『第4章』正邦との試合
「第2Q残り4分でもう30点差…。流石…って感じね」
センターの大坪さんが入れたことにより、点差は30に。
同時に、会場が歓声の渦に巻き込まれる。
河原くんが何故か簡単そうに見えると呟くと、日向がミスがないからだと答えた。
「基本がガッチリできてるってことだよ。ま、あくまで基本だ。それ以上の理由が当然ある。それは───」
ガァンッ
「絶対的な得点源<スコアラー>がいるってことだ…」
「すげぇダンク!!」
「マジあれ、高校生!?」
「また一段と力強くなってるわね」
日向先輩とリコさんが注目しているのは…先程ダンクを決めたセンターであり、キャプテンの大坪さんだ。
秀徳はもともとインサイドが強いチームだてきえ、と聞いている。
「去年、あいつ一人でも手に負えなかったんだけどな…」
『──けれど、今年はそれに加えて緑間くんがいます。かなり厄介ですよ、これは…』
「ダメだ! 中を固めろ! 外はある程度やられてもしょーない!」
どうやら相手は大坪さんを止められないと踏み、中をしっかり守ることに作戦を変えた。しかし、外には....
「ある程度しょうがない? だからお前らはダメなのだよ」
緑間くんがシュートモーションに入る。
「なぁ黒子」
「なんでしょう?」
「緑間ってシュート外したことあるの?」
「僕は彼がシュートを外した所を見たことがありません」
緑間から放たれたボールは天井付近まで高く上がり、ゴールへと落ちていく。寸分の狂いもなく、リングにも触れず吸い込まれていく。
「ええ、5本中5本…。今日は調子、良いのね」
そのセリフに私とテツヤくんが驚いた顔をリコさんにむけた。
「え、なにかしら…?」
『リコさん、違いますよ』
「え?」
「緑間くんは、フォームが崩されない限り、絶対外しません」
「「「!」」」
その時、緑間くんのループが異常に高いシュートが、またしても綺麗な音を立てて入った。
吸い込まれるようなシュートに、周りから歓声があがる。
『彼のシュートは着弾までの時間が異常に長いです。精神的にもキますよ』
日向さんは少し違和感に気付いているみたいだ。
彼のシュートのループの高さに。
「よーし、じゃあ帰──」
「るなぁー!!」
「「いてぇ!!」」
「今日、もう一試合あんのよ!!バカか…バカなのか!!」
「冗談だよっ!!暗いムードだったからさぁ…」
「え、マジ!?」
「やっぱバカか!バカガミか!!ちゃんと表見とけ!!」
日向先輩は冗談だったようだが、火神くんは本当に知らなかったらしく、本気で驚いた様子だ。
それには、流石のテツヤくんも呆れていた。
『恐らく、準決勝は正邦。決勝は秀徳となると思います』
「つまり最終日は、北と東の王者と二連戦なのよ!!」
「ハッ、一日に二試合できて、しかも両方強ーんなら、願ったり叶ったりじゃねーか!!」
周りがええぇーと驚きの声を上げるなか、テツヤくんも賛同した。
「すいません。僕もちょっとワクワクしちゃってるんですけど…」
「はぁ!?何、お前も火神菌伝染ったの!?」
「何だよ火神菌って!?」
「それは嫌です」
「何か否定の仕方もムカつくぞ、黒子テメー」
「でも───逆境<ピンチ>ってちょっと、燃えません?」
この2人は正反対にみえて、性格は似ているところが多いのかな?
それとも、青峰と同じでバスケだけは気が合うのかな?