〜彼女の日常〜
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「桜木さん、ちょっといい?」
『あ、田中くん…大丈夫だよ』
部活に行く前、連絡先を交換していなかったことに気づいた田中はすぐに1組に向かい桜木小春を捉えた。
教室に赤い髪の彼はいなそうだ。タイミングもばっちり。桃井さんの言う通りだった。
“今日主将に呼ばれていたから、授業終わってすぐは赤司くんいないと思うよ?”
「連絡先を交換しないか!?あと今日一緒に帰りたいんだけど…」
『あ、そうだよね…初めて連絡彼氏と交換するかも…帰りはごめんね、征十郎さんと帰るから毎日帰れないんだ』
赤外線を飛ばしながら話していた。放課後は必ず車で送り迎えをやめたこともあり、私と行き帰りずっと帰っている。赤司家にほとんど住み込みで離れで暮らしている桜木家は、自然とそうなるのだ。そのためにバスケ部もマネージャーとして支えられるようにしている。
「…そっか!あ、早速今日メールするね!」
(何で今まで彼氏と連絡先を交換してないんだろう?一か月とはいえ付き合ってたひと何人かいたのに…でもオレが初めてか…!!)
『うん、わかった!』
「小春、何している」
凛とした声がスーッと耳に入ってきた。
彼女の絶対的1番、赤司くんだ。
『征十郎さん、虹村さんの話は終わったのですね? お付き合いをし始めたので、田中くんと連絡先を交換していました』
(あ、そこはちゃんと言うんだ…)
「へぇ…彼氏の田中くんがオレがたまたまいないこの5分の間に聞きに来るなんて、なかなかのタイミングだな」
(桃井か…?)
「…オレは別れないからな! じゃあまた、夜に連絡するね桜木さん!」
『あ、うん、部活がんばってね!』
そして田中は早足でグランドに向かっていった。
「安易に連絡先を交換するな、田中がストーカーになったり悪用したらどうするんだ」
『真ちゃんもさつきも認めてくれた人だから大丈夫です、部活行きますよ』
「…1分も目を離すことができなくなるな」
『それはわたしのセリフです。1分も本当は目を離したくないんですよ』
「なんだオレたち相思相愛ではないか」
『っ!!……そんな言い方やめてください、荷物持ちましょうか?』
「いつもいいと言っているだろう、敬語もさん付けも本当にやめてほしい」
顔を赤くして小春は俯きながら赤司と一緒に部活へ向かった。
(前のように呼んだり話したら、きっとすぐ甘えてしまいそうになるから…ダメです)
「桃井、田中に手を貸したな?」
「えー!?なんのことかな???」
「とぼけるな、おかげさまで小春の携帯にはじめてオレら以外の連絡先が追加されたじゃあないか」
「田中くんはいいひとだから、普通の恋したい小春とは相性いいと思って!変な男に行くよりいいじゃない」
「オレが行かせないから大丈夫だ」
「…あんまり籠の中の鳥したら可哀想だよ?」
「あいつがオレと交際すればいいだけの話だと思うのだが」
「…そうだね…笑」
本当にこの2人は不器用だと思う。
赤司くんもそのことをはっきり伝えればいいのに…いや、伝えても届いてないのかもしれないけれど、きーちゃん同様に…。少し鈍感なところがあるのが小春のいいところでも残念なところでもある。
そして部活中、小春は桃井に今回は続くかどうか相談していた。
「普通の恋は連絡先はすぐ交換するものだよ?これだけでも少しは長続きすると思うんだよね!」
『そうなの?じゃあ田中くんにはまだフラれなくて済むかな?』
「ちゃんとメール返してれば大丈夫だよ!」
そう、今までのひとは学校でロクに話すこともできなければ、メールも電話も一切なしだったのだ。彼女の隣に立つという理想すら叶えられない残念な彼氏という名前だけの存在。そうさせてるのはキセキの世代の一部と主に赤司くんだ。
「はぁ、なんであんなに小春っちは可愛いんだろう…なんでオレが彼氏じゃないんだ…」
「うっせーよ黄瀬、すぐ別れるっつってんだろ?」
