『第15章』特訓と再確認






みんなを起こし終えて、そろそろ帰ろうかと帰り支度をしていると、お手洗いに行った小金井先輩の悲鳴が聞こえた。



「コガどうした?」


『小金井先輩?』


「Hey, what's going on? What's all this noise about? Huh? Oh Taiga, you came back. I missed you so much.」
(おいおい なんだようるせーなー ん?おータイガ帰ってきたのか 会いたかったぞコノヤロー)


金髪の綺麗なナイスバディのお姉さんが火神くんに抱きついた。…下着姿で。そして火神くんにキスをした。


「「「!?」」」(火神このやろう!!)


『わぁぁぁぁ』(生チュー見てしまった!)


「Hey? Who the hell are you guys?」
(あれ?だれだお前ら?)


「What・・・What are you doing all of a sudden!?」
(いきなり何してんだよ!?)


「What's the matter? It's nothing, isn't it?」
(えーいいじゃんか別にー)


「Why are you here in the first place!?」
(そもそもなんでこんなとこいんだよ!?)


そして金髪のお姉さんは挨拶をしてくれた。どうやらアレックスさんというらしい。パンツ姿のまま自己紹介するアレックスさんに、火神くんは服を投げつけていた。


そしてそのあと、どうやら日本語が話せるアレックスさんが私たちのために日本語で話していた。


「「「火神(くん)の師匠!?」」」


伊月先輩が雑誌からアレックスさんを探すと、どうやら女子プロバスケチーム(WNBA)にも所属していたとのこと。視力を落として引退してしまったらしいが……


『すごいですね…カッコいいです』


「あ、雫!あんまアレックスに近づいたら…」


「oh!日本の女の子はとってもcuteだね!」


『っ!!』


アレックスさんに唇を奪われてしまった。


「「「雫(ちゃん)!」」」


「これはまずいですね、女の人とはいえ、バレたら怒られそうです」


「what!?いつからそこに!?」


「最初からいましたけど…」


「それでなんで日本に?」


「こっちの女子もcuteだな!」


「「「カントク!!」」」


リコさんもキスされてしまった。どうやらキス魔らしいが、女子供だけという。あれ?火神くんにもしていたよな??


テツヤくんがなぜ日本に?と聞き直すと、どうやら火神くんと氷室さんの試合を見にきたらしい。


「でも、まだ戦うって決まってませんよ?」


日向先輩がそういうと、アレックスさんは一度落ち込んでいたけど、しばらく日本にいて試合を見ていくとのこと。


「じゃあ、私も一緒に行く!」


明日はうちのチームは試合はないから、観戦だけだけど一緒に行くことになった。















帰り際にテツヤくんに電話の相手は赤司くんですか?と聞かれた。


『ううん、さっきの電話は青峰だよ、今度話したいことあるって言われただけで、特に大きな用事はなかったみたいだけど』


「…ボクの大きな課題はシュート力です。雫さんも知っている通り、練習してもなかなかこれが難しくて」


テツヤくんが景虎さんに言われた通り、あれからシュート練習をしているのは知っていた。でもやはりシュートは10本中半分入ればいいくらいの精度だった。


「明日、観戦が終わったら青峰くんにシュートを教わろうと思っています…よかったら雫さんもきませんか?」


『せっかく2人が会うのに私いてもいいのかな?』


「青峰くんも、雫さんに言いたいことあると思うので、早い方がいいかと」


『そうだね、じゃあ一緒にいこうかな!でも、夜征十郎に呼ばれていて、それまでの時間になっちゃうんだけど…』


「赤司くんに?…大丈夫ですか?」


『この間会ったときも普通だったし、大丈夫だと思うけど…IHのときは、私も火に油注ぐようなこと言っちゃったしね』


それに涼太くんと噂になってしまったことも彼が怒る原因になってしまったのだろう。


「雫さんは、黄瀬くんのことどう思ってるんですか?」


テツヤくんは痛いところついてくるな。


「正直いま赤司くんは変わってしまっていて、きっと戸惑うこともあると思います。それでも雫さんは赤司くんのためにボクと誠凛に来てくれました…。黄瀬くんの好意に対して、雫さんはどう受け止めていますか?」


『涼太くんのこと、中学に一度きちんと振っているんだけれど…彼は本気で私に向き合い続けてくれるし、いまの征十郎がくれない欲しい言葉をくれる…甘えてしまっているよね…。応えられないのなら、もう一度きっぱりお断りするのが筋だとは思っているのだけれど…』





“ 赤司っちのこと好きでいていいよ、俺を受け入れてくれればそれで…それで…いつか俺を好きになってくれれば…”





私は涼太くんに言われた言葉を思い出して続きを言わなかった。
征十郎がもし戻らなかったら…?
征十郎を諦めて涼太くんと付き合うの?
そんなこと、考えれない。





いつか涼太くんを好きになる時がくる?






好きか好きじゃないかで聞かれたら、もう100%好きだよ。





『私ってずるいのかもしれない』


「…黄瀬くんは欲しい言葉をくれますよね、きっと関係を切れさせないよう予防線をうまく貼るのも彼はうまいと思います。ただ、赤司くんに黄瀬くんに揺さぶられているのを知られたら、かなりまずいことになるかと」


『…そうだよね。ありがとうテツヤくん。今はでも、たらればの話なんてしないよ。征十郎を戻す。そのためにも勝たなければいけない。誠凛を日本一にするんだ』


「そうですね、変なこと聞いてすみません。ただあと青峰君がここに加わると、どうなるのか気になってしまって」


『…どうして青峰?』


青峰くんは雫さんをずっと好きでいたはずだ。黄瀬くんがいつから彼女を好きかなんてわからないけれど、中学1年生の始めの方から2人が仲良いのも知っていたし、青峰くんのプレーに惹かれて雫さんがバスケ部に入ったのも知っている。


もしも、赤司くんがいなくて、

もし、青峰くんがバスケを好きなままだったら。


もしかしたら違う未来があったのかもしれない。
そして青峰くんは、明日雫さんに伝えるだろうか、好きだったのだと、もしくは今でも好きなのだと……。


「すみません、ボクは青峰くんに特別な想いがあるせいか、少し肩入れしてしまいましたね」


『?…明日のシュート練習楽しみにしているね、その前に観戦あるけど』


「そうですねーーーーーー。」




全ては赤司くんが変わってしまったせいで、黄瀬くんも青峰くんも動き始めているのかもしれない。
そう思うと、誰が1番可哀想で幸せなのか、結果も未来も何もわからなかった。





ボクはみんな幸せになってほしいですけど、それは難しそうですね。





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