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『第14章』桐皇戦編






「第2Qが始まったらすぐ、もう一度行かせて下さい。バニシングドライブ」


多用すればタネがバレる可能性がある。しかし、受けに回るよりいいとリコさんは判断する。



実は、このバニシングドライブは「条件」が揃わないと発動できない技だった。

まず、目の前から消える動作は、人の目が斜めの動きに弱い点とテツヤくんのの洞察力で可能にしたもの。
そしてさらにはテツヤくんの背後にボール以上に目立つ存在=火神くんが目に入ってこそ成立するものだったのだ。


そう言って出ていった青峰に、黒子が早速バニシングドライブを出す。


「話が早くて助かるぜテツ!つくづくバスケだと気が合うな!」


「僕もそう…思います!」


青峰を抜けた・・・と思った。だが


青峰は黒子の動きに対応してみせたのだ。目を瞑って。
火神くんを見なければ・・・でも・・・!


そこはやはり元光。バスケでは息がピッタリだったかつてのパートナーの呼吸を読んでみせた。


「残念だったな、テツ」


あまりの出来事に火神くんまで、青峰に抜かれてしまいそのままシュートを決められてしまった。


「勘違いすんなよ、テツ。影ってのは光あってこそだろうが…いくら足掻こうがその逆はねーんだよ。影じゃ光は倒せねぇ」


そう言って、テツヤくんの横を通り過ぎていく青峰。
これだけ頑張ったのに・・・テツヤくんの表情は恐怖を浮かべた様。


『っ!リコさん、タイムアウトお願いします!』


リコさんは慌ててタイムアウトを申請するが、既に試合は動き出している。


伊月先輩からパスを受けたテツヤくんは・・・もう、完全に冷静さを欠いていた。
まだ木吉先輩も日向先輩もマークが外れていないのに。
まるで通用する自分を見せつけたいかのように、先ほど成功したイグナイトパス廻を!


『テツヤくん!待って!』


「バカが」


なんと青峰は片手で廻を止めてみせた。


「同じ技が俺に2度通用すると思ったかよ
あんまり失望させんなよ、テツ。こんなもんが俺を倒す為に出した答えなら、この際はっきり言ってやる…そりゃ、ムダな努力だ」


そして、はたいたボールを奪いシュートを決めてしまう。
しかもかなり無理な体勢からのホームレスシュート。
さらには青峰だけではない。若松もが誠凛のボールを奪いシュートを決めてしまう。



やっとタイムアウトに。
リコさんはひとまずテツヤくんを引っ込める事に。これで完全に彼の心は折れてしまった。

はいと返事したものの。リコさんの指示は全く耳に入っていない。頭の中を占めているのは先ほどの青峰の言葉だけ。


“ムダな努力だ”


「…っちくしょう…!」


と呟きながら涙を流すテツヤくん。


『…ムダなんてあるわけないじゃない。それに、大丈夫だよ。みんながついているもの、負けたりなんかしないよ』


わたしはテツヤくんにジャージを被せながら言った。


「皆は信じてるぜ!おまえは必ず戻ってくるってな!」


火神くんはテツヤくんの頭をガシッと撫でた。


「今度はもう降りるのはなしだ…その間に俺があいつに教えてやるよ!ムダな努力なんざねーってな!」


『ね?大丈夫、今度はみんないるから…』


「…はい、そうですね…」




(もしあいつが戻ってこなかったらキツイどころじゃねえな実際…)

(あんな小せえ背中にもう何度も助けられてきたんだ…信じろだが期待するな)


「青峰に勝てるかどうか…そんなのもう関係ねえ…。今度は俺があいつを助けるんだ!」


その為には青峰に勝つとかは横に置き、点を入れる事に重点を置く火神くん。
青峰の挑発にも乗らず、木吉先輩にパスを出す。でも、逃げているわけじゃない。


「安心しろよ、逃げる気なんてサラサラ無ぇぜ」


それに対し、青峰は最も得意としているスタイルに持ち込む。


『これは…青峰の得意なチェンジオブペース…』




“ズバリ、アイツが心のどこかで黒子を頼っているからだ”


