか言わなかった?」
「まんまそれ」
「あれさ、夢だと思ってたんだよね。死にかけて、五条君が来てくれて……」
走馬灯みたいなものだと思っていた。だから、この際なんでも良いから全部言ってやろうと思って告白した。そして、五条君はどんな返事してたっけ。
朧げではあるが、五条くんの笑顔が頭の中に浮かんだ。
「俺も好きって言ってた! あれは夢じゃないよね」
「急に思い出すなって! ……合ってるけど」
「……そっか」
顔に熱が集まっていくのが分かる。頬に触れてみれば案の定熱い。五条君はこちらの顔を覗き込んでくる。さっきまでとは打って変わって余裕そうな表情でいる。
「……で、本当に俺の事好きなの?」
「好きだよ。ずっとこのまま私のそばにいてくれたらいいなって……わっ!」
勢いよく五条君に抱きしめられる。それを受け止め切れるはずもなく、そのままソファーに寝転がる形になった。私に覆い被さった彼は嬉しそうに笑っている。
「ほとんどプロポーズだろ、それ」
「そうかも。でも本心から言ってるよ」
「……ズルすぎ」