「でも桃っちが田中に手を貸してるらしいっスよ?長く続きそうじゃないっスか!」
「はぁ?何やってんだあいつ…」
「なになに?小春ってまた誰かと付き合ったのかァ?いいじゃんソレ、奪っちゃおっかなー??」
「崎ちんやめときな〜また練習増やされるよ〜?」
そう、崎ちんこと灰崎は最初のころ、赤司に忠実の犬ということで、小春に近寄ったが、素行が悪く、と性に忠実な灰崎と付き合ってはいけないとキセキのみんなが必死に守っていた。
「ダブルで人のもんって最高じゃねェか」
「本当クズだよね〜」
「まったくもって理解できんのだよ」
「オレも2番手とか他のやつのとかぜってーやだね」
「うぅぅ〜オレはそれでも1番大切にするっスよ〜!!」
「…おい小春!パス出してくれ!」
『あ、はーい!待ってね、今行く!』
「あ、ちょ、青峰っち!オレと1on1してくださいっス!」
『じゃあ得点やるね!』
だいたい練習後はレギュラー陣が自主練をするため、赤司と帰る小春も必然的に練習に付き合っている。青峰と黄瀬が1on1していたり、緑間が3ポイントをひたすら打ったりしているのだ。
『あっくんは自主練しないの?』
「んー今日はいいやぁ、ちょっと疲れたし」
「一軍の練習のあとに自主練できるなんて、本当に人間なんでしょうかあの人たちは…」
赤司も自主練やロードワークは徹底して行なっているが、今は主将とコーチのところへ向かっている。
「田中と帰らなくていいのー?」
『征十郎さんを無事に家に届けないといけないからね』
「…赤ちんの方が何倍も強そうだけどね〜」
『そんなことないよ、護身術学んでるし、まぁ征十郎さんも嗜んでるんだけどね』
「じゃあやっぱ赤ちんの方が強いよ」
『んー、でも盾になることもできるからね!』
「赤司くんはそんなこと望んでないと思いますけどね…もともと甘えたの泣き虫なんですから素直になればいいのにってつくづく思います」
「征十郎さんの前ではいいんですー、彼氏の田中くんに甘々のベタベタするもんね!」
「……へぇ、彼氏の田中くんにはそういうことするのに幼なじみのオレにはずいぶん他人行儀じゃないか」
「「あ…」」(聞かれちゃいけないところ聞かれたなこれは)
『征十郎さんお疲れ様です、自主練して帰りますか?』
「…話をはぐらかすな、オレにも甘えろ、そして敬語やめて泣きついてこい」
(その言い方は語弊がありますよ赤司くん…)
『そんなことできませんよ、私は征十郎さんに仕える身なんですから』
「はぁ…今日はもう帰る。着替えてくるから小春ももう支度してくれ」
『はい、わかりました!てことで、大輝くんたちももう終わりにしよー』
「今日も負けたっスー!!!」
「当たりめぇだバカ、まだ一軍きて少しだろーが」
「次は絶対勝つっスよ!」
「…毎日飽きずによくやれるものなのだよ」
「アイス食べて帰ろ〜」
そして全員でコンビニに寄ってアイスを食べて、赤司と帰るのが毎日の日課だ。
ただ違うのは、みんながいる前でピロンと鳴る小春の携帯。このメンバー以外の連絡先は父親や赤司家の当主の征臣くらいのはずだ。めったになることはない。あるとしたら電話で緊急なときくらいだ。
ということは可能性は、今日交換した彼氏の田中くんしかいなかった。おそらく全員同じことを考えていたはずだ。
「小春、歩き携帯は危ないだろう、それにみんなといるときに携帯をみるのは失礼になることもあるぞ」
『あ、そうだよね…あ!ごめんなさい、そうですよね、気をつけます』
本当に咄嗟のときに彼女は敬語を外す時がある、そのとき気づいたらすぐ修正するが、赤司は気に入らないようだ。そしてメールを少しでもさせないための予防線を張った。だいたいはキセキの誰かといるのに、一緒にいるときは返せない予防線…。さすが赤司、頭の良い男だ。
(((それで言うこと聞くあたりもすごいと思うけどな…)))
このように彼氏ができてもあらゆる面で予防線を貼ることにより、すぐ別れるフラグが立つのであった。
これが彼女の日常だ。