『第13話』温泉と開会式
「このまま始めるわよ!合宿!!」
そう言って宿のすぐ近くの体育館へきた私たち。中に入るとリコさんのお父さん…景虎さんがいた。
「とりあえずお前ら…シャツを脱げ!!」
体をみた景虎さんは、夏からのリコさんのメニューをしっかりやってきたなと把握していた。
そして景虎さんは桐皇の試合のビデオをみて、個々の能力が高い。そして…
「俺に言わせりゃあっちの方がよっぽどチームプレイできてるね!」
ここの能力があって初めてチームプレーができるという景虎さん。
「WCまでに全員自分だけの武器を身につけてもらう!」
「それはいいとして…あの」
「そういえば火神は…!?」
『火神くんは朝にアメリカへ発ちました』
「へーそうなんだぁ…て、アメリカ!?」
「アメリカ!?火神が!?」
「いつの間に…」
「何でもバスケを教えてくれた師匠がいるんだって」
1ヶ月だけの景虎さんの特訓。
さすがにこの短期間では1年生は無理だが、既に意識を持って今まで臨んでいた2年生たちはそれなりのものを会得出来そうだ。
『土日はサルトレク、平日はここのスキルアップ…ってところですか?』
「そうだ、さすが雫ちゃぁぁん、リコたんといいさすがだねええぇ」
景虎さんはリコさん大好きだけど、私のことも娘のように扱ってくれる、優しいお義父さんみたいだ。
「テツヤくんはあとは自分次第か…」
その頃洛山ではーーーーーーーーーーーー。
赤司はランニングマシンでストイックに追い込んでいた。
走り終わった赤司にタオルを投げ渡す実渕。
「はい、征ちゃん」
「ありがとう」
「…すっげーな赤司、ただでさえ天才なのにあそこまでストイックにされちゃあ…あれが勝利への飢えってやつか…」
「いえそんな生温いものじゃないわよ」
「え?」
「勝つためにどうこうとかそういう話じゃないのよ。勝利する事は息をしてる事もおんなじだって。征ちゃんにとって勝利は求めるものじゃない。生きていく上であって当然。基礎代謝と同じ」
そしてそれは藍澤雫も同じ。
求めるものじゃなくて、あって当然のものだと彼は言っていた。
あの一件から電話もメールもなくなった赤司は少しだけ落ち込んでいた。
頬を叩いてしまった後悔が少しだけあった。
どうしても顔を見ると愛おしすぎて行動が度を超えてしまうのだ。
会えない反響でそれは増大していく。
〜〜♪〜〜新着メール一件
メールが届いてみてみると、そこには雫からだった。
“征十郎、16歳の誕生日おめでとう”
「あれ?赤司なんか機嫌いい??」
「小太郎…そうだね、気分がとてもいいよ」
誕生日なんて覚えていなかったし、別にたいした思い入れもないが、彼女からのおめでとうはひどく心を打った。
去年この日に雫を僕のものにした。
どうやらもう1人の僕とは責任が取れるまでとか、待てないから彼女の16歳の誕生日ということにしていたらしいが…
そんなの関係ないじゃないか。
僕は一生彼女を手放す気なんてないんだ。
1年早まったって変わらない。
それは雫も同じはず。なのに何故あんなに泣きながら拒否の言葉を吐いていたのか……それは僕に心を許していないからだ。
もうもう1人の僕なんかいないのに。
「WCが楽しみだ」
〜〜♪〜〜新着メール1件
「ん?なに雫、その顔は赤司くん?」
『えっ!?なによ泪、その顔ってどんな顔…?』
「ん?なんともいえない顔」
『…なんか失礼だな』
“ありがとう、3日後会えるのを楽しみにしているよ”