『第5章』IH秀徳戦
ロッカー室に向かい、帰ろうと声をかけ扉を開けると、そこには…
「ゾンビみたくなっとる…」
「動くどころか、立てねっす…」
みんなの屍がいた。
近くのお店に入ろうとし、火神くんはテツヤくんにおぶられることに。
…支え切れるのかはおいておこう。
pipipi…
“試合感動したぜ、おめでとう雫、帰り気をつけてな”
泪からのメールだった。
そしてもう一件きていて…
“雫っちおめでとう〜!声かけたかったんスけど、先輩と来てるんでまた会いに行くっス!”
涼太くんからだった。
そしてお好み焼きやさんに到着したけども、火神くんが泥だらけだった。
「すみません、重かったんで」
中に入ると、笠松さんと涼太くんがいた。
「黄瀬と笠松!」
「呼び捨てか、おい!」
相席ということになり、涼太くんが私をどうしてもと呼ぶため、私はお誕生日席で、火神くんとテツヤくんも相席になった。
「こんなに早く会えて嬉しいっス〜!やっぱり運命で結ばれてるんスかねー?」
ギュ〜スリスリと抱きついてくる涼太くん。
「うわぁ、みてて暑苦しいな。雫も拒めよ」
『慣れたので』
「すまんなうちの黄瀬が…」
『もう慣れましたので』
“いらっしゃーい”
「げ…」
「なんでお前らここに、つか、他は?」
「ははは、いやぁ、真ちゃんが泣き崩れてる間に先輩達とはぐれちゃって~」
「おいっ」
「ついでに飯でも、みたいな?」
「店を変えるぞ」
出て行ってしまった緑間くんを追いかける和成。 その途端超強風と豪雨が吹き、結局戻って来た。
そこで、和成が笠松さんに気づき、憧れてるんです、ちょっと話しましょう、みたいなこと言って、笠松さんを他のテーブルに引っ張って行ってしまった結果。
元帝光中メンバー+火神くんに。
「あの席、パ無ぇ!」
「お前、あれ狙ってたろ」
「えぇ~? まっさかぁ」
涼太くんがもんじゃを食べていて、私にあーんしてくるのを、緑間くんがみて、
「よくそんなピー…のようなもの食えるな」
「ちょ、なんでそんなこと…」
『…やっぱいらない』
ガーンと落ち込んでいる涼太くんを気にせず、火神くんが注文を始めた。
「え~いか玉ぶた玉キムチ玉なんたらかんたら…」
「頼み過ぎなのだよ!」
「何の呪文っすか、それ!」
「大丈夫です。火神くんひとりで食べますから」
「ほんとに人間すか…」
緑間くんはむすっとした顔をしていた。
「負けて悔しいのはわかるっスけど。ほら、昨日の敵は何とやらっすよ」
「負かされたのは、ついさっきなのだよ」
「むしろお前がへらへら同席している方が理解に苦しむのだよ。一度負けた相手だろ」
「そりゃぁ、当然、リベンジするっすよ。インターハイの舞台でね。次は負けねぇっすよ」
「はっ、望むところだよ」
『…火神くん青のりついてるよ』
まじか!?まぁ後で拭けばいいか、とまた食べ続けた。
「…黄瀬、前と少し変わったな」
「そっすかぁ?」
「目が、変なのだよ」
「変!?まぁ、黒子っちたちとやってから、前より練習するようになったっすかねぇ。あと最近思うのが、海常のみんなとバスケするのが、ちょっと楽しいっス」
「…どうも勘違いだったようだ、やはり変わってなどいない。戻っただけだ。三連覇する少し前にな」
“三連覇”という言葉に胸がチクリと痛んだ。
「けど、あの頃はまだ、みんなそうだったじゃないですか」
「お前らがどう変わろうと勝手だ。だが俺は、楽しい楽しくないでバスケはしていないのだよ」
『…』
「お前ら、まじ、ごちゃごちゃ考えすぎなんじゃねぇの?楽しいからやってるに決まってんだろ、バスケ」
「何だと。何も知らんくせに、知ったようなことを言わないで…」
“べちゃ”と音がして、俯いていた顔を上げると、和成のひっくり返したお好み焼きが緑間くんに被さっていた。
「あ、ごめーん真ちゃ…ちょ、まって」
ズルズルと引きずられ、外へ出て行ってしまった2人。
……たぶん、和成はわざとだったな。
「火神くんの言うとおりです。今日、試合をして思いました。つまらなかったら、あんなにうまくなりません」
テツヤくんの言葉に私はそうだね、と頷いた。
そして緑間くんだけ戻ってきて荷物を取る。
「火神、一つ忠告してやるのだよ。東京にいるキセキの世代はふたり、俺と、青峰大輝という男だ。決勝リーグで当たるだろう。そしてヤツは、お前と同種のプレーヤだ」
「はぁ? よくわかんねぇけど、そいつも相当強ぇんだろうな」
「…強いです。ただあの人のバスケは、好きじゃないです」
“お前は俺のバスケのファンだろ?”
『……』
「ま、せいぜいがんばるのだよ」
緑間くんはお金を置いて、帰って行く。
「緑間くん。また、やりましょう」
「当たり前だ。次は勝つ」
「今日はジャンケン無しでいいぜ。その代わり、お前のそのラッキーアイテム」
「あぁ、次からは抜からないのだよ。今度はもっと大きい信楽焼を買うのだから」
「サイズの話しじゃねぇよ!」
「わざとお好み焼きを投げたのだから、しばらく漕ぐのはお前だ高尾」
「…しーちゃんのこといじめたらいくら真ちゃんでも許さねーからなっ」
「…いじめてないのだよ」
「しーちゃんは下向いて唇キュって結ぶときは悲しんでるのっ」
緑間は少し考えるようにしたあと、悪かったのだよ、と言って、チャリアカーに乗り込んだ。