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『第12章』WC予選リーグ







明日は秀徳戦、控室に戻るときに、私は気になったことをみんなに伝えた。



『隣の秀徳と霧崎第一戦、レギュラーは誰も出ていませんでした。それに、こちらの試合を無冠の5将の花宮さんはずっと分析しているかのように見ていました』



その言葉でみんな…主に二年生はすこし考えるような素振りを見せて、リコさんが答えた。



「おそらく彼らは秀徳戦を捨てて、私たちに勝つために挑んでくるはず。そして彼らはどんな手でくるかもわからないわ!」


「つまり、秀徳に勝った方が圧倒的に優位になるのは変わらない、明日も全力でいくわよ!」


「…雫さん、ずいぶん気になっていますね、霧崎第一のこと」


『うん、なんか嫌なかんじがして…』








そしてどうやら木吉先輩と花宮さんが話すということで、先に行くことになった。



「木吉を最もバスケットに誠実な男と呼ぶなら、奴は最もバスケットに不誠実な男だ」


そう日向先輩は言い切った。










そして木吉先輩は帰る私たちに合流した。
でもすこし様子がおかしいみたい、考えるというか、懸念しているような…


「鉄平?どうかしたの?」


「いや…、雫ちゃんさぁ」


『…はい、なんでしょうか』






“ 怪我、早く治してよ。心配してるんだからさ”


“それと、キミのところのマネージャー…元帝光中の…あの子はどこにいてもチームの支柱になっているようだね”


“…どういうことだ花宮”


“フハッ、そういう存在ほど、脆く壊れやすいってもんなんだよ…せいぜい大事に抱えておくんだな……できるもんならな”







「…霧崎第一のやつらの近くには、行かないようにしたほうがいいと思う」


『?はい、無闇に近寄らないようにってことですよね?わかりました』


















そして次の日、秀徳との試合の日だ。


緑間くんの雰囲気が、確実に違う。
飢えた獣のような、凄まじく強い威圧感を放っている。
こんな彼は、中学でもみたことない。


「真ちゃんどったの?もしかしてビビって…!」


「だまれ、気が立っている、冗談に付き合っている余裕などないのだよ」


(飢えた獣はやべえっていうけど、マジだな、これは…)




「敗北の恐怖を知った人間は、勝利に飢えた獣だ」


「負けるのなんざ、一度でたくさんだ。腹ペコなのは・・・」


「こっちも同じです」


『頑張って、みんな…勝ってきてください』


「「「おう!!!」」」




「緑間くんは全面的におまかせしてもいいですか」


「言われなくてももちろんそのつもりだ」




試合開始後、早々に火花を散らす双方。
和成のスティールのあと、テツヤくんもスティール返し、緑間くんのシュートも火神くんが抑える。


そして何より…


『火神くんのジャンプ力、試合で見るとやっぱり高くなってますね、リコさん』


「彼は強い相手を前にすると、さらに高くなるし、今回はスタミナもばっちりよ!…ただ、緑間くんのシュート本数の限界が気になるところね」



そして火神くんにブロックされるのと承知で、緑間くんもシュートを打ち続ける。


「新技などないのだよ」


「付け焼刃の武器を身に付ける程、俺のシュートは安くない」


「つまり根比べってことかよ、上等だぜ!」


(この緑間くんは、なにか変です)


『…テツヤくんも察している。緑間くんの様子が何かおかしい』



そして第2Qに突入、和成のパス回しも手強くて苦戦する誠凛。テツヤくんのミスディレクションも前に戦ったことある秀徳相手にはもう切れかかっている。

「どうした?もうへばったか…だとしたら拍子抜けなのだよ」


「んな訳ねーだろ!!」


「テメーこそもっとガンガンこいよ!」


「まだ第二クォーターだぜ?どうした黒子!」





そして変化は現れた。
緑間くんはフェイクを織り混ぜてきたのだ。


「フェイクをまぜてきた…!まずいわね」


「どっちだ…フェイクか!シュートか!くそ!考えてる暇はねえ!」


「なら…もう一度飛ぶまでだ!」


このままでは、火神くんの足がもたない。


そして木吉先輩が火神くんのフォローに入ったところで、緑間くんのその変な違和感がやっとわかった。


和成はフォローに入り、緑間くんをアシスト。そう、緑間くんが火神くんと木吉先輩を引き付けて和成にパスをしたのだ。



「俺が引き付けてパスを出します…!」


(緑間くんがパスを…今までのはこのための布石!?)


「まじかよ…!あの緑間が」


「シャレにならんな…自分のための様に見せて本当はチームのために打ってたのか」


「黒子と雫の感じていた違和感は…これか!」


「緑間が一人で戦う事をやめ真にチームとして一つになった秀徳」


「手強いなんてもんじゃねえぞ…!」


「楽しんでこーぜ!」


「こういう時こそ頼りになるのが…木吉って男よ!」


「とりあえず黒子は引っ込めるか!」


木吉先輩の言葉にへこむテツヤくん、まぁミスディレクションも切れているし、仕方ない。


信じてますから…という言葉を残してひとまず退場した。小金井先輩はテツヤくんを慰めるけれど、


「心配はしてません…信じてますから」


テツヤくんは言い切った。


『……新しいドライブは後半に持っていきたいところだね』


「はい、完成しました。そしてそのために今は温存させてもらいます」



「とりあえず緑間封じは必須だ。このまま俺と火神でダブルチームをかける!」


「そんな!俺一人でもいけるぜ!…です!」


『火神くん、ここで終わりじゃないから、足も心配だし…木吉先輩とみんなを信じましょう』


「雫…そうだな、今の緑間にはそうするしかねーか」


「止められないなら…それだけ取るしかねーだろ!!」


「ハイペースの点取り合戦がうちの真骨頂なのよ!」




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