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『第16章』陽泉試合編






「行くぞ、新フォーメーション!」


日向先輩の号令で始まった次の作戦。
それはオール・コート・マン・ツー・マン・ディフェンス。
むっくんがゴール下に到達する前に点を決める。そっちが総力でくるならこちらも!陽泉も動きを止めずにボールを運ぼうとする。しかし、ただのオール・コート・マン・ツー・マンではなかった。いつの間にかマークしてた人間が入れ替わって・・・


ステルス・オール・コート・マン・ツー・マン・ディフェンス


予期しない場所から突如現れるテツヤくんにパスを奪われる。そして、むっくんが追い付く前に幻影のシュートを決める。


これで4点差。隣の木吉先輩の顔がほころぶ。


本来、早いパス回しで突破するのが最善だが、神出鬼没のテツヤくんのせいでパスを簡単には出せない上に、自力で点を入れに行こうとするとカットされる陽泉。

しかも、シレッとした顔してテツヤくんがいる事を計算に入れてワザと抜かせた伊月先輩。ただ、残念な事に、そのシュートはホイッスルの後でノーカンになってしまったが。



そして誠凛も、陽泉がこのままなわけはないと考える。すると火神くんがリコさんにオール・コートを突破された際、むっくん同様、ツー・スリー・ゾーンの真ん中をやらせて欲しいと言い出す。


「誰が来ても止める!木吉先輩の分まで」


そして何も喋らない木吉先輩に焦れて日向先輩が振り向くと 涙を流している木吉先輩が。


「上手く言えないけど、おまえら見てたら頼もしくてホッとしたってか、1人じゃない事を実感してつい・・・な」


チームとは守るモノだけじゃない。守ってくれるのもチーム。


『…木吉先輩が作ったバスケスタイルじゃないですか』


そう、キセキの世代がなくしてしまったもの。取り戻したいもの。それをこのチームは持っている。


「1人1人が支え合って初めて出来るもの それがチーム」


それを知ったから。二度と揺るがないと決意する。


「バスケは1人でやるものじゃない。みんなで戦って勝ちたいし、出来ると信じてます」


テツヤくんの言葉にチーム全員で円陣を組む誠凛。



コートに入ってきたテツヤくんに気合いも何も捻り潰すと宣言するむっくん。


「そんなヤワじゃないですよ、誠凛は」


テツヤくんも睨み返す。そしてもう一組


「手加減しねえぜ!」


「当然だ!決着を付けるぞ」


「行くぞ!絶対勝つ!!」


ベンチの木吉先輩はリコさんに改めてバスケが好きだと口を開いた。


「だからすまん、これっきりだ。頼みがある」


ラスト1分でイイ。動けるようにしてくれ!


みんな無謀だと感じるが、止めても聞かないとわかっているリコさんは3分間だけと、席を外した。


「雫ちゃんは、ずっとみていなきゃだめよ、だから、少しその間指示をよろしく」






「ただパス出しゃそれでイイんだよ。うちのセンターは紫原だ」


並みのチームならかなりのプレッシャー。しかし、むっくんへの信頼は相当なもの。


「のぼせるのもたいがいにしなよ!」


火神くんが自分と同じ事をしようとしている事に怒りをあらわにする。それでもやらなきゃ勝てないならやるしかない!


だが、陽泉の攻撃は・・・氷室さんと火神くんの1ON1


「行かすかよ!」


「やってみな」


いともアッサリ火神くんを抜いた氷室さのフェイクの質は、ここにきて数段速くなっている。
しかし、ここはテツヤくんが立ちはだかる。むっくんの声で寸でで止まる氷室さん。


本気でむっくんと同じ事をしようとしている火神くんに対し、怒りを露わにしているのは氷室さんも同様だった。


「なめてるっていうんだよ!!!」


「気に入らねえよ!1人でみんな止めようなんて虫のイイ考えは心底気に入らねえ!火神っ!!」


相手をする火神くん、本人も薄々気づいていたが、先ほどミラージュ・シュートの正体はもう伝えていた。


「知ってるよ!バレてる事は」


しかしこのミラージュシュートの真の恐いところは、木吉先輩の「後出しの権利」同様、相手の出方で一度目と二度目のどっちのリリース時にシュートするか分けられるのだ。


並の選手ならただ2度シュートしたようにしか見えない。フェイクすら洗練された技術を持つ氷室さんだからこその恐ろしい技。


「気付いたところで意味なんか無いんだよ」


どうしても止められない氷室さんのシュートに、火神くんは何か様子がおかしい。いつもの動きができていないのだ。


誠凛の珍しいフォーメーション。そして木吉がいないこの状態。テツヤくんのファントムシュートも必中じゃないため決まらない。オフェンスの要が崩れてきた。しかも、ディフェンスは突破されたら打つ手なしときている。どんどん陽泉は点を入れ、差が広がっていく。


「やっぱ無茶だ!火神は勝算があるのか?」


「ただなんとなく、このままではダメな気がします」


むっくんと火神く?の対決でコートの外に出てしまったボールを取りに行った時。ボールを取ってくれたのは涼太く?だった。


「なんスか、その体たらくは……。知り合いかと思ったら違ったっスね アンタ誰?」


涼太くんは火神くんの異変に気付いているみたいだ。


「知らねぇよ!何かに縋ってバスケやるようなヘタレは」


縋っている・・・彼はゾーンに入れればと雑念が入り、いつものプレーができなかったのか。


「黒子、おまえゾーンってのに入った事あるか?」


「そんなホイホイ入れたら誰も苦労しません」


ここでやっと火神くんが冷静さを取り戻す。


「どんなに苦しくても、今出来る事をやるしかねえよな!」



そしてタイムアウトになり、火神くんは厳しいことをみんなに伝えた。


「やっぱ、紫原と同じ事をするってのは無理があった。すんません。まずはゴール下に集中するんで」


すると、それを素直に受け入れた火神くんに日向先輩たちは目をパチクリ。


「なんとなく、今の火神君はあの人に似ています」


『うん、すごく似てる、本当に頼りになるね』


それでも、陽泉が点を入れて行く。だが、雑念が消えた火神くんに逆にヒヤヒヤさせられている陽泉。


そして突然、「その時」がきた


あっという間に自分を追い越していく火神くんを見て、日向先輩はさっきのテツヤくんの言葉を思い出す。


「雰囲気というか、一番ノッてる時の青峰君に」


物凄い速さで回り込んだだけでなく、むっくんのシュートを叩き落としてみせたのだ!



「火神ぃー!」


「つくづく思います。火神君は誠凛の「光」だと」


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