『第12章』WC予選リーグ







そして第2Qも終わり、5点リードで折り返した誠凛。ハーフタイムに入ったところで、テツヤくんは花宮さんに向き合った。


「待って下さい!なんでそんな卑怯なやり方で戦うんですか?」


「そんなわけないだろう!」


花宮さんは悲しそうに俺だってこんなことしたくない…っと嘆いているようにみえた…


「そんなわけねーだろ!バーカ!!」


「!?」


「人の不幸は蜜の味って言うだろ」


バスケに青春賭けてるような奴らが歯ぎしりする様を見るのが好き。そして、歯ぎしりをするのはこれからだと言い残し、控室へと歩いていく霧崎第一。


それを見送るテツヤくんの身体が震える。



「くっそぉー!アイツら」


控室で一番暴れていたのは火神くんだった。


一方、大丈夫だと答える木吉先輩の身体は満身創痍。しかし、第2Qが始まる前の木吉先輩の言葉を思い出し止められない。
怒りをあらわにする火神くんに対し、口調は冷静そうだったテツヤくんだったが、その表情は・・。

とても、怒っていた。


『冷やすアイスノン、すぐ医務室から追加で持ってきます!』


「ありがとう雫ちゃん、頼んだわ!」


ハーフタイムは10分だ、そして後半もきっと打撲の怪我は止まらなそう。
木吉先輩を下げたいところだが、それが出来ない今私にはこんなサポートしかできない。
アイスノンを抱えて控室に戻ろうとしたところで、後ろから声をかけられた。


「言われただろう?自分の心配した方がいいって」


『!ん゛っ……ーーーーーーー』


後ろを振り返ると、古橋さんがいて、気づいた時にはもう意識がなくなっていた。












「よくわかんないけど、アンタこの試合負けんぞ」

トイレで青峰と花宮が鉢合わせした。


「アンタ、テツを怒らせた そんだけだ」


「ふはっ!オレがこんな切り札しか持ってないとでも思ってんのか?お楽しみはこれからだ…」









「雫ちゃん、遅いわね…」


「迷ってるのか?」


「とりあえずベンチにいって、様子見てみましょう、あまりに遅かったら、降旗くん探しに行ってくれる?」





そして第3Qが始まる時間になったので、ベンチにまた戻ってきた。
ただ、一つの異変が起きた。


「これ、おたくのマネージャーから…せめてこれだけでもって顔で気絶したから、持ってきてあげたよ」


死んだような目をした古橋から受け取ったのは、アイスノンだった。
そのセリフを聞いて誠凛チームはより殺気だつ。


「っテメェ!!!」


「マネージャーをどうした!?」


「雑魚が探しにいっても無駄だぜ?怪我人が増えるだけだ」


「花宮ぁぁぁ!!」


「…ダメです。激情し、我を失ったプレーをすれば、彼らの思うツボです…、彼女のためを思うのであれば、必ずWCの切符を届けることです…っ!!」


「黒子…」


そう言った黒子の顔も、これ以上ないほどキレていた。


「ラスト20分、せいぜい楽しませてくれよ?」


初っぱなバニシングドライブで店を取得したが、黒子は温存。代わりに小金井が出た。
するとちょうどイイ!と花宮はここで瀬戸に出るよう指示を出す。



「…黒子くん、雫ちゃんのことだけれど…どう思う?」


「僕も探しに行きたいのは山々です…が、あの言い方だと暴力で解決しようとする可能性も見えました。そうなると降旗くんたちがいっても、僕が今行ってもどちらも無事である保証はありません」


そう、彼らは怪我人が増えると言ったのだ。
安易に一年生や二年の控えにむやみやたら探させるのも得策ではない…!



「でも、大丈夫です。こういう時頼るべくは彼女のヒーローたちですから」


黒子は信じるように観客席に目を向けた。


「…もしかして黒子くん…」


「なによりも彼女の願いを叶えるのが先です」






「悪いが、おまえ達が点を取る事はもう無いよ
おまえ達はクモの巣にはまったんだよ」


古橋は日向にそう言い放つ。
あとはじわじわとなぶり殺されるだけだ と。
瀬戸が入ったことにより、なぜか花宮のスティールが増え、点を取られるばかりになった。


その瀬戸は花宮とリンクしてコースを限定させるサポート役をやっていた。
花宮1人では読み切れないコースも、瀬戸のおかげで100%スティール出来るのだ。


伊月までもが大きな声を上げる中、危機感を覚える木吉。
それにしても、普段の自分たちなら最初の火神のダンクだけという筈はなかった。


誠凛のもう1つの問題は、外からの攻撃・・・日向のシュートがまだ1本も決まっていない事だった。


「突破口が出来るかもしれません」


突然、黒子くんはそう言った。











桐皇と海常の観客席では、マネージャーの雫が帰ってきていないことにみんなが気づいていた。


「どうしたんっスかね?ラフプレーの治療…のわりには7番は出ているし…」


「誠凛がさらに殺気だっている。何かあったか?」


「……笠松先輩、オレ、心配なんで様子見てきてもいいですか?」









「なるほど、切り札ってのはこのクモの巣のことなのか、雫のことか…まぁ両方か?」


「どうした青峰?マネージャーおらんのが霧崎第一の作戦っちゅうんか?」


「しらねー、だが…」


“ そうしたら青峰が助けに来てね?ヒーローでしょ?”


「ちょ、どこいくの青峰くん!?」


「あ?仕方ねぇからな…気が向いたってことだ」




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