〜彼女の日常〜
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『そんなに落ち込まないでよ、田中くん』
「桜木さんの結果の相性の良い男性とあてはまらないし…23%の相性って…」
『…所詮占いだよ?』
「それに相性のいい男性が…年上や目の上のひとも平伏しちゃう威厳のある完璧な人って…あきらか俺じゃないよね…」
…田中くんは平伏させないだろうね…威厳とかそういうのはあるとは思えない優しい性格をしていると思う。
というかそんなひといるかな?
欠点はたしか…だけどとても脆いハートの持ち主?どういう占いだ…。
「俺の相性のいい女性はこんなに当てはまってるのになぁ」
『…そ、そうかな?結構私以外にいそうだけどね…』
才色兼備で本当は寂しがりやの強がりって…合ってないよなにも…
「そろそろ日も暮れてきたし、観覧車最後に乗ろうか!」
『うん!…その前にお手洗い行ってくるね?』
15分近くなる観覧車の前に、行きたくなくてもなんとなく用を足して来ようと化粧室に向かった。
なぜか人気も少なく、土曜日なのにおかしいなと思ったのも束の間。黒いスーツを着て、サングラスをかけた明らかに怪しい3人と対峙した。
護身術を嗜んでいるとはいえ、大人の男の、それもこの装いの人たち3人に通用するほど甘くないだろう。狙いはなんだろうか、まぁなんとなくわかっている。
「赤司家の従者だな?」
なぜ私たちはいつも寄り道をしていないか、常に一緒に行動しているか、送り迎えが車の時があったか、忘れてしまうところだった。
赤司家の財力に目をつけた身代金を狙うひともいれば、敵対関係の人間から地位の剥奪のために狙うひともいる。
征十郎を直接狙う輩もいるが、彼は頭の回転もよく、天帝の眼をもっている。生半可では捕らえることなどできるはずがないのだ。
よって、狙われたのは私かーーーーーーー。
『人質にとっても無駄ですよ。私は仕え人ですから、価値なんてありません』
「そんなのとってみないとあちらさんは分からないだろう?」
『……あんまり舐めないでいただきたいですね』
「!?小娘が…」
私を捕らえようと伸ばしてきた腕を護身術で受け流し避ける。が、3対1だ、すぐに他の2人がフォローに入り、意図もたやすく私の両脇をかかえ捕らえる。
「さて、さっさと気絶させてズラかるとするか」
「桜木さーん!何かありました…桜木さん!!??」
『!?田中くん…』
まずい、私だけまだしも、普通の家庭で育った彼からみたら、変な黒ずくめの男たちに私が捕らえられているようにしかみえない。訳もわからず人攫いだと思ってしまうだろう。まぁあながち間違いでもないが…。兎にも角にも、彼を巻き込むわけにはいかない。
『私は大丈夫だからっ…逃げて田中くん!!』
「なに言って…てかなんなんだお前らは!?」
「ほぅ、ご主人様以外にも尻尾をふる従者もいるのだな……奴も捕らえろ」
『!彼は関係ないでしょ!?やめ……っぅぐ!』
お腹に一撃をくらい、目の前が霞む……。
「桜木さん!!!」
『に…げ………』
そして私の視界はブラックアウトした。
“征ちゃん、征ちゃん”
“そんなに何度も呼ばなくても聞こえているよ”
“征ちゃんは将来、どこかのご令嬢と結婚するのかな?”
“…さぁ、どうだろうね”
“そしたら、今みたいに一緒にいれなくなっちゃうのかなぁ”
“例えだれが嫁いできたとしても、俺はお前を手放したりしないよ、約束するさ小春”
“…その約束、絶対果たしてね…?…征ちゃん”
だいすきだよーーーーー。
ーーーきろ、…おきろ…
『…せ……ちゃ』
ーーーー「起きろ従者の娘」
そうだ、私は赤司家に仕える者。
征十郎さんに何かあったら…私は……
『!…ここは……っ、』
「起きたか小娘、交渉材料がいつまでも寝ていたら困るんでな」
そうだ、私は連れ去られて……田中くんは…?
