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『第10章』IH会場にて







「すげぇ試合だったな、真ちゃん」

「!なぜわかったのだよ」

「来ないわけ無いと思ってさ。つーか、それで変装した気になるの、いい加減止めた方がいいと思うけど?」

「大きなお世話なのだよ」

「やっぱ化けモンだな、黄瀬も青峰も」

「わかりきったことを言うな。それに化け物は、お前の目の前にもいるのだよ」

「…冬が楽しみだな」
















「あ~らら? なんか前ここ通ったようなぁ…。どこだ? ここ…」


「でけぇな。ジャージ着てるってことは、選手か? 2mはあるか」


「てゆ~か、やだやだ、バスケとか。疲れるし。て、あらら~? この新味はいいぞぉ」


「どうした?」


「いえ、ちょっと、挨拶し損ねただけです」

















さて、全員集合して、あとは帰るだけ、な誠凛メンバー。

「よし、全員そろってるか?」

「あの…」

「はい、黒子くんですね!」

「いや、それが…」

消えたのは、黒子だけじゃなく、火神もでした。ふたりがいたのは、バスケットコート。黒子がシュートを外した後ろから現れた火神。


「相変わらず、パス以外はからきしだな」

「どうしてここだとわかったんです」

「あんな試合見せられて、頭に血が上ったんじゃねぇかと思ってよ」

「つい、熱くなりました」

「お前で熱くなるなら、俺は沸騰しそうだぜ」

「彼らのプレーには、人をそうさせる力があるんです。昔から」

「なぁ、キセキの世代の残りの連中って、どんなヤツらなんだ」

「僕が知っているのは、あくまでも中学時代の彼らでしかありません。黄瀬くんや、緑間くんや、青峰くんが格段の進歩を遂げたように、残りのふたりも成長しているはずです。紫原くんも、赤司くんも」

「紫原、赤司…」

「そして、雫さんの変えたい相手は、赤司くんです。今現在の彼らがどうなっているのか、僕にも想像がつきません」



そして。
走り出して、黒子にボールを要求する火神。
シュートを決めた後は、決意の言葉です。


「ひとり残らず、ぶっ倒す。見せてやろうぜ、俺たちの、いや、俺とおまえのバスケをよ」

「…はい!」

「冬は、戦争だ…!!」

























私はみんなが帰ったあと、海常の控え室に向かおうとしたけど、その前に涼太くんに会うことができた。



「雫っち!?どうしてここに…って、えぇ!?」



私は涙がまた溢れ出てきて、彼に抱きついてしまった。
多分私から彼にそんなことをしたのは、出会ってから初めてだったと思う。
それほどまでに、なんとも言えない感情が私を取り巻いていたのだ。



「ちょ、えぇ!?待ってどうしたの雫っちからなんて…あ、オレもしかして夢見てる…?」


『…お疲れ様、試合、かっこよかったよ、涼太くん…』


その言葉を聞くと、彼は人通りが多いコンコースにいるより、ゆっくり話そうと、人気がいないところに連れて行ってくれた。












「えぇーと、オレも負けておいてなんだけど、すごい今嬉しい状態なんスけど…どうしたの雫っち…?」


私は思っている気持ちを彼に全て話した。


『私は、涼太くんが青峰のコピーができたことも嬉しかった。チームと支え合っていたのが嬉しかった。最後笠松さんを頼ってくれたのも嬉しかった。だから、そのせいで負けたなんて思って欲しくないの…』


「…そんなことっスか、大丈夫っス、負けたのはそのせいなんて思ってない。オレの力不足ってことだから…次は勝つっスよ」


『…うん、私試合見て涙が出たの、2人があまりに楽しそうにバスケをしていたから…ありがとう』



まさか、ありがとうなんて負けたのに言われると思ってなかった。
むしろ、オレが青峰っちに勝って、赤司っちに勝ちたかったのに…




「ごめんね雫っち…赤司っちには、届かなかったっス…他力本願?ってやつに、なっちゃったっス」


『…気持ちだけで嬉しいの…っ、ありがとう涼太くん…』



オレと青峰っちの試合で泣いてくれて、ありがとうって言ってくれて、オレに想いをぶつけてくれる雫っち……。




ちょっとは、自惚れてもいいんスかね…?





「雫っち………キスしたい……」



『ん…!?…っふ……っ』




オレはこの間から、抑えられなくなってた。
ここはダメだ、さすがにダメだ、嫌われてしまう…そう思ってた。
けど、もう我慢はやめた。



そばにいない赤司っちが悪い。
オレはちゃんと卒業式にも言ったはずだ。
手を出さないと、“約束はできない”って。



『りょ…うたく…』


「もう我慢できないっス、今の赤司っちなんか、全然雫っちの支えになってないじゃないスか…」


『…わたし最近、この間涼太くんが言ってくれた言葉を、思い出していたの』


「…ごめん、嫌いになったっスか?…赤司っちと、別れたわけじゃないのに…」


『私はもう、涼太くんを拒否できない…嫌いになんてなれないよ…。でも、征十郎のことが好きなのは変わらないの…』


「赤司っちのこと好きでいていいよ、俺を受け入れてくれればそれで…それで…いつか俺を好きになってくれれば…」





“赤司っちが戻らなくて今のままなら、俺が守ってあげるっスよ…”







『でも、征十郎は許さないかもしれないっ、私は彼のものだから…このキスだって…すごく怒るかも』


「…っ、雫っちはモノじゃない。そう言っている内は、赤司っちに任せられないっス」


『!…ありがとう、私もずっと引っかかっていたの、私はモノなの?って…前の、征十郎はそんなこと言わなかった…っ』






赤司っちは変わってしまった日から雫っちを“所有化”するようになった。
人権なんかない。
ただ従わせていたようにみえた。
赤司っちが大切にしないなら、俺は歯向かうっスよ…。俺だって初めて真剣に好きになったんだ。そう易々と今の彼には渡せない。






「…キスしたこと謝まらないっスよ?…むしろこれからしたいときするから、俺のことが嫌いなら避けて?」


『っ…ずるい、そんな言い方…拒否できないじゃない…』








そうして涼太くんはまた私に口付けた。
わたしから腕を回すことはなかったけど、せめてもの罪意識で、ネックレスを握っていた。









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