『第9章』夏合宿編
朝、朝食を作り終えて、みんなを呼びにきた。
リコさんに料理をさせないよう言われたけど、朝手伝いに来てくれたので、今はサラダ用のトマトを切ってもらっている。…それくらい大丈夫だろう。と。
「しっかしボロイなぁ、ほんとにここに泊るのかよ。何か出そうな感じ~」
「うるさいのだよ、高尾」
『え、和成?と、緑間くん?あ、おはようテツヤくん、火神くん、朝ご飯できたよ?』
「どうも、お久しぶりです」
「なぜここにいるのだよ!」
「そら、こっちのセリフだよ!」
「秀徳は昔から、ここで一軍の調整するのが伝統なんだと、つーかなに、しーちゃんが作ってんの?なに?ずるくね!?てかエプロン可愛いなおい!」
「それがお前らはバカンスとはいい御身分なのだよ。その日焼けは何だ!」
「バカンスじゃ無ぇよ!」
「え?」
そこへリコさんがトマトで赤塗れで包丁持ちながら登場した、待って、私もこわい…!
「お前の学校は何なのだよ、黒子!」
「誠凛高校です」
「そういうことでは無いのだよ!」
『え、てことは泪もいるのか』
「あ、泪くんいるぜ?呼んでくるわ!!つーか兄妹なのに合宿場所知らなかったとかウケるわ!」
そして和成は泪を呼びに行った。
「え、お兄さんって…藍澤…泪…元帝光中キャプテンで、秀徳キャプテンの!?」
『あ、そうです、なんか秀徳の合宿に臨時で参加するって言ってて…』
「それ、練習試合とか組めないかしら!?」
…リコさん目がすごい輝いている。
「おーーい雫〜!まさか会うなんて奇遇じゃん!運命なのだよじゃん!」
「ぷ、真ちゃんの真似してるし泪くん笑笑」
「や、やめてください」
『泪、相談があるんだけど、うちと合同練習試合できるか、監督とキャプテンに聞いてくれないかな?』
「あ、じゃあ雫がうちの分も夕飯作ってよ、そしたら全員OKすると思うし、世の中ギブアンドテイクだからな!ね!和くん?真ちゃん?」
「うわっそれちょーいいっ!!」
「…藍澤の料理か…懐かしいのだよ」
そして、結局私が夕飯両方分つくることになり、体育館練習は予定変更で、秀徳と合同になった。
だけど、リコさん火神くんに特別に、みんなとの練習には参加させず、みんなの分の飲み物を買って来させるようだ。
「砂浜走って500m先のコンビニまでGo!重いだろうから、一本ずつでいいわよ」
『リコさんって綺麗な顔してえげつないですよね』
「雫ちゃんに褒められると嬉しいわぁ」
…褒めてないですよ、怖いですよ…
試合形式の練習中。
誠凛メンバは、秀徳の動きに改めて感服していた。そんな中、ボールを持ったテツヤくんは、パスを出さずに自分で何かをしようと模索してようだ。
そのテツヤくんの姿に驚く和成と緑間くん。
「ふざけたプレーをするようになったな」
「ふざけてません。ただ、僕自身がもっと強くなりたいんです」
「笑わせるな。青峰に負けて何を思ったか知らんが、黒子、お前の力などたかが知れているのだよ。それを自覚したバスケをしていたはずだが、それでももっと頑張れば何とかなると思ったか?ひとりで戦えない男が、ひとりで強くなろうなど、できるものか」
そして、火神くんについて気にしてる大坪さん。外に走りに出ているが、何か隠しているのだろうか、って。
「違うな。火神の武器は飛ぶたびに増すジャンプ力だ。しかも試合中に。あれは気合いや根性と言った精神論ではなく、ちゃんとタネがある。それに気づいての仕込だろう。大した監督だよ。それに、木吉鉄平。恐ろしいヤツが戻ってきたな」
秀徳の中谷監督はリコさんのことを認めているようだ。木吉先輩のこともよくわかっていそう、確か…無冠の五将だったよな…
夜、わたしは秀徳さんの分も夜ご飯を準備した。ポークソテーと、野菜炒めと汁物など、栄養が偏らなくて、たくさん食べれるようなものを作った。
夜ご飯も食べ終わり、お風呂上がりにみんなで集まってストレッチしたり休んでいたところで、兄の泪の話題になった。
「雫ちゃんのお兄さん美形だよね…」
「バスケも強くて音楽のセンスもあって、顔もいいとかやばいよな」
「ほんと、臨時でもいいからコーチ頼みたいくらいよ…」
『そうですか?見慣れてしまってあまりわからないですけど』
そこへ1年の3人組がきた、今日は基礎トレと筋力アップだったはずだ。
確か泪が暇だからって見に行ってたかな…
「お兄さん腹筋綺麗すぎて見惚れちまった!!」
「すごい的確にアドバイスくれるし、分かりやすくてまじ師匠ってかんじ!」
「あんなお兄さんいたら、雫ちゃんの理想高そうだよね!」
「てゆーか、雫ちゃん彼氏いる!?」
「え、えぇいきなりそんな話になる?」
「え、オレも気になる」
「私も」
『リ、リコさんまで…っ』
彼氏…征十郎は彼氏だよね?
