『第4章』正邦との試合




数日後
 
 
誠凛バスケ部のメンバーは次の試合の対戦相手、正邦高校のビデオを見ていた。
なんでも、この高校はバスケに古武術を取り入れていて、普通のチームとは違うらしい。
確かに、普通のバスケの体使いとは違うが違和感がなく、むしろしっくりきている節がある。
 
『正邦高校は都内トップのディフェンス力らしいです』

「へぇ〜そんな硬いのかこいつら」

火神くんは試合を見ながらそう呟いた。
 
確かに試合を見ていて、ディフェンス能力の高さが目に見えてわかる。見た感じマンツーマンの守りだ。相当ディフェンスに自信がないとできない。さらに相手に対しての超密着でプレッシャーをかけてくる。これはやりにくそうだ。
 


『特に9番の彼。中学時代、初めて間もないといえど涼太くんを止めた人です』



「「まじかよ!!??」」

 
それは正直驚いた。このあいだの練習試合では負けていてもあの黄瀬涼太を止めるほどのディフェンス力。


「まぁ相手がどんなに強かろうが、俺たちは絶対に勝つ!」















ーーーーーーーーーそして試合当日
 

控え室にて、先輩たちの想いをわたし達1年生は聞いていた。
 
 
「これから準決勝だ!正直、去年正邦と試合をして大敗した。そん時は本当にバスケを辞めたくなった」

 
去年の大敗。先輩達は一度対戦して経験している。そして、この試合にどれだけ思いを込めてるか....絶対に負けられないとより強く思った。

 
「でも、去年とは違う!強くなった誠凛を見せてやろうぜ!」


「「「「「おう!!」」」」


「火神くんは、バスケを嫌いになったことがありますか」

「は? いや、ねぇけど」

「僕は、あります。理由は違うと思います。でも、気持ちはわかります。今はあんなに明るいけど、でも、好きなものを嫌いになるのは、すごく辛いです」


『テツヤくん…』


「緑間くんと話した時、過去と未来は違うと言ったけど、切り離されてるわけじゃありません。この試合は、先輩たちが過去を乗り越える、大事な試合だと思うんです。だから…」






“ 優勝したのに…胸が痛い…。息が苦しい…これが……こんなものが勝利と呼べるのか?…もう、僕には分からない。じゃあ、勝利ってなんですか…?”





あぁ、あの時のテツヤくんの表情が脳裏に浮かび上がった。








これから誠凛高校と正邦高校の試合を始めます!


 
「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」

 
挨拶が終わると一度ベンチに戻る。
その時あの9番が近寄り火神くんに話しかけていた。

 
「誠凛超弱いのに強いの一人入ったっていってたけど、君かな?まぁでも今年も俺たちが勝つから!」


「「「「「あ?」」」」」

 
9番の一言により、火神くんだけでなく全員がそついに殺意を抱いた。
 

「おい、津川。やめとけ」

「あいて!!」

正邦のキャプテン岩村さんに9番津川くんが殴られていた。



試合開始後ーーー


超密着型ディフェンスに苦戦する誠凛。
そして火神くんもファウルをすでに2つも取っている。


「古武術だろうがなんだろうが知るか。バスケはバスケだろ」

「俺はバスケ嫌いになったりとかはしねぇし、全部は理解できねぇけど、最後の言葉だけはわかったぜ!!」


(だから、改めて思いました。この試合、絶対、勝ちたいです)



どうやら吹っ切れた火神くんのダンクで、先輩たちも本来の力を発揮することができるようになった。








「いや、これからですよぉ。楽しくて、苦しいのは」
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