『第17章』灰崎と黄瀬
火神は黄瀬とこの試合に勝って次は戦うと誓ったと。黄瀬を信じる火神たちの目の前で黄瀬を圧倒していく灰崎。
「技のストックも底をついてきたっていうのに・・・クソッ!足も」
「惨めだな~つくづく」
足の痛みもあって立ち上がらない黄瀬を過去に当てはめて笑う灰崎。
(あのとき、1on1のあと、涼太くんの彼女?が灰崎くんを迎えに来た日だ)
「まさか・・やられっ放しで終わるっていうのかよ」
悔しそうに言う火神の隣に座っていた黒子がスクッと立ち上がる。
「信じてますから!黄瀬君!!」
黒子の声にハッとする黄瀬
「黒子っち・・・」
そしてその隣で、信じていると見つめている雫。
(雫っち……)
雫っちは出会ったとき、モデルのキセリョに対しては無関心で、黄瀬涼太に付き合ってくれた…オレ自身を見てくれていた…。
“ 倒れることは恥じゃないよ、そこから起き上がらないことが恥なんだから”
いつだってオレの心を支えてくれた。
たとえ雫っちが赤司っちをみていても…オレはずっと彼女をみていた。
「祥吾君さ、勝つ前に言っとくけど、勘違いしてるよ?…見た目で群がってくるバカ女達の1人取ったくらいで調子に乗ってんじゃねーよ!!オレは初めから1人の女しかみてねーよ!」
「…これなら仲良く出来るんじゃないスか?スタイルが全然違う」
そう言って黄瀬が繰り出したのは緑間の高弾道3Pだった。
「キセキの世代のコピーだけは出来なかった筈じゃ?!」
「克服したのさ」
ざわめく会場の中、黄瀬の努力を知る笠松は言う。しかし、やはりキセキの世代の技のコピーは身体への負担が大きくやれるのも制限があった。もって5分 しかし、今の黄瀬はキセキの世代全員の技を使える パーフェクトコピー
「女だの肩書きだの欲しけりゃくれてやるよ、いくらでも。そんな事より大事な約束があるんスよ俺には」
それは黒子と火神と大切な雫との約束。
「必ずそこへ行く!邪魔すんじゃねーよ!」
一度見れば技を奪える灰崎にもどうしても奪えない相手がいた。それがキセキの世代。
そのキセキの世代の技で猛追する黄瀬。
「ざけんな!くそっ!!」
「馬鹿が!動揺しやがって」
青峰だけでなく仲間も灰崎のプレーに動揺する。相手ではなく味方の技を奪ってどうしようというのか?
そしてそんな灰崎の前に立ち塞がるのは・・・紫原を模倣した黄瀬。それぞれ足りない部分は努力と工夫でコピーを再現させ、木吉に「底なしのバスケセンス」と言わしめた。
「調子はどうスか?」
キセキの世代の座を奪ってやろうかと言ったのを逆手に取られる灰崎。
そしてとうとう海常が逆転に成功する。
そんな灰崎の脳裏に赤司にバスケ部を追放された時の事を思い出す。
“あぁ?赤司、今てめぇなんつった!”
“バスケ部を辞めろ これは命令だ”
これでも、今まで勝利に貢献してきた灰崎を気遣ってだと言う赤司。今に黄瀬にスタメンの座を奪われると。
常に奪ってきた自分が奪われるーーー。
「赤司の言うとおりだったって事かよっ!でも認めるしかねえな!涼太、テメェは強い…なら、もうどうなっても知んねーよっ!!」
ぶっ潰してやると言うといきなり痛めている方の足を力いっぱい踏んづけたのだ!足を痛めていたのに気付いていたのだ。しかし、このラフプレーは一瞬過ぎて審判も気付いていない。
その隙にボールを奪いとどめを刺そうとした灰崎だったが
「言った筈っスよ!邪魔すんじゃねーって!!」
すぐさまブロックする黄瀬。
「勝つのはおまえじゃない!俺だ!!」
そしてそのまま福田総合に勝利する海常。
ーーーーこれで誠凛の次の相手は海常と決まった。
すると大きく息を吐いた黄瀬は火神達に向かって拳を突き出して見せた。
『…涼太くん…。』
黄瀬の前では笑顔でほっとした顔を見せた雫だったが、やはり様子が試合前からおかしい。それに火神はずっとひっかかっていた。
黄瀬が勝って嬉しい。
ほっとした顔も本物だ。
でもどこか煮え切らない様子の雫に、黒子は気づいているのか?
『先に帰っててください』
そう言って雫は俺たちより先に客席を立った。
「…黒子どう思う」
「…灰崎くんは練習をサボったりすることが多くありました。よくそれを見放さずに連れ戻そうとしていたのが赤司くんの前の主将と雫さんでした。……そして、赤司くんに強制退部させられたときも、彼を追いかけて行ったのは雫さんです」
心配、しているんだと思います。
そう黒子は言っていたが、なんとなく穏やかな気分にはならなかった。
黄瀬にレギュラーを奪われ、赤司に強制退部させられ…その2人に想われている雫に、灰崎は怒りの矛先を向けることはないのか?
馬鹿なオレでも少し考えられたが、黒子は落ち着いている。
「なんですか?火神くん」
「いや…なんでもねぇよ」
「雫さんなら大丈夫ですよ」
なんでそう言い切れる?と聞こうと思ったが、主将の声で発せられなかった。
「次は海常か……」
日向先輩たちは海常をみて、ライバル的な心地よい敵意をお互い向け合っていた。
ーーーーー灰崎くんは、本当はバスケも雫さんも好きなんだと思います。