『第3章』新協学園との試合
5月16日、I.H当日。
会場に、誠凛高校バスケットボール部員達が集まった。
「てか、お父さんいなくね?」
試合前、半コートでアップをしていると、日向先輩が呟いた。
当然、お父さんと戦うために特別メニューをこなしてきた火神くんは、ショックを受けているようだ。
だが次の瞬間、火神くんのそれは杞憂となった。
「すみません、遅れましたーーっいで!」
身長が高すぎるために、扉に顔面をぶつけてしまったお父さんがいた。
「日本低イ、ナんデも…」
「「「(デケーっ!!ってゆーかなんか…長ぇ~!!)」」」」
「何やってんだ、早く来い!!」
「すみません、遅れましたー」
「何でそこだけ流暢なんだよ!!」
遅刻したにも関わらず、悪びれる様子もなく中に入ってくるお父さん。
他の部員達は慌てている。
「てか、海常に勝ったってまじ??」
向こうの主将らしきひとが、日向先輩にきいている。
「なんだぁ、思ったよかたいしたことないんだ」
「カイジョー?」
「"キセキの世代"入ったとこ!!教えたろ!!」
「キセキノセダイ…負け…キセキノセダイに勝ツため呼バれタのに…、ソんナ、ガッカリダよ、弱くて…」
なんだろう、この舐めてかかってきているかんじは。
あの海常の監督にも最初むかついたけど、それよりももっとなんだかモヤモヤする。
「ダーメですヨ、ボクー。子供がコート入っちゃあ」
どうやらお父さんはテツヤくんとぶつかったみたいで、なぜか抱き上げられていた。
これはたかいたかーいのポーズだ。
「ばか!そいつは相手チームの選手だ!!」
「……?センシュ…!?」
お父さんは驚き声を上げ、溜め息を吐いてテツヤくんを降ろすと、背を向けた。
「あんな子供いルチームに負け?キセキノセダイて、ミんな子供?」
「ハハッ、かもな!」
ああ、わかった。
キセキの世代を舐めてるから余計にむかつくんだ。
「正直…色々イラッときました」
「つーか、何気に負けず嫌いなトコあるよな、黒子…。んじゃ、まあ…子供を怒らせるとけっこー怖いってコト、お父さん達に教えてやるか!!」
“それではこれより、誠凛高校VS新協学園高校の試合を始めます!!”
「「「しゃす!!」」」
「………。今日のテキもミんな小さイ…。日本人、ゴハン食べてる!?シかもさっきハ子供がベンチにいたシ…」
「子供じゃないです」
「ワァッ!?……て、ベンチじゃなくテスターター!?ナニソレ!?」
(…もしかして、試合の度に黒子驚かれんのかよ…!?めんどくせーから、次からあらかじめ言っとこう…)
火神くんが珍しくジャンプボール……高さで負け、ボールは新協学園。
その後も、ノーフェイクのジャンプシュートを決めたり、日向先輩のフリーシュートを弾くなど、とことん自分の高さを生かしたプレーをしてくる。
「デタラメだろあんなの…。やっぱり、ズリーよ外国人選手なんて」
「………誠凛さんてアレ?スポ根系?」
「は?」
ベンチにいた降旗くんの呟きが聞こえたのか、向こうのキャプテンが日向先輩に言った。
「いるんだよねよくさ~。[助っ人外国人ズルい!]みたいな?別にルール違反とかしてねーし。強い奴呼んで何か悪いの?楽だぜー、アイツにボール回しゃ、勝手に点入ってくし。楽して勝つのがそんなにイヤかね?どう?」
「………。楽かどうかは知んねーけど、そのポリシーなら、逆に文句言うなよ?」
「は?」
「とんでもねー奴らなら、誠凛にもいるし。呼んでねーけど」
やはり日向先輩は一言余計だけどかっこいい先輩です。