『第6章』決勝リーグ前
一方練習が終わった後、止められているにも関わらず、1人バスケットコートでボールを持つ火神。
痛みだってもうほとんど無い、とシュートを打とうのするが、その瞬間、脚に痛みが走り、打ち損ねてしまう。
ボードに弾かれたボールは転がり、そのボールを取った男は声をかけた。
「よう。火神大我、だろ?相手しろ。試してやるから」
「あぁ? 誰だてめぇ。名乗りもしねぇで相手しろとか、気に入らねぇな」
「お前の気分とか聞いてねぇよ。やれっつったらやるんだよ。ま、名前くらいは言ってやるよ。青峰大輝だ」
「青峰!? …名前は聞いてるぜ。けど、そんな上から物を言われて、素直にハイなんて言うわけ」
「はは、おいおい、だから聞いてねぇんだよ。ぐだぐだ言ってねぇで、やれ。誰も勝負になるなんて思ってねぇよ。言ったろう? 試してやる、って。俺より強いヤツとか、存在しねぇもん探してるわけじゃねぇんだよ。俺の退屈をお前がどれだけ楽しませられるかってだけの話しだ」
その言葉に火神はキレた。
「黄瀬といい、緑間といい、キセキの世代ってのはカンに障るヤツばっかだけど、てめぇはそん中でも格別だな。ぶっ倒してやる!」
ま、まじかよ……
脚が痛くて本調子じゃないとはいえ、全く歯が立たねえ!!
「話しになんねぇな。お前、ほんとに緑間に勝ったのか?テツの目も曇ったもんだぜ…。お前じゃ、あいつの力を全て引き出せねぇ」
「あいつは影だ。影は光が強いほど、濃くなる。つまり、輝き次第であいつは強くも弱くもなる」
青峰が、動き、一瞬で火神を抜く青峰。
その抜き去り際…呆然とする火神に対して青峰が言った…
「お前の光は、淡すぎる」
そしてボロ負けしてしまった火神に追い討ちをかけるように青峰は話す。
「雫もこれじゃあ可哀想だわ、あいつは勝つために闘わなきゃなんねー。なのにお前らじゃあいつを勝利に導いてやれない…あいつは俺のところに来るべきだったってことだろ」
「あぁ!?あいつはキセキの世代を倒すために黒子と手を組んでーーーーー」
「…オレに勝たなきゃあいつの目標のまだスタート地点にも立ててねえ。黄瀬や緑間なんてのは、余興にしかすぎねえな」
(どういうことだ?現にキセキの世代の…黄瀬も緑間も一度倒してる…もちろん全員倒して日本一になるのが目標だが……余興ってなんだ?なんかもっと違うもんがあいつには…)
「つーか、知らねーならそこまでの関係ってことだろうがよ、結局、雫の光にもテメーはなれてねぇってことだ」
“オレは…好きなバスケでキセキの世代を倒して日本一になる。黒子もそう言っていた。雫もそのはずだ…でももしなんか他に理由があるなら…聞いた方がいい…のか?”
決勝リーグ出場校が出そろいました。
誠凛。
桐皇学園。
鳴成。
泉真館。
王者の泉真館に青峰がいったと思っている先輩方。
『青峰がいるのは桐皇ですよ、先輩』
『ちなみに桐皇学園は、過去の実績は無いけれど、最近有望な選手を集めている新興校という位置づけです』
「ここ数年で急激に力を付けてきて、特に今年は秀徳と比べても何ら遜色無いわ!」
まじかーとうなだれる一年生と先輩方。
そこへ火神くんが体育館にやってきた。
「火神くん、バスケした?悪化してない?」
「え、あぁ…いやぁ、その…」
「このバカガミが!」
「今日は見学!で、保健室に湿布貰って来い!
ダッシュ!!は、無理だから、逆立ちで行け!」
『決勝リーグ初戦の相手は、火神くんが不可欠の、桐皇学園です、出来るだけ回復させないと』
リコさんに様子見てくるよう言われたので、私も保健室にいくことになった。
「火神くんはバカですけど」
「って、いきなり、オイ!」
「何の理由もなく、無茶するとは思えません。何か、あったんですか」
「青峰とやった。そん時言ってた。ヤツは、お前の昔の光だってな。ただ同じチームだったって言い方には聞こえねぇ。お前ら、中学ん時、何があったんだよ」
『え、青峰にあったの?!』
「うわっ!雫も急に現れんな!!」
テツヤくんはすこし中学時代の話をした。
楽しそうにバスケをする青峰の話、才能が開花して、好敵手がいなくなってしまった話…。
「キセキの世代も、初めから並はずれていたわけじゃありません。ただ、青峰くんはその中で一番早く、そして突然、開花しました」
「その年の大会は、青峰くんの力で圧勝しました。けど、それから他の四人も変わっていって、三年の全国大会での、あるできごとをきっか
けに、僕は帝光バスケ部をやめました」
『……2人は本当に、バスケへの熱とか、すごくいいコンビだったよ』
「ふーん。ま、一言言わせてもらえば、ちょーし乗んな、ボケ!!ってぐらいだ。強くなりすぎてつまんなくなった?俺に勝てるのは俺だけ?キセキの世代はそんなんばっかか!へそでコーヒー沸くぜ」
「お茶です」
火神くんが、拳を出していた。
「サクっと勝って、目ぇ覚ましてやらぁ!」
テツヤくんも、火神くんの拳に、自分の拳を合わせた。
昔の青峰のときのようにーーーーーーーーー。
「あとよくわかんねーけど、お前の話もしてたぞ、黄瀬と緑間は余興だとか、青峰に勝ってやっとスタートラインだとか……」
『私もみんなと同じ気持ちなのは変わらないよ、チームプレーでキセキの世代に勝ちたい』
「あぁ、そう言ってたよな!」
「雫さん…」
『キセキの世代の中のひとり、…東京にいないんだけど、私の中では1番その人に勝ちたいんだ!それを青峰は知っているから…』
「青峰のやろーに、オレじゃあお前らの光として弱いって言われた、が、これから強くなってやる!そしてそのお前の勝ちたい奴も、オレたちが倒す!!」
『ありがとう!』
オレが見た中で、1番いい雫の笑顔だった。