『第14章』桐皇戦編
最初に登場したのは誠凛。歓声が上がる。頑張れーと応援の声援も聞こえるが、伊月先輩曰く、意味がまた違うらしい。どうやら、客席のお目当ては自分たちではなく桐皇。桐皇が登場すると、さらに歓声が大きくなる。
「スッゲ」と言いつつも誠凛の面々の表情はイイ感じにやる気が漲っていた。
「よし!いくぞ!!」
『皆初めての全国大会なのに…いい感じに集中してる』
「まったく今日に限ってやたら頼もしいんだから」
いよいよウインター・カップ…桐皇学園VS誠凛高校の試合が始まる。
「よお」
「…ちょっとはマシになったみてーだな!」
「ああ…まあな!」
“ ホントなんでだろな テツとは他のことは何も合わねーのに バスケだけは噛み合うんだよな”
“ オマエ(黒子)のバスケじゃ勝てねぇよ”
「今度はもう…絶対に負けません!」
「ああ…いいぜ!じゃあ今度こそつけようか…本当の決着を!」
そして今吉さんも誠凛のメンバーを見て、夏とは別物だと気付いたみたいだ。
「やることは全部やってきたっちゅう顔やな!」
前回ダブルスコアで負けているのは事実だ。だからこそ、舐めてくるようであれば先制点きめて流れをもらおうという算段だ。が、しかし、桐皇のディフェンスも終盤のような動きで止めにくる。
「舐める…?冗談やろ!そこまで過小評価しとらんで!むしろこれ以上ないと言うほど…締めてかかっとるで!!」
「アリウープ!?」
「今来たのか…ずいぶんゆっくりだったな!」
「すまんのぉ…先にやってもーたわ!」
青峰がアリウープで先制点を決める。
そこからついにテツヤくんの必殺を発した。
「どういうつもりだ…このフォームはイグナイトパス!?」
「舐めてんじゃねーぞ、テツ!」
「いえ…少し違います…イグナイトパス・廻!」
しかし、青峰に勝つために身につけてきたイグナイトパス廻は止めようとした青峰の手を弾いた。そのままパスを取った木吉先輩はダンクのタイミングでゴールへと飛ぶ。それを阻もうとしたのは若松さんだけれど、後出しの権利でパスに変更し、火神くんがゴールにぶち込んだ。
そう、このパスは全身のねじりをボールに与え、貫通力を高めたパスだ。
初見の青峰が取れるはずがない。
会場の入り口にみえる赤髪の彼が、テツくんのパスを見て高圧的に笑っているのが見えた。
『…成長してるんだから、私たちは…』
「ちったー楽しめるようになったじゃねーか、テツ」
「前と同じと思われてたら心外です」
嬉しそうな青峰に、火花バチバチのテツヤくん。
だが、恐ろしい事に桐皇はあれだけのパスを見せられても、動揺する事なくいつもの桐皇のバスケを続けている。そしてどんどん点数が入る桐皇側。
と、ここでまさかの火神と青峰の1on1。
入ればデカイが、もし、青峰にボールを奪われたら・・・。
「だーめだ!ムカつくけど勝てねーわ 今はまだ」
この場面で危険な賭け しかし、両者ともピクリとも動かず、結局、火神くんは伊月先輩にパスを回す。一見、これは火神くんが逃げたようにも見える。
だが、見る者が見ればそうでない事は一目瞭然だった。
2人の間で繰り広げられた数秒間の高駆け引き。僅かながら身体が動いていた両者。そこにはリアルなシュミレーションが展開されていた。その上で、現時点では火神くんが青峰に勝てないと判断した冷静なパスだったのだ。
(お互いが相手の力量を正確に捉えられる実力があってこそ出来る事だ)
実力だけでなくシチュエーションも大きく左右する試合中の1on1。
その上での火神くんの判断は、ターンオーバーからの失点を未然に防いでみせたのだ。自分にとって不都合な結果を受け入れた冷静な判断。以前の火神くんなら闇雲に突っ込んで終わりだった筈なのに・・・
「バ火神も成長してるわね…」
タイムアウトをとり、どうやって点数を取るか話し合っていたところで、日向先輩がバキバキッと首を鳴らし立ち上がる。
「とりあえず、俺が外から1本取るわ」
桐皇の中は堅いので、外から自分に目を向けさせると。
日向先輩を二年生ほど知らない一年の河原くんは、ユルく感じるが、大丈夫なのかと心配していた。小金井先輩は逆に自信があるからと教える。
「この人の3Pは要注意だ」
「いいのか?…そんなに遠くて」
日向先輩と桜井くんが睨み合う。
桜井くんは、今までの日向で判断をするが、ここで景虎さん直伝「不可侵のシュート」で3Pを決めてみせる。
「成長したのは1年だけじゃねーぞ、謝りキノコ」
さらに、土田先輩は日向先輩が首を鳴らす癖について口にする。あれは絶好調の時だけと。
『やっぱりキャプテンの得点力と、チームの引き締まり方がすごいですね』
「ここからはおそらく、シューター同士の打ち合いになるわね」
「だって、僕の方が上手いもんっ!」
「単純に、アイツウゼェ!もん!じゃねーよ!もんじゃ!!」
桜井くんの言い方でますますエンジンがかかった日向先輩のSG対決。
残り5秒で桜井くんのシュートが決まり、第1Qは桐皇リードで終わるかと思われた。
「まだです!」
だが、ここでテツヤくんはバニシングシュートで諏佐さんをかわし、ギリギリで日向先輩が1本決めて同点になったところで…
第1Qが終了した。