『第18章』セミファイナル







そして会場につき、秀徳と洛山の試合をしている中、私たちは次の海常戦に備えてアップを始めていた。



「……気になりますか?」


『…和成と緑間くんが、征十郎を倒すかもしれないと思うと…見届けたい気持ちもあるよ』


「だよな!?ハーフタイムのアップから見届けてやろうじゃねえか!!」


「……そろそろ時間ね、行くわよ!」


カントクの言葉で一斉に立ち上がり、会場へとみんなと向かった。




向かった先で見たものは、緑間くんがチームプレーを尊重するプレーをする姿と、宮地さんからのエールでは微笑む緑間くんそのものだった。




そしてハーフタイムに入り、秀徳側のコートで、涼太くんと緑間くんが対峙していた。


「調子、悪くないみたいッスね」


「…どうかな。赤司はまだ”目”を使ってないのだよ」


その言葉に、涼太くんもぴくっと反応する。


「使ってくるとしたら、後半からだ。そこからが本当の勝負なのだよ」




そしてこちらでもすれ違うの洛山と誠凛。


「やぁ、開会式以来だね、テツヤ」


「はい、赤司君」

(これが、洛山。そして赤司征十郎か。…流石に雰囲気ちげぇぜ)


「よぉ、まさか忘れてねぇだろうな。あんときは随分物騒なまねしてくれたな。黄瀬もお前も必ずぶっ倒す!」


そう宣誓布告する火神くん。


「もちろん、覚えているよ、火神大我。ひとつだけ、忠告しておこう。…僕と目線を変えずに話すことを許しているのは僕に従うものだけだ。逆らう者は何人たりとも見下ろすことを許さない」


その言葉の後、火神くんは床にへたり込んだ。




「頭が高いぞ」




「(力じゃねぇ…今こいつ、何を…?)」


『火神くん…!』

「「火神!(くん)」」


急に倒された火神くんに、テツヤくんをはじめ誠凛の皆が声をかける。もちろん私も火神くんの近くにより起き上がるのを手伝おうとした。



「テツヤも僕とやるつもりなら、覚悟しておくことだ。おまえの力を見出したのは僕だ。いずれそれを思い知ることになる」


『…征十郎…』


「…全てに勝つ僕はすべて正しい。雫が京都に来ることになるのも、必然に決まっているだろう」


そして征十郎はわたしと目を合わせ、不敵な笑みを浮かべると、控え室へと向かっていった。
誠凛のみんなも征十郎の威圧感に少し打たれてしまったみたいだ。



ハーフタイムの調整が終わり、控え室に戻った私たちは先ほどの征十郎の言動と行動について話していた。


「黒子の力を見出したのは、赤司なのか?」


「さっき火神、お前なにされたんだ?」


「いや、それがオレにもわかんねー…す、けど、膝から崩れて…」


『…彼の眼の、力のせいだと思います』


「眼?リコのアナライザーアイみたいな感じのか?」


『…あの眼には、誰も歯向かうことなんてできません』


「…おそらく後半、赤司くんは眼を使うと思います」





そして試合会場に戻ると、同点だった点数が、あっという間に14点差に開いていた。


「秀徳が14点でビハインド!?」


「ハーフタイムまで同点だったのに!」



秀徳は木村が赤司にスクリーンをかけることで、緑間をマークから外そうとするが、それを読んでいるかのように木村を避けて、緑間を追う。


「(かわしただと!?)」


「(今完全に死角だったろうが!あいつの目はホークアイ並の視野があんのかよ!?)」


木村と宮地は驚きを隠せない。


緑間はボールをもらうが、赤司がいることでシュートが放てない。


「(ダメだ! シュート体勢に入れない!)」


「(シュートもドリブルも! あらゆるモーションに入った瞬間、カットされる。あの真ちゃんがマジで一歩も動けねぇ!)」


高尾がその状況を打開しようと、緑間にパスを要求する。

それを聞いて、緑間はパスをしたフリして、シュートモーションに入ろうとするが、赤司は読み切りボールをカットする。


「(あの、パスフェイクも見抜くのか!?)」


「トリプルスレッド。バスケットにおけるもっとも基本となる姿勢。シュート、パス、ドリブル、全ての動作に備えた状態のことだ。バスケット選手はどんなに早く動いていても次の動作の直前、一瞬その姿勢に入ってる」


「赤司っちの”目”はその一瞬を逃さない。あのディフェンスでは動くことすら許されない。たとえそれがフェイクであっても…」


笠松と黄瀬がなぜ緑間を止められるか解説をする。


ボールを持った赤司がコートを進むと、宮地と木村が赤司に対峙する。


「行かせるかぁ!」

「どいてもらおうか?」


赤司はそう言い、”目”を使う。


「はいそうですか!っていう訳ねぇだろ!」


「調子のんなよ!一年坊主!」

2人は対峙するが、赤司は巧みなドリブルの切り返しで2人を転ばせた。




「今のは…どうやって…!?」

 
『アンクルブレイク。高い技術を持つ、高速ドリブラーが相手の足を崩して転ばせるテクニックだよ』


「軸足に重心が乗った瞬間に切り返した時のみ、起こせる現象です。先が見える赤司くんにはそれをたやすく引き起こすことができる」


「(秀徳がまるで子供扱い!?これが…赤司征十郎)」


火神は赤司征十郎について改めて驚愕した。



「赤司!」


緑間が赤司と対峙する。


「真太郎…お前は強い。だが、負ける」


カッと目が開かれ、”目”が発動する。


「キセキの世代を従えていたのは誰だと思っている?……たとえお前達でも僕に逆らう事など出来はしない」


緑間も赤司に倒されてしまう。

また2点と点数が入り、ついに洛山との差が20点差となる。

「20点差…」


「これが洛山。これが赤司の実力か」


誠凛の皆がそう話す。

倒された緑間に高尾が手を差し伸べる。


「ほら真ちゃん…」


沈んだ様子の2人に後ろから宮地が緑間の頭を叩く。



「いつまで座ってんだ!馬鹿。メガネ割るぞ」


見たことない表情してる。緑間くん


「おい! あの字が見えねぇのか!?シャキッとしろや!」


不撓不屈(ふとうふくつ)という文字が掲げられているのを指す。

気が付くと、秀徳の応援席から声をあげられているのに気付いた2人。


「緑間!高尾! まだ時間はある。最後まで諦めるな! まずは一本だ。」


大坪さんが高尾にボールを渡す。


「勝ちに行くぞ」


その言葉に、和成と緑間くんの雰囲気が変わった。


「まだ勝負は分かりません」

テツヤ君が声をあげる。

「え?」


火神くんはその言葉に驚くと、


「なぜなら緑間君たちはまだ諦めていません」


とテツヤ君は続けた。

立ち上がった緑間は高尾に声をかける


「行くぞ、高尾」


「おうよ!」


『…あの人たちはここで終わるわけないです』




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