『第5章』IH秀徳戦




ーーーーーー試合開始!


ジャンプボールは火神くんが取って誠凛ボールになった。けれど、さすが秀徳…ポジショニングが速く、伊月先輩も簡単にボールは出せない。一年生ベンチが応援する。

「一本大事に!」


リコさんは、格上にそんなんじゃ主導権プレゼントするようなもんだ、と伝えている。
だからまず第1Qを取る。


「そのためにも、挨拶がてらに強襲GO!」


しかし、テツヤくんから火神くんへのパスで、アリウープを決めようとしたら、緑間くんにブロックされた。

こちらも負けじと相手のカウンターを、日向先輩がブロック。


ーーーーーーーーー均衡状態に入った。


両チーム無得点のまま、もうすぐ2分。
このまま行くと、第1Qは恐らく、先取点を取った方が取ることになる。


和成のバックパスで緑間くんにボールが渡る。


「まさかこの場面で3打つつもりかよ、緑間!!」


もちろんシュートは綺麗に入る。


でもわたしは聴こえた、テツヤくんの“走っててください”の一言。


廻転式ロングパスで、ボールをコートをぶった切るように投げるテツヤくん。
そのボールは、ちょうど振り返った緑間の顔の横を通り抜け…。
それをゴール下まで走っていた火神くんがキャッチ、そのままダンクでゴールを返します。



「黒子…」

「すみません。そう簡単に第1Qを取られると、困ります」












緑間くんのシュートは、速攻を防ぐ目的もあるが、全員戻るわけじゃない。
万一外した時の為に、残りはリバウンドに備えている。その滞空時間があだになる。
緑間くんが戻れると言う事は、火神くんも走れると言う事。


戻った緑間くんのさらに後ろまで貫通する、超速攻がカウンターで来る。


だから緑間くんは打てない。


『テツヤくんの判断と行動により、緑間くんは一時的に封じ込められましたね』

「あのパスを見せ付けるタイミングと判断力、
一発で成功させる度胸、さすがね黒子くん」

『ただ……そろそろきます』




「あんなんでうちが押さえられるとか考えられちゃ困るな」


和成の巧みなパス回しで、すぐに秀徳も返し、誠凛もテツヤくんのパスで返す。


きた、マークチェンジ…
やはり和成がテツヤくんをマークする。

「誰が付いても同じだろう?」

一年生がベンチでいう。

『…いえ、おそらくこれはテツヤくん封じです』

「!?どういうこと?」


(やっぱり、こいつも持ってる…!)

おそらく、対面している伊月先輩は気づいただろうか?

秀徳のディフェンスで、テツヤくんのマークが和成になる。

「こうなると思ったんだ。ま、真ちゃん風に言うなら、運命なのだよ、俺とお前がやり合うのは。
しかしまさか、こんなに早く対決できるとはね」

和成は続けた。

「初めて会った時から思ってたんだよ、俺とおまえは同じ人種だって。同じ1年だし、パスさばくのが生業の選手としてさ。
だからね、ぶっちゃけなんつーの?
あれ、同族嫌悪?
お前には負けたくねぇんだわ、なんか」







「どういうつもりだ?高尾がいくら速ぇからって、そういう問題じゃねぇぞ黒子は」

「黒子の力など百も承知だ。すぐにわかるのだよ」

テツヤくんに回るはずのパスは、和成にカットされ、秀徳得点。

「てか、今までこんな感覚になったことねぇんだけどな。お前が多分、どっか他と違うからじゃねぇ?」

「すみません。そういうこと言われたの、初めてで、困ります」

「え…」

「でも、僕にも似た感覚はちょっとあります」

「いいねぇ。やる気満々じゃん」


話の途中でテツヤくんはおそらくミスディレクションで和成を振り切ろうと姿をくらました。

高尾は、いきなり姿くらますとかどんだけ礼儀知らず、とか言っている…けど、この感じはやっぱり…


「なぁ~んてな」


テツヤくんが日向先輩に送ったボールを、和成がカットして、そのまま得点になってしまう。


「あいつが失敗したの、初めてじゃ」

「多分、失敗じゃない。高尾も持ってるんだ、俺のイーグルアイと同じ、いや、視野の広さは俺より上の、ホークアイを」


「なんですって!?」

『テツヤくんの使うミスディレクションは、彼を見ようとする視線を逸らします…、でも、和成のもつ目は、全体を見る能力です』

「黒子くんひとりを見ようとはしていない…つまり高尾くんには、ミスディレクションが効かないってこと!?」

『私も和成のプレーを真剣に見たことなかったので、確信できませんでしたが…』








『そして、彼もキセキの世代を倒すために日々練習してきました…、並の選手ではありませんよ』





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