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『第11章』真実とストバス








『すみません、ただいま戻りました!』


おそらく1時間ずれくらいだろうか。誠凛に戻った私はみんなに驚愕の顔をされ追及された。


「ちょ、雫ちゃん!?どうしたのそれ!?」


3メンしていたみたいだけど、リコさんの声でみんなが一斉に集まる。
流石にあの鬱血や噛み跡が見える状態で電車には乗れなかったので、正方形のガーゼを4枚、左右の肩と首にはり、赤く腫れてしまった頬を隠すように、冷えピタをカットして貼ってある。



『大袈裟に見えますけど、本当にたいした怪我ではないので大丈夫です……っテツヤくん!』


テツヤくんは影の薄さを利用してか、私の背後に近づきガーゼを一枚剥がした。
そこにはつけられた噛み跡と鬱血の後、少し血が滲んだ痕が残っていた。



「…赤司くんですね、頬は殴られたんですか?」

『平手打ちだから少し腫れただけだよ』


「おい!やっぱり危険だったんじゃねーか!どういうことだよ」


「僕は、雫さんが彼と電話している話を聞いていました。その内容からは、こんな暴挙にでるとは思わなかったので…油断してしまいました……すみません守れなくて」


そういいテツヤくんはガーゼを貼りなおしてくれた。


「え…これってDVってやつ…?」


「…大丈夫なのか?怪我もだけど、精神的に…」


『みなさんのおかげで、怯まないで立ち向かう勇気がもらえました。前の私ならここには来れず、家に引きこもってましたけど…、1秒でもここに早くきて、練習したいと思ったんですっ』


「「「雫(ちゃん)…」」」


「次から会う可能性がある時は、必ず誰かと行動するようにしないとだわ…、まったく、ヤンデレにも程があるでしょうに…」


「ヤンデレ…ってなんすか?」


「病んでいる愛みたいなものです…昔の彼では考えられませんね」


「んじゃ、さっさと目を覚ましてもらわねーとなっ!」


そうだな!と、やる気になってみんな練習に戻っていった。
火神くんもそれを誇張するようにテツヤくんのパスでダンクを決める。





『リコさんも心配かけてすみません…』


「早くそんな傷跡消えてほしいわね、綺麗な雫ちゃんの肌には似合わなすぎるわ…」


『……あと、折いってお願いがあるのですが…』





“9月の音楽祭に出たいので、その日だけお休みください”



“そろそろ家とも向き合おうと思いまして…”



















「…なんでこのタイミングで音楽祭に出ようとする?」


『2年前にも出たじゃない。別におかしくないでしょ?』


「隔年で出るって定着させる気か?おいおい」



帰って泪に来月の音楽祭…中学二年生のときに復活した1日のあのコンクールに出ることを話した。



『今出てはいけない理由でもあるの?』


「!…ないけど。むしろ出てほしいと思ってたくらいだ。ただ赤司くんのことを中途半端にしている今、完全じゃないのに出るのは珍しいと思っただけだ」


『残念だけど、私の心はもう成長し続けている。悲しみでへし折られても、もうすぐに元に戻る力をみんなにもらった。“泪たち”が思っているより、私はもう大丈夫だよ』


「……雫、どこまで気付いている?」





私はずっと仕舞い込んでいた。
気づかないフリを…。





『泪とお父さんは、何か私に隠しているよね?私が感情を整理できるようになるまで、隠すつもりだった?そしてなにか知ったらまずい事でも起こるの?』




『お母さんの火事を起こした放火魔はどうなったの?お父さんはどうして家に帰らないの?帰れない理由があるの?泪はどうして音楽から離れたの?どうしてまた音大で始めたの?』




疑問に思っていても、聞いても教えてくれないと思った。
きっと、隠していることにすべてつながっていると。
でももう私は大丈夫。向き合うと決めたから。




「…雫、まだ早い。今のこのWC前にフクザツにしたくない。大事に至りたくないんだよ。前の赤司くんもそばにいない今、乗り換えるのは難しいんだ」



『征十郎と向き合うためにも、私は藍澤家の謎に向き合わないといけないでしょ?蚊帳の外でいる何も知らない私でいたくないの、泪…』



「音楽祭には今年はまだ出てはいけないよ…」



『泪はまるで、私をコントロールしているよね?2年前、あの時は出ることを許したけど、そのあとも私に催促することもなかった。ただ探るだけ。そして今年も征十郎との件が終わるまで、音楽から離れたままだと思われている』



「雫……なぜそこまで強くなった?彼がいない今、なにが強くしたのか………聞くまでもないか。大事な仲間で築き上げたものだよな」




私は深くゆっくり頷いた。





「仕方ない。俺も今の雫を押し留めることはできそうにないしな…。答えられる質問から順に話すとしようか…。放火魔は捕まっていないよ、ただ犯人の目星はついているけど、証拠不十分で捕まえることができないんだ」




『…前の私なら、今この場で泪を脅して、その目星に復讐しにここを出たかもしれないね』




「…そしてその犯人を俺たちの父親が見張っている。もう被害を出さないために…。そして雫、ここからの話の前に、一つ言わないといけないことがある」








「雫の記憶は一部変換され、消去されているところがある」







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