『第16章』陽泉試合編
そしていよいよ4回戦目ーーーーーー。
勝てばセミファイナル出場だ。
相手はむっくん率いる陽泉高校、2メートルを超える選手が3人も揃っている。
全国で1番ディフェンス力が高く、“イージスの盾”とも言われている。それに加えて氷室さんのオフェンス力もかなり高い。
「夏のストバス以来だね。今度は忘れてないよ。まずはアンタから捻り潰そうかな……木吉鉄平」
「やれるもんならやってみな!」
むっくんと木吉先輩。
「正直、アンタとはやりたくなかったよ。あの頃のままでいたかったーーーーー。けど、こまけー事はもういい!こうして俺たちの前に立ちはだかるなら躊躇わねえ!全力で倒すだけだ」
「安心したよ。心置きなくやれそうだね、大我」
火神くんと氷室さん。
お互い因縁の対決が始まろうとしていた。
そして試合開始、ジャンプボールはむっくんが最高到達点に達する前に触れてしまい誠凛ボールに。ここでもむっくんの高さに思い知らさせる。
そしてどんなに早くパス回しをしても、むっくんのずば抜けたウィングスパンと瞬発力でスリーポイントエリア内は全てブロックされてしまう。
“あの新協のお父さん(パパ)が可愛く見えるぜ!!”
リバウンドを取ろうとしても、あの木吉先輩と火神くんが飛んでも、さらに高く伸ばされた手がゴールに押し込んでしまう。先制点は陽泉だった。
テツヤくんのサイクロンパス⇒伊月先輩でカウンターで点を取ろうとするが、ゴール下には攻撃には全く参加せずひたすらゴール下を守るのみに専念しているむっくんが立ちはだかる。
ゴール下から動かないという事は・・・付け入る隙がない!
中がダメなら外!日向先輩が3Pシュートを放つも高いブロックに阻まれるだけでなく、そのボールを奪われてしまう始末。
フィールドゴールの確率は5,6割。だからこそリバウンドを確保する事は重要。
それが出来ないという事は・・・
18-0 未だ点が入らない誠凛。
あと15秒で第1Qが終わってしまう。ここを18点で終わらせられるか?20点差にしてしまうかで選手の精神的疲労が大きく違ってしまう。致命傷になってしまう。
『なんとかここは守り通したいところですね』
「…大丈夫よ、ここで頼りになるのがあいつだからね」
実は冬の特訓中、木吉は走り込みの他に握力の強化をはかっていた。それを見たリコの父、景虎は敢えて掴みにくい石を渡す。
「黒子というパスのスペシャリストが入った今、何より欲しいのは守る力です」
掴みにくいものを掴むトレーニングが効果的と。
「アイツらと約束したんだろ?もっとデケェもん掴みたいなら、それくらいは余裕で掴んでみせろぃ」
「負けるか!誠凛のゴール下は俺が守る!バイスクローーっ!」
そして木吉先輩はなんと片手でボールを掴んでリバウンドを制したのだ。なんとか18点で第1Qを食いとめた…しかし、ピンチには変わらない。相手の隙の無いディフェンス。
「勝つ為にはどうしても中から取らなきゃダメだ!」
『…テツヤくんの特訓の成果を見せる時がきたね』
「僕に…やらせてください」
みんなが驚いた様子でテツヤくんをみていた。
第2Q開始早々、誠凛の息の根を止めに来る陽泉。このまま第2Qも0点で抑えられると万事休すだ。
攻めあぐねる伊月先輩から木吉先輩にパス。そこからシュートをしようと飛んだが、実は本命は火神くん…と見せかけての…。
「勝手に決めんじゃねーよ!」
パスは火神くんからテツヤくんへ。
(黒ちんにシュートはあり得ない、あっても入るはずがない!なのに…っ)
「なんだ?そのフォームは?!」
むっくんの驚く顔がみえる。
『いくらむっくんでも、そのシュートは止められないよ…だってそのシュート
消えるものーーーー』
むっくんの手をすり抜けゴールするテツヤくんのシュート。彼のシュートが決まった事に驚きが隠せない陽泉。
イージスの盾を破り。そして大会初失点を奪ったのはテツヤくんだった。
「黒ちん・・・」
コート上で睨み合う2人。
「まさか、今大会初失点が黒ちんとはね」
「そうですか。じゃあ、以後気を付けて下さい」
そしてゴール下では火神くんと岡村さんのマッチアップが度々行われ、火神くんが押されていた。
「火神!腰だ腰!もっと腰を落とせ!アイツ大きいから気を付けろよ!夏に死ぬほど足腰鍛えただろ?その2つさえ忘れなきゃおまえは負けねぇよ!」
わかりきってる事ばかり言う木吉先輩にカッカカッカする火神くん。
点を取れば相手に取られ返され・・・あとは火神くんが岡村さんを止められれば!
苦戦しつつ、さっきの木吉先輩の言葉を整理していた火神くんは、相手の体格に惑わされて腰を落とし切れていなかった事に気付く。やっと火神くんが岡村さんを止め、リバウンドは木吉先輩がバイスクローで勝ち取った。パスを受け取った日向先輩がカウンターで。最後はテツヤくんがファントムシュートで決める。
第2Q終了 29-17 ここまで点差を縮めた。だが、
「アイツらがこんな筈ねぇ。おそらく、本当にヤベェのはこれからだ!」
まだ攻撃の要の氷室さんも何もしていない。そして、むっくんもオフェンスに参加していない。
(後半からが、本当の勝負だ)