『第13話』温泉と開会式
いよいよ、WC当日。
そして火神くんは時差の計算間違えて開会式に遅刻する羽目になった。
「あんのバ火神がぁぁぁ!!!」
怒って燃えているリコさん。
会場といい、周りも強豪校揃いの状態にビビる降旗くんたち。
「だアホ!オレらも堂々としてりゃいい!(だよね?そうだよね?)」
『日向先輩心の声漏れてますよ?』
そして私とテツヤくんの携帯が同時になった。
「すみません、ちょっと外していいですか?」
「いやその、ちょっと呼び出しが・・・赤司君に会ってきます」
『私も同じメールが届いてました』
相手の名前に日向先輩達の表情も変わる。
テツヤくんと私をを行かせてくれるみたいだけど、降旗くんに一応付き添うように指示をするリコさん。
「黒子くん、降旗くん…雫ちゃんを頼んだわよ?」
この間のインターハイの件があってから、誠凛のみんなから赤司征十郎はなんとなくやばい奴認定をされていて、特にリコさんからはヤンデレ扱いされている。
そして私たちは待ち合わせの場所へ向かった。
『…フリくんいる方がまずい気もするけど…』
「オレ絶対怖くて役立たずだと思う…」
「………そんなことないですよ」
テツヤくんの間が余計に怖さを増した。
「なんだテツ、お守り付きかよ」
「峰ちんだって、さっちんいるじゃん」
「さつきは関係ねーだろ」
「つーか緑間っち何でハサミ何か持ってるっスか?」
「…ラッキーアイテムに決まっているだろうが馬鹿め」
「ラッキーアイテムったって…危ないから剥き出しで持つのやめて欲しいっス」
「お待たせしました」
『…久しぶりみんな』
(ちょっと待って…まさかキセキの世代全員集合…!?まじかようわこっわ〜帰りてえ)
「あっ!雫っち〜今日も可愛いっスね!」
「相変わらずだね黄瀬ちんのそれも」
「携帯うっせえよ黄瀬、赤司か?」
「これは…ファンの女の子からのメールっス!あ、応援メールなんで、本命は雫っちだから勘違いしないで欲しいっス!」
「死ね!」
「んー開かないなこれ…みどちんそのハサミ貸してくんない〜?」
「断るのだよ」
「ケチ〜ぽたちんか黒ちんもってない?」
「持ってないです」
『持ってないけど…貸して?私が開けてみてみる』
そして開けてあげたポテチをむっくんに返した。
「さすがぽたちん〜ありがとー」
(普通に話してるけど、なんか雫ちゃん絡まないと空気重っ)
「つーか、呼び出した本人がラストってどうなんスか…」
「いちいち目くじらを立てるな。あいつはそういうやつなのだよ」
「…すまない…待たせたね」
「赤司君…!」
(あれがキセキの世代のキャプテン…)
「大輝、涼太、真太郎、敦、テツヤ…そして雫。また会えて嬉しいよ…こうやって全員揃う事ができたのは実に感慨深いね…」
「…ただ場違いな人が混ざっているね。今僕が話したいのは、かつての仲間だけだ。…悪いが君は帰ってもらっていいかな?」
(いや、そうしたいのは山々なんだけど…なんだこれ、足がすくんで動かない…っ)
「降旗くん、」
「…何だつれねーな!仲間はずれにすんなよ!」
「…火神!!」
「ただいま」
『火神くん、おかえり!リコさん怒ってたよ?』
「うわ、それはおっかねーな…。とりあえずあんたが赤司か、会えてうれしーぜ!」
「真太郎…ちょっとそのハサミ借りてもいいかな?」
「…なにに使うつもりなのだよ」
「ちょっと前髪が伸びてきたから切りたくてね…その前に…火神くん…だよね?」
ハサミを受け取った征十郎がこちらに近づいてくる。私はなんとなくいやな気がした。
『火神くん!離れて!』
言葉と共に、ハサミを火神くんの顔面に突き刺そうとした征十郎。
「火神くん!」
(ちょ、うそだろ、今本気だったろなに考えてるんだよ!火神が避けなかったらっ!!)
「あっぶね!」
「へえ…よくよけたね…今の身のこなしに免じて今回だけは許すよ…。ただしこの次はない…僕が帰れと言ったら帰れ」
『私の大事なチームを傷つけようとするなんて、いくら征十郎でも許さない』
「お前の大事なチームメイトだからだよ、庇おうとするとは許しがたいな」
そう言って私の顎を掴み自分の方へ向けさせる征十郎。だがすぐ離し、今度は本当に前髪を切り始めた。
「この世は勝利がすべてだ…!勝者は全てが肯定され、敗者は全て否定される」
「僕は今まであらゆることで負けた事がないし…この先もない。全てに勝つ僕は…全て正しい。僕に逆らうヤツは親でも殺す」
そして切り終えた征十郎はハサミを緑間くんに返した。
「じゃあ行くよ…今日の所は挨拶だけだ」
「はぁ!?ふざけんなよ赤司!そんなことでわざわざ呼び出したのかよ!?」
「いや…本当は確認するつもりだったけど皆の顔を見て必要ないと思った。全員あの時の誓いは忘れてないようだからな…。ならばいい…次は戦う時に会おう」
『火神くん、頬から血が…』
そして火神くんに触れようとした私の手をそれを許さないかのように征十郎が掴んだ。
「雫、久しぶりに話そうか」
「ダメだ、この間お前こいつを殴っただろ!?だからフリもついてきたんだ。2人きりなんてさせるわけないだろ!?」
「は…?なにそれ、どういうことっスか?」
他のキセキの世代も、まさか赤司が雫に手をあげるなんて思っていないようで、目を丸く驚いていた。
「言ったはずだ、僕に逆らう奴は殺すと…お前らの許しなどなくても、僕と雫が話すのは自由だ」
そして征十郎は私の手を引っ張った。
これ以上火神くんが止めに入ると…さっきのハサミのようなことが起こってしまうかもしれない。征十郎は冗談を言う人ではないからだ。
『…っ、ごめんみんな、先に戻ってて』
「雫(さん)(ちゃん)!」
「は…え、赤司っちが手をあげたなんて、嘘っスよね…?」
「だったらなんだ、涼太といえど邪魔をするなら許しはしない」
『…っ!いいから、もう行こう』
今の止めに入るみんなの前にいたらどんどん機嫌が悪くなって誰か傷つけてしまうかもしれない。早く行こうと征十郎を促してそこから足早に去った。