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『第17章』灰崎と黄瀬





“ 世の中いい奴ばっかじゃねーんだよ。本当に悪い奴や恐ぇ奴だっているんだぜ”



“ …残ったお前らの方がかわいそうな目にあわねーとは限らねーんだぜ”



中学二年生のとき、灰崎くんに言われた言葉を思い出した。
恐いって、征十郎のことだったの?灰崎くんは“今の征十郎”をすでに知っていた……?



かわいそうな目に…


脳裏にテツヤくんの全中最後の試合の涙が浮かんだ。





「……またなぁ、雫チャン?」


そして呆然と立ち尽くす私を離して、灰崎くんは去っていった。














灰崎くんが去った後、氷室さんはなぜここに?と火神くんに聞いた。


「わりぃ。また今度話すよ、必ず」



涼太くんは私のそばに来て肩に手を置いた。



「……雫っち…、大丈夫?」


何に対して?とは聞かなかった。色んな意味の心配だろうと思ったから。


『……涼太くん』


「はいっス」


『勝ってね、絶対…セミファイナルで待ってるからね』


「!……もちろんっスよ、デカイ借りも返さなきゃいけないしね」


そう言って私の唇に指を当てた。


「ぜってぇ勝てよ!黄瀬!負けんじゃねえぞ!」


火神くんも涼太くんに激励した。











「ずいぶんと遅かったですね…仲直りはできましたか?」


客席に戻ると、黒子が聞いてきた。あれから雫の様子がおかしかった。


“灰崎と昔なんかあったのか?”



“……なんもないよ。何も、できなかったから”



「いや…それが…黒子、お前灰崎ってやつ知ってるよな?」


「!…なぜ彼を知っているんですか?」


そしてオレはさっき起きた出来事を話した。



「…雫さんの様子がおかしいのはそのせいですか」


「また雫ちゃんを狙う危ないひとが増えたわね…」


「で?灰崎ってどんなやつなの?」


コガ先輩が黒子にきいた。


「自分勝手でとにかく制御できない人でした。……けど、それでも一軍レギュラーだったは事実です。強いのは間違いありません」














「俺とやたらスタイルと似てっからなぁ」


本気でやれと挑発する黄瀬にそう答える灰崎。


ベンチの武内はここまでは想定内と評価しつつも何か説明の出来ない違和感を感じていた。




今度は止めると灰崎の前に出た黄瀬だったが、次の瞬間灰崎がやって見せたのはさっきの笠松のドライブ。海常は当てつけと感じる。
福田総合はやっと灰崎のエンジンがかかってきたと話をしている。


今度は海常は外から森山が相変わらず独特のフォームからの無回転パスを決める。


「へぇ~いいな、それ」


なぜか森山を見てニヤリとする灰崎。


その次の瞬間、カウンターで弾丸突破を仕掛けた福田総合。だが、なぜか灰崎は味方の球を強引にカットして自分がボールを持つ。


「全部俺に回せって言ってんだろ」


そして目の前の森山を見た次の瞬間、森山の模倣をやってのけたのだ。



「いえ、少し違います」


灰崎の能力を黄瀬の模倣と同じ…?と口にした火神にそう返す黒子。


ますます勢い付く福田総合。
流れを引き戻そうと突破を試みた笠松だったが、得意のドライブが通らない。
今まで手を抜いていたのか?
しかし、どこかチームの様子がいつもと違うと感じる武内。


だが、ここで流れを変えたのは早川。得意のリバンでボールを奪うとそのままシュートを決める。
そんなに背が高いわけでもないのに・・・
木吉はジャンプには2種類あり、火神は耐空力なら早川は瞬発力によってイイ位置でボールを奪う事が出来ると説明する。


「へぇ~イイじゃん、それ」


早川を見てニヤリとする灰崎。
すると、早川がスクリーンで足止めされている間に先ほどの早川と全く同じにボールを奪ってシュートを決めてみせたのだ。


「まずい流れだ・・俺がなんとかしないと!」


そんな黄瀬の前には灰崎。また勝負を避けるのか?と挑発をした。
そんなわけないと決めたシュートは、初めて試合をした際に火神が見せた1ハンドダンクだった。


「今のもーらい♪」


ニヤッとそう言ったかと思うと、同じく1ハンドダンクを決めてみせる。


「つくづく似てるっスね、俺達」


「おめぇは知らないんだっけな 俺はおめぇみてぇな猿マネとは違うぜ?…


ダメダメ、何度やったっても無駄だ。そりゃもうおめぇのもんじゃねーよ」


森山が連続でシュートをミスる。
ここでやっと灰崎に真似されたプレーが全て上手くいかなくなってる事に気付く笠松。
実は、黄瀬と灰崎は入れ替わりでレギュラーの座を変わっただけでなく、もともと練習をさぼり気味だった灰崎がマジにプレーした所を見ていない為、灰崎の本当の能力を知らなかったのだ。


灰崎は単なる模倣ではなくリズムやテンポを我流に変えてしまい、それを見せられた選手は今までどおりのプレーが出来なくなってしまうのだった。


「コピーではなく技を奪う」


やすやすと奪った技で点を入れていく灰崎


「コイツは俺のもんだ」










「黄瀬の動きがおかしい いつものアイツじゃねえ!」


「はい。技を奪われたとはいえここまで崩れるとは思えません」


『… 一度見れば相手の技をコピー出来てしまう涼太くんはかなりの数の技のストックを持っているけれど、それでもその中で灰崎くんに通用するとなれば限られてしまう…しかも使えば奪われていくという状況下でストックが切れかかっているんだと思う……それに…』


ようやく言葉を発した雫の発言に対し、それに?と聞き返す火神。それに詳しく返したのはリコだった。


「おそらく、桐皇戦のIHから完治していないのに、練習を重ねて足を傷めてしまったんだと思うわ!」


『オーバーワーク…しちゃったんだと思う』






「それでも、アイツが負けるわけねえ!!」





火神を含め、誠凛は誰一人、黄瀬が負けるはずないと強く思っていた。





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