でも彼女とは言われてないし…僕のものとしか言われてないから勝手にまだ彼女ヅラしていいのかな…
「もしかして黄瀬とか!?」
「でもそういえば合宿中、高尾のこと名前で呼んでた!」
「え!?名前呼び!?どういうこと?」
「…黄瀬くんのはただの重い片思いですよ」
「そうなのか黒子?」
『涼太くんは本当に優しい友達だよ、和成は小学校からの幼なじみなの』
「えーじゃあいないの?好きなタイプは?」
『え!?好きなタイプ??』
すごいぐいぐい一年生聞いてくるな…二年生も興味があるのかすごい見られてる…
テツヤくんも若干ニヤッとしてるし…
「す、好きな人はいますよ……っ」
「えーどんな人!?お兄さんみたいに才色兼備?それとも黄瀬くんみたいにシャララってしてるひと?」
「それとも和成くんみたいにさわやかスポーツマン?それとも真ちゃんみたいにインテリツンデレ男子?ぷっ!」
いきなり現れた慣れない声に振り向くと、そこには和成と緑間くんがいた。
「「「高尾と緑間!?なんでここに」」」
「お風呂上がりに決まっているのだよ…そして高尾、そのふざけた言い方はやめろ、俺はツンデレではないのだよ」
「…ちなみに雫さんの好きな人は完璧なひとですよ」
「完璧って…もっと具体的になにが完璧とか…容姿とか性格とか、頭いいとかスポーツ万能とかあるじゃんか!」
小金井先輩が突っ込みを入れると、緑間くんが返した。
「やつが負けたところなど見たところないのだよ、頭脳でも、スポーツでもな」
『…ハードル上げないでください2人とも。たまたま好きになった人がそうであっただけで、もともと完璧な人が好きなわけじゃないですっ』
「でもまじかー…」
「やっぱ身内のお兄さんもあんなスペックたけーし、雫ちゃんもなんでもできそうだもんな…」
「ぷっ、泪くんなかなか人気者じゃーん?」
『泪はそっちでもちゃんと役に立ってる?』
「むしろありがたいのだよ、なぜ中学時代被らなかったのか、残念でならないくらいにな」
話もひと段落つきそうなところへ、ジュース何本も持った火神くんが登場した。
「今戻ったんだよ!…です」
「え?」
「体育館戻ったら誰もいねぇし!どうせ飲むためじゃ無ぇだろうけど、はい」
「これ、まさかうちだけじゃなく、秀徳の人たちの分も?一体、何往復したのよ」
その後ろ姿を見つめるリコさん。
「言われた量をこなすどころか、完全に超えてる。成果が出るのはまだ先、でもこのまま鍛え続ければ、彼は、とんでもない選手になる!」
『ジュース大量ですね、おしるこはないですけど、秀徳さんの分持っていってもらってもいい?』
「おう!ありがとうな!いただくぜ!」
「おしるこは外の自販機にあるのを確認済みだ、問題ないのだよ」