『第4章』正邦との試合
初戦を突破した誠凛高校は、その後もその勢いを保ったまま勝ち進んでいく。
誰も火神くんを止められず点差は開くばかり。テツヤくんを終始温存することができた。
「僕も試合に出たいです。ウズウズします」
ピーーーーー!!
96対54で誠凛高校の勝ち!
『おめでとう、お疲れさまだね!』
「おう!まぁこれで終わりじゃねぇーし、次も勝つ!!」
「僕は全然出れてないので早く試合に出たいです。火神くんだけずるいです」
『まぁテツヤくんの力は、見られれば見られるほど効果薄くなるから、リコさんの指示が正しいと思うよ』
「それは、わかっています。だから次の試合が楽しみです」
「「「「「秀徳高校だ!!」」」」」
ああ、次の試合か…
和成と緑間くんの学校だ、そして泪の母校…
秀徳高校が体育館に入ってくると、大きな歓声が上がった。
あれが秀徳高校か。「キセキの世代 緑間真太郎」を勝ち取った東京の古豪。
「キセキの世代だけあってオーラがやばいな」
誰が見てもわかるほど、緑間くんからは強者のオーラが出ていた。
「よう、お前が緑間真太郎…だろ?」
火神くんが緑間くんに声をかける。
「……そうだが。誰なのだよ、君は?」
「プッ(知ってるくせに…何のプライドだよ、それは…)」
緑間くんがそう返すと、火神はスッと左手を伸ばす。握手かと思った緑間は、同じく左手を出すが……
火神くんは自分の名前をマジックペンで、緑間くんの掌に書いた。
『ちょっと、火神くん!』
「しーちゃんっ!真ちゃんまじ面白いっぷぷ、だめだ、笑い止まらねえ」
『和成、シーっ!』
「フツーに名乗っても、いかにも覚えてないとか言いそーなツラしてるからな、お前。先輩達の雪辱戦<リベンジ>の相手には、キッチリ覚えてもらわねーと」
「…フン、雪辱戦<リベンジ>?随分と無謀なことを言うのだな」
「あ?」
『…』
「誠凛さんでしょ?てか、その先輩から何も聞
いてねーの?」
誠凛は去年、決勝リーグで三大王者全てにトリプルスコアで、ズタズタにされたんだぜ?
和成の言葉が、火神くんの体中を稲妻のように駆け巡った。そして、同時にあの時の二年生達の表情と言動の意味を理解する。
彼我の差は圧倒的だと。
歴史は繰り返されるだけだと。
緑間くんは至極当然のように、告げた。
『…やってみないとわからないよ?』
「過去の結果で出来るのは、予想までです。勝負はやってみなければ、わからないと思います。
─────緑間君」
「黒子…」
緑間くんとテツヤくんの視線がガッチリと合わさる。火花が散りそうなくらいだ。
「黒子…やはり…お前は気にくわん。何を考えているか分からん目が、特にな…。言いたいことは山ほどあるが、ここで言っても虚しいだけだ。まずは、決勝まで来い」
緑間が言った直後だった。
ガシッという音と共に、和成がテツヤくんの首に腕を回す。
「気にすんなよ、あいつツンデレだから!!本当は超注目してんだぜ~!?」
「いつも適当なことを言うな、高尾」
「いつまでしゃべってる、二人共!!行くぞ!!」
「…黒子、そして藍澤…見ておけ。
お前たちの考えが、どれだけ甘ったるいか、教えてやろう。そして秀徳に来なかったことを、藍澤は後悔するがいい」
「後悔させても仕方なねーじゃん!たく、ツンデレだなぁ…。ま、じゃねー!しーちゃん」
そして私たちは応援席に上がり、秀徳の試合を見ることにした。