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『第5章』IH秀徳戦





誠凛ベンチでは火神くんを見る1年トリオが、はしゃいでた。

「マジすげぇよ火神! あいつがいれば…」

「そうですか?このままだと、まずい気がします、ですよね雫さん」

『そうだね…危ないとおもう、でも止まるにもあの気持ちのままだと…』


そして宮地さんや木村さんも、1年の火神くんに押されてるっていうのが信じられない様子。
大坪さんも、火神くんの常軌を逸した跳躍力に驚いているようだ。
そして、またダンクを決める火神くん。


「すげぇな火神、ナイス火神!」

「もっとガンガンボールくんねぇですか」

小金井先輩が、火神くんに声をかけても、火神くんの様子にちょっと戸惑い気味…火神くん突っ走っている。


「信じらんねぇぜ、緑間を止めるなんて。いくらモーションに時間がかかるって弱点があっても、あの高い打点を叩くとか有り得ねぇ」


「緑間を一度シメたくらいで調子に乗んなよ。刺すぞ!」

「宮地さんダメだ、その位置は!」


和成の読み通り、宮地さんの後ろからマークに入った火神すんが、ボールを叩き落とす。


それを拾った日向先輩が、火神くんにパスを通してカウンターをする。


「ふざけんな! いつまで飛んでんだてめぇ…!ワイヤーで上から吊ってんじゃねぇか?」

同時に飛んだはずなのに、火神くんより木村さんの体は先に落ちる…


「しかも流れて飛んだのに、空中で立て直すボディバランス。基本のジャンプシュート一つとっても、こいつが打つと、最早ブロック不可能…無敵の必殺技だ!」



第3Q残り1分半で、47-56。
大差から、ついに一ケタの点差に。


「ふん、お前の力は認めるのだよ。だが、これ以上差が詰まることは無い」


「何だと、打たせるか…!」


緑間くんのシュートに対して、ジャンプしようとした火神は、飛ぶことができなかった。
そして、緑間くんのシュートは決まる。


「悪いが、これが現実だ」


「うるせぇよ!この程度で負けてたまるか!」

「強引過ぎる。てか、まだ早ぇよ! 火神待て!」
日向先輩の制止も聞かずにシュートに行き、ブロックされてカウンターを食らうハメに。

スコアは47-61で第3Qを終えた。
火神くんは相当いらついているようだ。


「くそっ」

「火神、熱くなり過ぎだ。もっと周りを見ろよ」

「そうだ、それにさっきのは行くとこじゃねぇだろ。一度パスして」

「戻してパス回して、どうすんだよ」

「あ?」

「現状秀徳と渡り合えるのは俺だけだろ。今必要なのはチームプレイじゃねぇ、俺が点を取ることだ」

「おい、何だよそれ!」

「それと自己中は違うだろ」




あぁ、そうか…
そういう考えになってしまっては、“キセキの世代”と変わらない。
彼らと変わらないのであれば、勝つことなんてできない。



『…期待して損したよ、火神大我…』

「あ!?」

「ちょ、雫ちゃん!?」

『彼らと同じ考えのバスケをするならもういらない』


私は無表情で彼に淡々と伝えた。
火神くんが私の言葉で驚いた顔を見せたと思ったら、テツヤくんが彼をグーで殴った。


「バスケはひとりでやるものじゃないでしょ」


「みんな仲よく頑張りゃ、負けてもいいのかよ。勝たなきゃ何の意味も無ぇよ!」


「ひとりで勝っても、意味なんか無いだろ!キセキの世代を倒すって言ってたのに、彼らと同じ考えでどうすんだ。今の、お互いを信頼できない状態で、仮に秀徳を倒せたとしても、きっと誰も嬉しくないです」


火神くんも、テツヤくんを殴り返す。
私は彼の後ろにまわり、彼が飛ばないようにした。
代わりに私が床に手をつく。

「雫ちゃん、大丈夫かっ!?」

伊月先輩が私に駆け寄る。



「甘っちょろいこと、言ってんなよ!そんなん、勝てなきゃただのキレイゴトだろうが!」


「じゃぁ、『勝利』ってなんですか。試合終了した時、どんなに相手より点を多く取っていても、嬉しくなければ、それは勝利じゃない!」



全中最後の試合をみて、彼は同じ問いをしていた…。苦しい思いをする勝ちなら、それは勝利とは呼べないと。



「そうそう! 別に負けたいわけじゃないって!」

「ただ、ひとりで気張ることはねぇってことだよ」

「つか、何か異論、あるか?」



「異論とか、別に…いや…悪かった。勝った時、嬉しいほうがいいに、決まってるよな!」


ごめんな雫も、悪かったと私に深々と頭を下げる火神くん。


『私もごめんね、きついこと言って…』


「さてと、黒子のおかげで火神の頭が冷えたのはいいとして、ピンチは変わってねぇけど、どうする?」


「すいません。一つ。今なら使えるかもしれません。僕にできるのは、ボールを回すだけです。けど、もう一段階、上があります」



「黒子くんの新しいパス?」

「なんで今まで黙ってたんだ」

「取れる人が限られてるんです。でも、今の火神くんなら、取れるかもしれません。ただ、パスが火神くんだけでは、最後までもちません。
やはり、高尾くんのマークを外して、通常のパスも必要です」

「けど、もう行けんじゃねぇ? 俺の目もつられそうだし」

「ん~? どういう意味だ?」


意味深な笑顔を残して、テツヤくんと伊月先輩は小金井先輩をみていた。


「さっきはその、すみません」

「ん? あぁ、気にすんな」

火神くん顔がほころんだ、素直なんだな…

「と言いたいところだが。さすがにあの口の聞き方は無ぇ。後でシバく!」

日向先輩はクラッチタイムに入っていたみたいだ、オーラが怖いのと、火神くんもビビっている。

「ま、それは後な。泣いても笑っても、あと10分だ。行くぜ!」




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