「…あぁ、連れの彼か??男の使い道も考えたが…大した情報もないことだし、闇市にでも売り飛ばすとするかな」
『!?なんですって……彼は関係ないでしょ、すぐに解放して』
「アジトも顔もバレてんだ、みすみす返すわけねーだろ?」
先ほどの3人はサングラスを外していた。
若い男2人と、3.40代の男1人、この人がボスだろうか?もう赤司の本邸には連絡したのか?この人たちの要求はなんだ…?
近づいてくる中年の男に顎を掴まれる。
手首と足を縄で拘束され、うつむせで寝かせられてるため抵抗などできない。
『っう……』
「…君の切羽詰まった声を赤司の御子息に聴かせないと、交渉材料にならんだろ?」
『っ…無駄よ、あいにくお家に可愛がられてるような、どこかのご令嬢たちとは訳が違うのよ』
ただの従者に、動くわけない。
代わりなんて、たくさんいるもの。
征十郎さんが無事なら、それでいいの。
「お前がお気に入りだという情報を得ているんだ、確固たる証拠をな」
そして男は最近尾けていたのか、征十郎さんとの写真が散らばらされた。
『切羽詰まった声なんて出さないし、征十郎さんや赤司家に迷惑をかけるくらいなら……自分はどうなることも厭わないわ』
「…ずいぶん健気なお嬢さんだ」
なぁそう思うだろう?と、彼は声を発した。
どうやら電話を繋いでいたみたいだ。相手はおそらく赤司本邸…?ちがう、あの携帯は……わたしの私物のだ…!!
ーーー「彼女に手を出したら許さない」
征十郎さんの声だ。
私の携帯から直接彼にかけたということ。
彼をおびき寄せるつもり…?
確かに私なんかより、彼を人質に取った方がよりいい交渉材料だ。彼を人質に取るのが難航するのが分かっていて、わたしでおびき寄せる…なんという卑怯な手だ。
そして視界に光が強く入ったと思ったら、開いた入口から縛られた田中くんが連れられてきた。
『田中くん!!』
「出させるさ、小娘、お前は自分より他人を傷つけさせられたほうが嫌だろう?」
寝っ転がらされた田中くんの背中を踏む若い男。
「こいつせっかく顔整ってんのに、かわいそうになぁ…」
「それはこっちのお嬢さんも一緒だ」
『うっ…』
髪の毛を引っ張られ、無理やり上をむかされる。
「!?小春!?」
『…だ、めです…きてはっ』
そして男は田中くんを蹴り始めた。
「ぐっ…うっ…」
『やめて!!お願い!彼を解放して!』
「さぁもっと懇願するといい。助けにきてと泣き叫ぶんだ。早くしろ」
『や、やめて…』
!田中くんはサッカー部だ。
これ以上怪我をさせられない…。彼が部活頑張っていたのも知っているし、ましてや何も関係ない被害者だ。
『お願い!なんでも言うこと聞くから!!彼を離して!!!』
「っごほ…、さ…くらぎ…さん」
「…聞いたかい?」
「聞いた聞いた、なんでも言うこと聞いてくれるんだってさ、もういいじゃんこいつは。その嬢ちゃんで楽しませて貰えば」
「!…小春に手を出してみろ!!お前たちをタダじゃ済まさない」
そう征十郎さんは言ったけれど、もう私の声を聴かせて満足したのか、一度で電話を切った。こいつらの要求はなんなんだろうか。征十郎様さんをおびき寄せて赤司家に何を要求するつもりだ?
「おい、怖さか痛さか、気絶したぜこの男」
「…倉庫に連れてけ、今夜ちょうど船がくるからな」
私がなんとかしなければ、彼がどこかに売り飛ばされてしまう。
顔バレしてはいけない、アジアがある…大きい組織がバックにいるのだろうか?
そもそも赤司家にこんな組織が恨みを持つなんて思えない…。
「さて、動画でも撮影しながらお嬢ちゃんをいたぶらせていただきますかね、…おい、脱がせろ」
「了解」
征十郎さん…どうかお願い、この場所に来ないで私のことを見捨ててください。
そんなことを思っているのに、思わないといけないのに、頭の隅ではちがうことを願っていた。
助けて……。
征ちゃん…。