『第5章』IH秀徳戦
第1Q残り3分40秒。
スコアは8-11で、誠凛がタイムアウトをとる。
向こうのベンチで和成たちの声が聞こえる。
「あ~らら、誠凛困っちゃったね」
「気を抜くな。黒子はこれで終わるようなヤツじゃない」
「大丈夫だってぇ。影の薄さ取ったら、ただの雑魚だろ」
「…俺があいつのことをなぜ気に食わないのか、わかるか」
「あ?」
「それは黒子のことを、認めているからだ。身体能力で優れているところは一つも無い。ひとりでは何もできない。
…にもかかわらず、帝光で俺たちと同じユニフォームを着て、チームを勝利に導いた。
あいつの強さは、俺達とは全く違う。異質の強さなのだよ」
「…だから気に食わん。
俺の認めた男が、力を生かしきれないチームで、望んで埋もれようとしているのだからな」
緑間くんもなんだかんだ、テツヤくんを認めているのは彼が中学で1軍入ってきたときから知っている。
きっと彼も、テツヤくんに強い強豪校にいってほしかったみたい。
たしかに、彼は強い光があればあるほどその力を発揮する。
「おいお前、まさかこのままやられっぱなしじゃねぇだろうな」
「まぁ、やっぱちょっと嫌です」
「よく言った!」
火神くんはリコさんに、このまま行かせてほしいと頼んでいる。
リコさんは、和成にミスディレクションが効かないのに、大丈夫か?と聞いています。
「大丈夫、じゃないです。困りました」
「って、どうすんだ!!」
『あ、もうタイムアウト終わりそうです!』
「こっちも挨拶しようか。手土産の新技もあるしな」
とりあえずテツヤくんが和成を、火神くんが緑間くんをマークになった。
「ぶっちゃけすでに体だりぃ」
この試合、さっきの試合で温存した2人が重要なのだ。
二年生はもうすでに息切れしていて、しんどそうだ。
「大丈夫。この試合、温存しといた黒子くんと火神くんにかかっているのは確かよ。でも、それだけじゃない」
『リコさん…その折れた武将フィギュアは…』
「プレッシャーの中でも勝てるよう、特訓したのよ!」
「王者がなんぼのもんじゃー!!」
「ちょっとだけ性格が歪んだけど、日向くんは、大事なシュートは絶対決めるわ」
なるほど、それであの日向先輩のクラッチタイムが生まれたんですね…
一方テツヤくんも和成は、相変わらず彼のホークアイによりスティールされてしまっていた。
「何をぼーっとしているのだよ。こちらは本気なのだ、もっと必死に守れよ。俺のシュートレンジは、そんな手前では無いのだよ」
そして彼はセンターラインから、シュートを入れた。
「高いループは長距離を飛ばすため。前に感じた違和感の正体はこれか…。ハーフコート全てがシュート範囲、これが緑間の真の力…」
日向先輩も、驚愕しているようだ。
この間の違和感を払拭できたみたいだけれど…
『…たしかにからはセンターラインからシュートを打てますが…そこから成長していないとは思えません…』
そして緑間くんは誠凛ゴール下へ戻っていた。
「ここまで戻れば、黒子のパスで後ろを取るなど不可能なのだよ。だが、そもそも関係無いのだよ。俺のシュートは3点、お前たちのカウンターは2点。何もしなかったとしても差は開いて行く」
「面白ぇもん持ってんじゃねぇか。だが」
そして火神くんも3Pシュートを打ちます。
そのまま入ればそれでいいし、外れても自分がゴールにぶちこむ…
とりあえず火神はダンクで返しました。
1人アリウープをしていた。
「ナイスです」
「ナイスじゃないっすかぁ」
「伊月、ほんともうやめて、それ」
今の時点で、第1Q残り16秒。
13-16の1ゴール差。
このままなら、なんとかいけそうだけれど、緑間くんがこのままとは思えない。
「君らなりのいいシュートなのだよ。だが…」
誠凛のゴール下のラインから、シュートを放つ緑間。
「そんな手前では無いと言ったはずなのだよ。
俺のシュートレンジは、コート全てだ」
そして、シュートが入ったと同時に、第1Q終了のブザーがなり、スコアは13-19だった。
…やはりキセキの世代はここ数ヶ月で成長している。