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『第7章』IH桐皇戦





後半始まって、火神くんと青峰のマッチアップ。


「気合い、いい感じじゃねぇの。前公園でやった時とは違うってことか。けどまぁ…無駄だぜ」


またしても、火神は青峰に付いて行けず、抜かてしまう。フェイクにかかったわけでもないのに、キレが凄い。しかも、ゴール下マークに入っている土田先輩と水戸部先輩をあざ笑うかのように、青峰は急停止してフェイドアウェイシュート。
桁違いのスピードに、またしても驚愕せざるを得ない誠凛メンバー…


『運動において、速さとは最高速だけでは無い。ゼロからMAXへの加速力と、MAXからゼロへの減速力、アジリティ、すなわち敏捷性。青峰のそれは、キセキの世代の中でもずば抜けています…』


日向先輩がロングパスで、火神くんがダンクをしようとするが青峰が後ろから払う。

「させねぇよ」


“どんなに早く攻めても、こいつは振り切れない…!”


「なーにやすやすと速攻取った気でいんだよ」


(こいつ、マジかよ。今の踏み切り位置、フリースローラインじゃねぇか。あそこからダンクでも決めるつもりだったんじゃねぇだろうなぁ、おいおい)


「やめだ。やっぱ性に合わねぇわ、生真面目なバスケは」


そこからの青峰は、ストリートのバスケのようなトリッキーな動きをし、もっとコートを翻弄し始めた。


「つくづくキセキの世代ってのは、ふざけた奴ばっかりだ」








『ドリブルもシュートも、青峰の動きに型は無い。無限。ゆえにディフェンス不可能。

ーーーーーーーーアンストッパブルスコアラー。
それが、キセキの世代のエース、青峰大輝です』





日向先輩が振り切られ、火神くんがブロックに入る、今までよりも一段と高く飛んだ火神くん。


「あ~はいはい、確かに高ぇよ。大したもんだわ。けどもー飽きたわ」


青峰は、上体をほとんど寝かせながらシュートを打ち、打点を高くして、ブロックを回避します。普通、シュートは上手い人ほどループの高さがいつも変わらない。けれど青峰はてんでバラバラ、なのに落ちない。

速さで勝てないなら、高さで勝とうと、トライしますが、飛びきる前にボールを叩かれてしまう。


「悪ぃな、のろすぎてつい取っちまったわ」


しかも、ドリブルを始めた青峰に、全速力で追いすがる火神くんだが追いつけない。それでも諦めたくない火神くんはスーパージャンプをするが、青峰の体に当たってバスケットカウントを取られます。


しかも青峰は、ボールを持った手を背中側に回し、飛んで止めに入ってきている火神くんの背中からボールを通してシュート。


人並外れた彼のバスケに、コートの誠凛チームは驚愕を隠せない様子。




「そうじゃねぇだろ、おめぇらのバスケは。俺に勝てるのは、俺だけだ。てめぇだけじゃ抗えねぇよ」


そして、向かってきたのは誠凛ベンチ。


「出て来いよ、テツ。決着をつけようぜ」


『青峰…』


「…雫、お前の欲しがってたもんはオレが持ってる、それを証明してやるよ」

現時点で20点差。

「行ってきます」

「見せてみろよ。新しい光と影の底力をよ」


不甲斐ないと謝る火神くん。


「すいません、意味がわからないんですけど。
最初から、一緒に戦うつもりでした。そんなに簡単に勝てたら、苦労はありません」


「うっせぇな、わぁってるよ!」



リスタートで、テツヤくんはまた廻転式パスでコートをぶった切る長距離パス。
火神くんがボールを持って走るが、マークに付こうと後ろから走る青峰も、超速い!


「知ってるよ、追い付いてくるんだろ」

火神くんは、自分では行かずに、後ろにいた日向くんにパス。

「どうしたんだ火神。随分とナイスパスじゃないか」

「決めてくださーい!キャプテン!」

手を拝むようにして言ったベンチ。

日向先輩のスリーが決まる。後半ついに初得点!第3Q残り5分半で、42-59だ。


「つか、祈ってんじゃねぇぞ?一年。俺が打つ時は称える準備だけしとけよぉ!」


クラッチタイムに入ってた…



「やっぱ全然違ぇなぁ、お前が入るとよぉ」


「相変わらずだな、テツ。中学ん時とほんと、変わってねぇわ。ほんと、全然。マジ、がっかりだわ。まだそれで勝つつもりかよ、俺に」


「そのつもりです。これが、僕のバスケです」

誠凛はテツヤくんを中心に流れを取ろうとするが、彼のイグナイトパスをいとも簡単にカットする青峰。


『テツヤくんのイグナイトパスは、キセキの世代しか取れないパス…でもそのパスを1番多く取ってきたのは…』


「お前のパスを一番取ってきたのは、誰だと思ってんだよ」


そして、ボールを奪った青峰は、次々と誠凛メンバーを抜き去り、最後にブロックに飛んだ火神くんとテツヤくんをモノともせずにダンク。

驚愕の5人抜きに、リコさんも動揺を隠せません。へたり込んだテツヤくんに、着地した青峰が話しかける。


「哀しいぜ。最後の全中から、お前は何も変わってない。同じってことは、成長してねぇってことじゃねぇか。やっぱ、結局赤司が言った通りかよ。お前のバスケじゃ勝てねぇよ」



“結局赤司が言った通りかよ”



その言葉にわたしは心臓をえぐられた。


『…っ………』

「…?雫ちゃん?どうしたの?」

『ぁ…いえ、なんでもありません…』


そのあと第4Q、火神くんはケガをした足をかばっていたせいで、もう一方の足に無理がたたっているという…。

この試合どころか、決勝リーグ残り2日も出せない、とリコさんは考えている。
ベンチに座った火神くんは、悔しさで拳を握りしめます。


「おい、すんげぇなあいつ。人でも殺すんか。
今まで青峰とやったヤツはみんな、才能の差に諦めるか呆然とするか。どっちにしろ意気消沈って感じだったんだけど。あいつはあんだけやられて尚、つか今まで以上に、迸ってんぞ怒りが。あんなヤツ、初めて見たわ」




そして火神くん抜きで、どんどん点差は開いていく。
「思ったより速かったな、もう決まりだろ。
自慢のパスも通じず、体力も尽き、お前の光だった火神もいない。ミスディレクションもとっくに切れた。もはや並みのプレーヤ以下だ。バスケに一発逆転は無ぇよ。俺の勝ちだ、テツ」


「まだ終わってません。可能性がゼロになるとすれば、それは諦めた時です。どんなに無意味と思われても、自分からゼロにするのだけは、嫌なんです。だから、諦めるのは絶対嫌だ!!」

「一つだけ認めてやるわ。その諦めの悪さだけは」


実際問題としては、桐皇の強さは圧倒的だった。



(誰ひとり諦めず、全員が最後まで戦った。れでも、点差は開き続けた。涙は、出なかった。
その日、私たちは、それほど圧倒的に、負けた)





試合終了。
スコアは55-112だった。





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