リコさんは景虎さんが言った言葉を思い出す。


“仲良しこよしはチームプレーとは言えない。実はそれが顕著に表れているのは火神”と景虎は指摘する。
ポテンシャルはキセキの世代と同等なのに1on1で抜けた事がない。
キセキの世代を倒す為にはテツヤくんと力を合わせるべきと考えているようだが、それが実は火神の実力に蓋をしていると。


“黒子が頼れるシックスマンである限り、火神は未完のままだ。だが、もしアイツの力を100%発揮できれば、キセキの世代とも十二分に渡り合える”



景虎さんの言葉を証明するかのように、一度抜かれた筈の火神くんが青峰のシュートを阻止すべく食らいつく。


青峰のシュートを叩き落としたという事態にリコさんだけでなく、テツヤくんも桃井もそれ以上に青峰が驚く。


「黒子君の完敗をきっかけに蓋が開いた・・・!」


助けられる側から助ける側になった事で、無意識に抑えられていた力が解放されようとしていた。



『…これが、火神君の本当の力なの?』



誠凛の仲間達も驚愕の表情。



「いいぜ、おまえ!やっと少しテンションが上がってきたわ。もう少し本気でやれそうだ」


そして再び火神と1on1


「せいぜい、楽しませてくれよ…火神!」


その速さは、今まで以上。
そしてそれは一見、若松さんへのパスに見えた。アリウープすべく跳ぶ若松さん。
しかし、そうではなかった。
若松さんがボールを取る一瞬早くボールを奪い背面シュートする青峰。


「久しぶりにマシな奴が出てきたんだ、邪魔すんじゃねーよ!」


そこからはひたすら火神くんとの直接対決。

「青峰は俺に任せてくれないっすか?」


あと少しでいけそうなんだと言う火神くん。


キセキの世代を有するチームと戦えば、少なからずこういう場面に遭遇する事は予想していたが、まさかそれが火神くんだったという事実に驚く。
誠凛にしても、加勢したくてもレベルが違い過ぎて出来ずにいた。



「…すごいわね…いつまで続くのかしらこの対決は」


『…いえ、この均衡はすぐに崩れます』


そしてちょうどそのとき、火神くんは青峰のフォームレスシュートを弾いてみせる。


「青峰より火神の方が上だというのか?」

「イイぜ、楽しませてやっても。そんな余裕があるならな」


「テメェ!」


だが、あの青峰が攻めあぐねる事態に。
抜こうとしても、青峰の動きに完全に追い付いていく火神くん。


「いったい、どうなっとるんや」


今吉さんですら今の状況が飲み込めない。


青峰の動きを読んでるとは思えないが、それでも出だしを見て動くのでは間に合わない青峰の動き。それを止める火神くんはまるで…


『野生の動き…ですね』



第2Qの残り時間僅か。伊月先輩は同点で終わらせる為、火神くんにボールを預ける。
火神くんはそのままフォームレスシュートを。


「ふざけんな!100年早ぇんだよっ!!」


飛んだ青峰の指先がシュートを阻止する。









2点差のままインターバルに入った両校。
青峰は仲間と控室に戻らず若松はイラつくが、今吉は心配するなと諭す。
後半が始まればすぐにわかると。


「結局、アイツに勝てる奴はおらんてな」


それに、今吉も桃井も気付いていた。青峰はやっと自分の全てを出させてくれる相手を見つけ嬉しくてしょうがない事に。


「やっと見つけた…自分の全てを出させてくれる相手」










“ねぇ大ちゃん、わたし知ってるよーーーー”



“また心の底からバスケを楽しんでできるようになったら、雫に伝えたいことあるんでしょ?”







「たぶん今ごろ青峰君は…嬉しくてしょうがないと思います」








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