『第11章』真実とストバス
そしてむっくんは私の頭に大きい手をかざそうとした。
威圧的な雰囲気に、周りのみんなは何かされるのではとあわあわしていた。
「よしよしぽたちん、黒ちんも相変わらずちっさいねー」
彼は私の頭を撫でたあと、テツヤくんにもガシガシ撫でていた。
「やめてください」
『むっくん背伸びたねぇ』
「うん、2m超えたよ〜。あれぇ…黒ちん怒った?ごめんてば」
「てゆうかぽたちんってもしかして雫ちゃんのこと?」
(こいつ確かインターハイの時すれ違った…こいつがキセキの世代のセンター!)
「陽泉って確かインターハイ出場校だったよな?じゃあアイツも出てたのか?」
「んーん…俺出てねーよ…てゆか赤ちんが言ったからそうしただけだし」
「…赤ちんて」
「赤司君です…キセキの世代のキャプテンだった人です」
「てゆーかホント驚きだよねえ、黒ちんとぽたちんが一緒にいるの、そこは赤ちんの場所でしょ?」
『…っ、それはーーーーーーー』
「アツシ、そういえば何か言いにきたのかい?」
わたしの言葉は氷室さんの言葉で打ち消された。ありがたい遮りで助かったところだ。
どうやら陽泉高校は草試合禁止とのこと。
「ちょっと待てよ!いきなり乱入してそれはねぇだろ!ちょっと混ざってけよ!」
「その眉毛どーなってんの…なんで2本?」
むっくんは相変わらずマイペースに話して、挙げ句の果てに火神くんの眉毛を抜いてしまった。
「てゆーか、なんかゆるい…?」
「紫原くんは基本バスケ以外のことに関してはゆるいです。でも、バスケになると人が変わったようになります」
『お菓子大好きだしねぇ』
どうやら火神くんは閃いた!とばかりにむっくんを挑発し始めた。
「なーんだ!がっかりだまったく!そんなビビリとは知らなかったぜ!逃げるとかダッセえ!」
(((いくらなんでもそんな挑発には乗らないだろ〜)))
「はぁ?逃げてねーし!」
『いや、むっくんは乗っちゃうんだな』
そして試合再スタート。
どうやらセンター同士、むっくんと木吉先輩は知り合いみたいだ。
木吉先輩はバスケが大好きで諦めない精神だし、むっくんとは相容れないだろうな…と思う。
無冠の5将ということもそうだし、むっくんはイラついた相手は覚えてるタチだから、プレイを見て思い出したみたいだ。
「…思い出したし…木吉鉄平…!」
そして氷室さんも、やはり一つ一つの動作が滑らかで洗練されている。シュートがスローモーションに見えるくらいエレガントだ。
「かまえてから打つまであまりにも滑らか過ぎてスローモーションに見えた!」
「とてつもなく修練の凝縮されたシュートだ…!」
しかし、試合はここから本番というところで、大雨になってしまい試合は中止になりそうだ。
「お土産を置いていくよ…タイガの知らない技だ」
そう言って氷室さんは普通のジャンプシュートを打ち、火神くんもベストタイミングでブロックしようと跳んだ。
「今何が起きた…!?」
「ただのジャンプシュートに完璧にブロックのタイミングだったはずが…!」
「ブロックを擦り抜けた!?」
氷室さんの置き土産は、火神くんの手をすり抜けるシュートだった。
そして帰り際にテツヤくんはむっくんに声をかけていた。
「紫原君…今でもバスケはつまらないですか?」
「その話…それ以上するならヒネリ潰すよ黒ちんでも……。勝負に勝つのは好きだし…向いてるからやってるだけじゃだめなの?…反論あるなら聞くよ…ウインターカップで」
『…むっくん、またWCで』
「なんで赤ちんと行かなかったのか、うすうす想像はしてるけどさぁ、きっと赤ちんが負けることはないと思うよ、ぽたちん…残念だけどさ」
『それでも、挑むことはできるからさ』
「ま、がんばってね〜」
「シズク、またWCで会おう」
そしてむっくんは新作のお菓子を私に渡して、氷室さん達と帰っていった。
「監督が一旦学校こいってさ!」
ということでみんなで学校に向かうことに。
帰り道、火神くんがむっくんとテツヤくんについて尋ねていた。
「お前ら仲悪かったのか?なんかギスギスしてたっつーか…」
「いえ、人としてはむしろ好きです…ただ選手としてはお互い気が合いませんでした。なぜなら彼はバスケ自体が好きではありません」
『むっくんはバスケが好きじゃなくても、やれば恵まれた才能と体格で出来て勝ててしまう。テツヤくんみたいに好きで努力する人間を、少し小馬鹿にする節があるのよね』
「けどやっぱり好きだからがんばれるし勝った時心の底から嬉しいんだと思います…。だから僕はバスケが好きだし…皆バスケが好きな誠凛が好きです」
そして体育館に戻ると、そこにははちきれそうなクマさんのTシャツを着たさつきがいた。
まさかの来訪者にびっくりしていたが…。
「テツ君ー!!」
「桃井さん!?」
『さつき?なんでここに…?』
「「「とりあえず黒子死ねばいい!」」」
そしてなぜか雨の中走りに行っていたのか、2年生メンバーがびしょ濡れで帰ってきた。
『あれ、今日お休みじゃありませんでした?』
「…いろいろあってだな…まぁ聞くな…」
日向先輩はしんどそうな顔をして返答した。
「どうしよう、わたしっ、わたし…」
“青峰くんに嫌われちゃったかもしれない…っ”