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『第5章』IH秀徳戦





控室に戻ると、マッサージしたりカロリーチャージをして、この後の秀徳との試合に備えていた。
火神くんはすでにぐっすり寝ているようだ。


「ちょっと火神!身体固まっちゃうでしょ!?」

「4ファウルが堪えて凹んでたし、火神なりに責任感じてるだろう」

「それに、ただ寝てるっていうより、次の試合に備えて最後の一滴まで力を貯めているように見えるから」

『テツヤくんマッサージするよ』

「ありがとうございます、じゃあその前にちょっとトイレ行ってきます」

そして小金井先輩とテツヤくんはお手洗いへ向かった。












「さっきトイレでさー、秀徳の選手と会ったんだけど、黒子のこと背後にいても気付いたやついて、すごくね?」

小金井先輩は戻ってくると、テツヤくんにマッサージしているわたしにそう言った。

テツヤくんを背後で…もしかして和成かなと思い違和感を感じた。
幼なじみとして、プライベートで発揮することが多かった和成の目…
バスケで使うとなれば、かなり…伊月さんのイーグルアイよりももっと広いかもしれない。


『センター分けの人ですよね?わたしの幼なじみなんですけど…』

なんだろう、ポイントガードとして優秀、だけじゃなくて…なにか違和感が…

「そうですよ、文化祭来てくれた高尾くんです。一度あってるっていうのもあるんでしょうけど…」

『和成は…人より目がいいんだよ…視野がものすごく広い…』










「さて、今日はどっちが勝つかな?」



pipipi…



『…あ、すみません、ちょっとだけ人に会いに行ってきてもいいですか?』

「まだ始まるまで時間あるし、10分前には戻ってきてね!」

リコさんに伝えて、私は控え室を出た。




『…泪!』

「お、決勝戦進出おめでとう!まさかこんなに早く俺の母校とやる日が来るとはねぇ」

『…こんなに早く和成と緑間くんと当たるとは思わなかったよ』

「幼なじみ…とはいえ和くんも一流のバスケ選手だ。手を抜くことは絶対ないし、かなり強いぞ」

『うん、わかってる』

「他の3年も粒ぞろいだしな、なんせオレが育てたし」

『…ここで勝って、東京代表にならないと意味がないもん。私が目指してるのはIH出場、負けてられないからね』

「…オレは秀徳を応援する、が、お前にも勝って欲しい。そんだけさ」


そして泪は後輩たちに挨拶してくるわーと、秀徳の控え室へ向かった。



公式戦でキセキの世代と当たるのはこれが初めて。
正直不安だ。
チームが負けたらっていう不安じゃない。
これは負けたらキセキの世代を倒すのは不可能なんじゃないか、という意識がどうしても生まれてしまう。
東京代表には、青峰ともいつか当たるかもしれないのに…





『京都は…遠いよ……』




私は携帯の待ち受け画面をみつめた。
帝光祭でみんなで撮った白雪姫の姿の私と、王子の姿の征十郎とみんなが写っていた。









「黒子、そしてヤツの新しい光、火神。そして奴らで俺たちを倒そうとしている藍澤…。

シューティングを欠かした日は無い。
練習も手を抜いたことは無い。
左手の爪のケアもいつも通り。
今日の占い、カニ座は一位。
ラッキーアイテム、タヌキの信楽焼も持ってきている。
バッシュの紐は右から結んだ。

ーーーーーーー人事は尽くした」




「おっせーよ真ちゃん…先輩達、先行っちまったぜ?」


「高尾…、お前は藍澤の幼なじみなのだろう?全力で闘えるのか?」


「っぷ、はははっ!なーに言っちゃってんの?オレが1番あいつを理解してるに、決まってんだろ?……だからーーーーーーーーーー」












試合前最後の確認をベンチでしていた。
あえて和成や緑間くんとは試合前に話には行かなかった。
この試合にかける想いは、この試合で伝えればいいと思ったから。


「やぁ~疲れたぁ。今日はもう朝から憂鬱でさぁ。二試合連続だし、王者だし、正邦とやっても、倒してももう一試合あるとか考えるし……。
けどあと一試合。
もう次だの温存だのまどろっこしいことはいんねぇ。気分すっきり、やることは一つだけ。

ぶっ倒れるまで全部出し切れ!!」

「「「おうっ!!!!」」」


『…私、みなさんを信じていますからっ、王者だろうが秀徳だろうが…倒してきてください!』

「IHへの切符、もってきますね」

「あぁ、任せとけ!」











「まさか、本当に勝ちあがってくるとは思わなかったのだよ。
だが、ここまでだ。
どんな弱小校や無名校でも、みんなで力を合わせれば戦える。そんなものは、幻想なのだよ。
来い。
ーーーーお前の選択がいかに愚かか教えてやろう」


緑間くんは最後、わたしのほうにも視線が向き、テツヤくんに言い放った。


「人生の選択で何が正しいかなんて、誰にもわかりませんし、そんな理由で選んだわけでは無いです。
それに、一つ反論させてもらえば、誠凛は決して弱くはありません。負けません。絶対」


火花が散る双方。
2人とも感情でどうこう話すタイプじゃないから、余計威圧感がある。


「…挨拶は黒子だけでいいの?火神は?」


「必要無い。あんな情けない試合をするようなヤツとは、話す事など無いのだよ。もし言いたいことがあるようなら、プレーで示せ」


「同感だね。思い出す度、自分に腹が立ってしょうがねぇ。フラストレーション、溜まりまくりだよ。
ーーーーーだから、早くやろうぜ。
全部闘争心に変えて、てめぇを倒すために貯めてたんだ。もうこれ以上抑えらんねぇよ」


「なんだと、やれるものならやってみろ」


火神くんのこの感じ…
本当にイライラを闘志に変えて、それを静かに内に秘めている。




“闘志は必要だ、だが、それは内に秘めろ”




昔大好きな彼が言っていた言葉を思い出していた。




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