『第18章』セミファイナル
次の日ーーーーー。
セミファイナルを迎えた朝、対海常戦は午後からだ。そしてその前には秀徳と洛山の試合もある。
いよいよきたんだ…
あともう少しで手が届くところまで……!
試合会場に行く前に、私は“ある人”と待ち合わせをしていた。試合への緊張感を持ちながら、私は待ち合わせ場所へと向かった。
一方火神と黒子は2人とも同時にバッシュが壊れてしまい、青峰と桃井の手助けもあり、なんとかバッシュを揃え、皆と合流した。
「すいません、遅くなりました」
遅くなったのは、主に火神のバッシュのサイズがなかったからかのだが、念のため謝罪した黒子だった。
「遅せぇよ」
「ちゃんとバッシュ買えた?」
カントクの質問に二人は頷く。
「そろそろだな。洛山と秀徳の試合」
木吉がそうつぶやいた。
降旗が「洛山の強さについて」質問をすると、キャプテンの日向が説明をする。
「ウィンターカップ開催第1回から、ずっと出場している超強豪だ。優勝回数は全校中最多。最近の戦績は5年間連続三大大会総なめ。………一言でいえば、高校最強だ」
「その中でも今年は、過去最強の布陣だと言われている」
「キセキの世代・赤司征十郎っすか」
火神はそういう。
うちのマネージャーの雫の最も倒したい相手、そして想いびとの“キセキの世代キャプテン”
一体どんなプレーをするのか。
あのキセキの世代たちをまとめていた人物だ。並外れた能力に違いないと考えていた。
「だが、それだけじゃない。無冠の五将って覚えてるか? キセキの世代の陰に埋もれた5人の天才。木吉と花宮、そして残り三人は洛山にいる」
「雫さんを京都に行かせるわけにはいきません。……そして、その前に倒すべき相手がまだ1人…1チームいます」
誠凛に少し重苦しい空気が流れる。
「で、肝心の雫は?」
「あぁ、ちょっと人に会ってからからっていうことで、遅れてくるそうよ!」
「へぇ、珍しいな…いったい誰と…」
「……おそらく、再度の宣戦布告でしょうね、彼からの…」
火神は想像つかないみたいだが、黒子には分かっていた。宣戦布告…、改めて戦う相手…そう。
(おそらく、試合でも雫さんへも二つの意味でリベンジマッチでしょうね)
予想もつかない火神をよそに、わかっているであろう先輩方に連れられ、誠凛は体育館へ入っていった。
「ごめんね待たせちゃったかな??
涼太くん」
「いや、さっき着いたところっスよ、ボールいじってたし、全然待ってないっス」
そう、雫が呼び出されたのはセミファイナルの相手、海常のエース、黄瀬涼太だった。
彼はコンビニのビニール袋から、雫の好きなリプ○ンのピーチティーを取り出して彼女に渡し、ベンチに腰掛けるよう促した。
「ありがとう、いつも覚えててくれてるんだね」
「当たり前っスよ、中学で初めてできた心を許せる人の好きなものは忘れないっス」
心を許せる人。
見た目ばかりに寄ってくる中身のない女の人、見返りを求めてくるようなあざとい女のひと。
いろんなひとを見てきた中で、唯一見つけた癒しだった。
ーーーーーーーーーーそして心を奪われた人。
「今日……ウチからしたら今日の試合はリベンジマッチになる。前のように舐めてかかることは絶対にしない…全力でいくっスよ」
「もちろん、ウチだって、負けるつもりないよ」
ただ、雫は心配していた…。彼のオーバーワークで痛めてしまった足を。しかし、今日は試合の相手校のマネージャーとしての立場がある。
“出ないで”なんて言えるわけないのだ。
「もし、オレが誠凛に勝って、赤司っちとやることになったら……オレが赤司っちを倒すッスよ」
涼太くんはいつも心配してくれていた。
彼が変わってしまったとき、何度も守ろうと、庇おうとしてくれた。
何度もその優しさに救われ、甘えて、縋ろうとさえした私だったのに、結局は征十郎に抗えずにこの間も許してしまった。
変えたいのに、許してしまう矛盾の自分が恥ずかしい。こんなにも彼は真摯に向き合ってくれていたのに。
そんな葛藤の表情が出てしまっていたのだろう。あるいは見えない涙が流れていたのか…。涼太くんは溢れる涙を救うように私の頬に手を添え撫でた。
「倒しても、赤司っちが変わらなくて…雫っちを傷つけてしまう赤司っちのままだったらーーーーーー。」
私はその後の言葉をきいて、目を瞑ったと同時に本当に涙が一雫流れ、「うん」と小さく呟いた。
「ありがとう」
そして彼は数分間私を抱きしめ、敵同士だからと一緒に向かうことなく、先に会場に向かうことを決め去っていった。
私はいつも、涼太くんに甘えてばかりだね。
でも、征十郎を変えるのは私たち誠凛でありたいから。
次の試合負けるわけには行かないと、強く意思を再度持ち、会場に向かった。