「どうせ、下がれって言ったって聞かねえんだろ？」



ディフェンスの負担でも何でも・・・と食らいつきスティールを成功させる。
そして今度は伊月先輩、火神くん、水戸部先輩がむっくんに２人同時攻撃を仕掛ける。


「ナメてんの？おまえら程度、まとめて捻り潰してやるよ」


シュートは木吉先輩。だが、疲労が溜まっているのか、外してしまう。
必死にむっくんを止めようと踏ん張る水戸部先輩。その一瞬の足止めが効き、むっくんより一瞬早くボールを奪った火神くんがゴールに叩きこんだ！
これで５点差だ。



『…っ！むっくん…』


「雫ちゃん？」


『彼が、動き出します』


（だったら教えてやるよ　バスケがどんだけ残酷なスポーツかって）


「あー、もう無理だわ！不愉快過ぎて吐きそうだわ」


突然の言葉に驚愕の誠凛


「これを・・・止めるのかよっ！」


「きやがった！」


「努力だの、根性だの、信念だの　捻り潰してやるよ！　全て」


むっくんがついにオフェンスに参加した。



『実はキセキの中で一番の好戦的でオフェンスが得意なタイプなんです。前に、彼が激高した試合で１００点以上もありました』


「は！？１００って…まじで！？」


ーーーーーーー目覚めた怪物。


「１人で止められるなんて思ってないさ！」　


だが、誠凛も何も考えていないわけではない。むっくんに対し木吉先輩、日向先輩、水戸部先輩のトリプルチームを。しかし、ガードどころかむっくんに３人吹っ飛ばされてしまう。


破壊の鉄鎚　トールハンマー…


しかし、紫原がオフェンスに参加するという事は・・・カウンターが決まる隙が出来る。おそらく伊月先輩はそう考えた。だが、俊敏さと一歩の大きさからか、あっという間に追い付いてしまう。
しかも、陽泉は木吉先輩のトリプルチームを解いた。木吉先輩とむっくんの一騎打ちだ。


シュートに飛んだ木吉先輩にむっくん飛ぶ。
と、ここで後出しの権利で伊月先輩にパスを出すつもりだったが、むっくんは左手で叩き落としてみせたのだ。


「もう、飽きたし　そのパターン！」


木吉ＰＧが破られて呆けた一瞬を突いて陽泉はカウンターで攻め込んでいく。止めに飛んだ火神くんだったが・・・


火神くんが吹っ飛ばされただけでなく、なんと！ゴールそのものを壊してしまったのだ。


（なんという怪力！！）


「そもそもバスケなんて欠陥競技じゃん」


結局、デカイ奴が勝つって決まってる・・これがクソスポーツの根本と吐き捨てるむっくん。


「どんな理想も、俺にとっちゃただのゴミだ」


さすがの味方ですら息を飲む怪力に会場は静まり返る。


再び絶望を感じ始める木吉先輩。


私も中学時代の木吉先輩のいた中学、照栄中との試合を思い出していた。


“結局そんなもん？つい、イラついて本気出しちゃったけど、必要なかったわ守れてないじゃん”


再開しても事態は変わらない。止められない。


「やっぱり、ダメなのか」


そう思いかけた気持ちをまだだ！と思い直しボールを追いかける。


「え・・っと、こう？」


しかし、そんな木吉先輩の気持ちにとどめをさすように、むっくんは見よう見真似のバイスクローでボールを奪い、そのままゴールに！


「そんな事させるものか！もう二度と！！」


火神くんと共にブロックに飛ぶ。しかし、またも吹っ飛ばされてしまった２人。そしてそのまま起きあがれない木吉先輩。
そんな彼に手を差し伸べたのは・・・むっくんだった。そのまま釣り上げられた木吉先輩に無残に言う。


「これが現実でしょ？成す術なく体力も尽きて。アンタが引っ込めば完全にインサイドは死ぬ。どう足掻いても誠凛の負けだよ。

で、どう？楽しかった？バスケ

…また守れなかったね」



と言う彼の言葉に木吉先輩の気持ちは完全に折れてしまったようだ。


『…木吉先輩…、むっくん…』


日向先輩は打ちひしがれる木吉先輩を支えた。そしてテツヤくんと交代になった。


「すまんな、あとは・・・頼む！　勝ってくれっ！！」


悔しさに血が出るほど唇を噛んでいる木吉先輩。その思いごと受け取ったテツヤくんがむっぬんの前に立つ。


「まだ終わってませんよ！いなくても意思は受け取ってます。

僕が代わりに君を倒すっ！」



「捻り潰すよ、黒ちんでも」


睨み合う２人。



実は、帝光時代もこうして睨み合った経験があった。普段は別に仲が悪くも無いのに、バスケとなると全く意見が真逆だった２人。


「努力が実るとは限らない　そんなもん、常識でしょ」


２軍に上がったばかりの選手に「やめたら？」と言ったむっくんに腹を立てていたテツヤくん。

「実らないとは限らない！」


さしてバスケに興味が無いのに、才能に恵まれて今まで負け無しのむっくんと、バスケが好きなのに才能に恵まれず、絶望すら味わいながら活路を見つけて今に至るテツヤくん。


どちらが正しいと思うか？と、涼太くんは青峰に問うていた。だが、青峰の答えは「知るかよ」ただ、自分の信念を貫き通したかったら戦って勝つしかないと答える。


「人の努力を否定してしまう君には絶対負けたくない！！」


テツヤくんのその言葉に綺麗事　ウザイと怒りを露わにする。


「頼むぞ、黒子！」



木吉先輩の意思を受け取ったテツヤくんが切り込んでいく。止めようとした劉さんの前でバニシングドライブでかわし、今度はむっくんがテツヤくんの前に立ちはだかる。シュートを打とうとするが・・・


むっくんが叩こうとせず、伸ばし続ける手に、テツヤくんはシュートからパスに切り替えた。受け取った火神くんがそのままシュートをぶち込んだのだ。


みんなで力を合わせるなんてゴミと言ったむっくんについたのはテツヤくんだった。まさかの行動にその場の全員が驚く。


「ふざけてません！止める気ですから」


しかし、小柄で細身のテツヤくんなど軽過ぎていないよう。決めちまえ！と言ってパスを出した福井さんから受け取り振り返ったその時！背後にいた筈のテツヤくんがいない。えっ？と思った次の瞬間、予想しない所から現れたテツヤくんを転ばせてしまい、チャージングを取られてしまう。


「大きいだけで勝てるほど、バスケは単純じゃないですよ」


これこそ、彼氏が提案した作戦。だが、これはこの１回しか使えない。そこで誠凛は次の作戦へと移る。


伊月先輩からのパス⇒日向先輩のバリアジャンパー


「ああ？！外すわけないだろうがっ！」


「黒子だけじゃねぇ！一泡吹かせてやりたいのは俺もなんだよ！！」



その言葉に木吉先輩はベンチでぼーっと驚いたような様子でみていた。