『第1章』入学と入部
雨の日の練習。
ロードワークを削った分練習時間が余った日向先輩は、リコさんに練習内容の相談をしていた。
それを聞いていた私は提案した。
『5対5で、ミニゲームしてはどうですか?チーム編成は、1年対2年です』
誠凛高校バスケットボール部は新設校ながら、一年生だけで決勝リーグまで進んでいる強豪。
普通ではありえないほどの強さだった。
「おいおい、いくら帝光中のやつと、火神がいるからって、無謀じゃねえか?」
「…でも、黒子くんと火神の能力もみたいところではあるし、彼の実力を知っている雫ちゃんが言うなら…やりましょうか!」
そう、テツヤくんの力を見るにはミニゲームで見るのが1番早い。
そしてミニゲームは始まったけど、やはり火神の1人プレーが目立った。
それほど彼はずば抜けたセンスを持っている。
(想像以上だわ・・・あんな粗削りなセンスまかせのプレイでこの破壊力・・・!!)
…リコさんと同じことを考えているな。
テツヤくんがボールを取られてしまうことに、火神くんはイラついているようだった。
そして火神くんには3人のマークが付き、あっという間に2年チームとの点差は16点となってしまった。
勝てるわけがない、と弱気を見せる一年生チームのメンバーに火神くんがキレた。
「もういい・・ってなんだそれオイ!」
すかさずテツヤくんが火神くんに膝カックンをしながらなだめる。
「落ち着いてください」
…そろそろかな?
『リコさん、みていてくださいね。テツヤくんのバスケを…』
「え!?今からなにか始まるっていうの!?」
(明らかに16点差、普通なら1年が追いつくことなんて考えられないはず…でも、雫ちゃんは明らかに思っている、1年の勝利を…そんなに彼がキーパーソンだというの?)
そしえテツヤくんのパスしたはずのボールは、いつのまにかゴール下にいた他のチームメイトのに手に渡っていた。
ボールを受けた方も一瞬戸惑うほどの出来事だった。
「今どーやってパス通った!?わかんねぇ見逃した!!」
(存在感のなさを利用してパスの中継役に!?しかもボールに触っている時間が極端に短い!!)
「…これは一体!?」
『ミスディレクション…ですよ。手品と同じ、視線誘導のテクニックをバスケに応用した、テツヤくんのパス技です』
「まさか…もしかして黒子くんは…!?」
(元帝光中のレギュラーでパス回しに特化した見えない選手・・・!!噂は知ってたけど実在するなんて・・・・!!)
『そうですよ、キセキの世代、幻のシックスマンです、黒子テツヤくんは』
そして一点差まで詰めたところで、テツヤくんはレイアップを外した。
おそらく、火神くんを信頼してだろうか。
「だから弱ぇ奴はムカツクんだよ。ちゃんと決めろタコ!!!」
そして1年チームが勝ったのであった。
そして練習終了後、テツヤくんとマジバにきていたところで、また火神くんに会った。
「ホラよ。一個やる。バスケ弱い奴に興味はねーが、オマエのことそれ一個分くらいは認めてやる。」
「・・・・どうも」
「つーかマネージャーは食わねえのかよ」
『私夜ご飯待ってるからいらないの』
そして帰り道、どうやら火神くんはそれなりにテツヤくんを認め始めたみたいだ。
「キセキの世代ってのはどんぐらい強えーんだよ?オレが今やったらどうなる?」
テツヤくんはシェイクを片手に答える。
「・・・・瞬殺されます」
『ごめんね、同感』
「もっと違う言い方ねえのかよ…」
「ただでさえ天才の5人が、今年それぞれ違う強豪校に進学しました。まず間違いなくその中のどこかが頂点に立ちます」
『………』
その頂点に、このチームで立たなければならない。そうしなければ彼と離れた意味もなければ、転校することになってしまうのだから。
「・・・ハッハハハ。いいね火ィつくぜそーゆーの。・・・決めた!そいつら全員ぶっ倒して日本一になってやる!」
『!……火神くん…』
少し、昔の青峰に似ている…。
強敵を前に、楽しそうに笑う彼と面影が重なった。
「ムリだと思います。潜在能力だけならわかりません。でも今の完成度では彼らの足元にも及ばない。一人ではムリです」
そして、笑みを浮かべながらテツヤくんは続けて言った。
「・・・ボクも決めました。ボクは影だ。でも、影は光が強いほど濃くなり、光の白さを際立たせる。光の影としてボクもキミを日本一にする」
「ハハっ!そういうことかよ、マネージャーが言ってた影と光ってよ!!おもしれーじゃねえか」
新しい影と光の誕生だったーーーーーーーーー