『第4章』正邦との試合
ところが小金井先輩がボールを必死に追いかけて、ベンチに衝突し負傷してしまった。
交代しか無い、と言うリコさんに、俺を出してくれ、と言う火神くん…
「何言ってんだ、お前はだめだ。その元気は何のために取ってるのか忘れたんか。ちゃんとケリつけてくっから待っとけ!」
「だからってじっとしてらんねぇよ!」
「僕もそう思います。だから、4ファウルの人はすっこんでてください」
「出てもまた津川くんにファウルしたら、即退場じゃないですか」
「だから、俺は津川にも借りがあるんだよ!」
「わかりました。じゃあ津川くんは僕が代わりに倒しときます」
「はぁ? 何言ってんだよ!おめぇが倒したって、意味ねぇんだよ!」
『火神くん、喧嘩しないの…信じよう!』
今の時点で残り5分。58-64で点差は6点。
「1年生同士、津川は頼むわ、黒子」
「なんだぁ、君だけ?俺火神とやりたかったんだけどなぁ」
「すみません。力不足かもしれませんが、借りがあるそうなんで、返しに来ました。代理で」
「火神が出ないで君だけっていうのにはびっくりしたけど、結局1年生出てくるなんて、やっぱ誠凛の先輩達ってちょっと頼りないね。だって君らふたり引っ込めたのは、先輩の意地だってさっき言ってたよ。で、今君いんじゃん?」
「出して欲しいと言ったのは僕の方です。
そもそも今までの試合ぶりを見て、そんなことを思えるはず無いです。先輩には先輩の意地があるなら、後輩には後輩の敬意があります。尊敬する先輩を支えるためにも、僕は君を倒します」
そしてテツヤくんはミスディレクションで津川くんをかわした。
そしてパスをもらう側もディフェンスをかわせるようになってきている。
「なんだよ、なんだよこれ?」
「うちの動きを、完全にとらえてる」
動揺する津川含めた正邦メンバー。
そして、監督も。
「やられたぜ。ここまでうちを研究してきたとこは、初めてだ」
「おかげさまで、DVDデッキ1個お釈迦にしたんで」
日向先輩がさらにいう。
「おかげで、対応できるようになったのは後半になってからだけどな」
「実際、癖っていうほどあからさまじゃねぇし。…癖に苦戦」
伊月先輩のダジャレも健在みたいだ。
「…ベンチから黒子の力みるの、そういえば初めてだわ…やっぱすげえな、あいつ」
『いつもそのパスをもらって決めているのは火神くんだよ?』
そしてついに逆転したところで、ダンクを決められ、さらにオールコートマンツーマンで攻めるつもりだ。
『王者の意地ですね…』
「うちも負けないわよ!!」
土壇場でも、誠凛のチーム力を見せつけられた。
伊月さんのフォローに水戸部先輩が入り、テツヤくんの機転パスで日向先輩へ…
そして3Pをきめた。
結果は73対71で、誠凛の勝ちだ。
喜びに沸く誠凛チーム。肩を落とす正邦チーム。
でもその中、津川くんだけ納得がいかないようだった。
「なんでだよ! 誠凛なんて、去年できたばかりのところだろ。練習だって、絶対うちのほうがしてるのに!去年なんて、相手にもならなかったのに!強いのは、強いのはどう考えてもうちじゃん!!」
「やめろ津川」
「強い方が勝つんじゃねぇ。勝った方が強いんだ。あいつらのほうが強かった、それだけだ」
リコさんも感動して涙を流していた。
去年の大敗を考えたら、嬉しくて仕方ないのだろう。
「おめでとう、みんな…」
「しゃんとしろ監督。まだ泣くとこじゃねぇよ。喜ぶのは次の決戦に勝ってからだ」
そして次は…秀徳との決勝戦だ。