『第2章』海常高校と練習試合
おそらく、テツヤくんはリコさんやみんなに大事なことを言い忘れているだろう。
『テツヤくんのミスディレクションの効力が切れてきています』
「え、それってどういうこと?!」
やっぱり伝えていなかった…
「この力は使いすぎると相手に慣れられてしまい、効果が薄まっていってしまいます」
「......え⁉︎」
『そして、おそらく前半のハイペースのせいで効力が薄くなってきています』
「........そういう大事な事は最初に言わんかい!!」
「聞かれなかったので....。」
「聞かれなかったらなんも言わないのかい!」
リコさんはテツヤくんにヘッドロックをしながらいった。
タイムアウトが終わり、リコさんは黒子くんしばいて終わってしまったと嘆いている。
その後も黄瀬くん対策をしても、他の海常の選手が一枚上手で、点差は開き続けてしまった。
「はぁ....そろそろ認めたらどうっスか?今の君じゃキセキの世代に挑むとか10年早いっスわ。」
「なんだと⁉︎」
黄瀬くんはため息を一つつくと火神くんにいう。
「この試合もう点差は開く事があっても縮まる事はないっス。チームの戦術以前に、君らとうちじゃ基本性能が違いすぎる。唯一対抗できると思った君だったけどだいたい実力はわかったっス」
「....まだおわってねぇ!」
火神くんは諦めていない…
けれど黄瀬くんにいとも簡単に止められスティールされ、そのまま相手のゴールまで上がりダンクを決められてしまう。
「終わってるんスよ。君1人じゃ俺には勝てない。どんなに足掻いてもこの差は埋められはしない。所詮君はこっち側の人間じゃないんスよ。弱い奴には興味ないっス。雫っちにも目を覚ましてもらわないと…」
(これが実力の差か。たしかに今の俺にはこいつには勝てない。だが、諦めるわけにはいかねぇ!)
「黄瀬...まだ試合はこっからた。俺は諦めねぇ!絶対お前をギャフンと言わせてやる!」
「ふん...身の程しらずっスね。言っとくけど君がどんな技をやろとも、俺は見ればすぐに倍返しできる。要するに、俺には勝てないって事っス」
「たしかにお前は見ただけでなんでもできる。
でも、見てもできないものがある。つまり....こいつだろ!お前の弱点!」
火神くんは近くにいたテツヤくんを捕まえ、頭をくしゃっとしながらそうつげた。
「たしかに黒子っちの技は見てもムリっすけども、それで何が変わるんスか?」
「変わるさ!第2Qホエズラかかせてやる」
火神は自信満々にそう告げてベンチに戻った。
『火神くんが言いたいことは、黄瀬くんが真似できないテツヤくんのパスで連携を取ること…でしょ?』
「なるほど…いけるかもしれないわね」
そして第2Q、作戦通り、テツヤくんを生かしたパス回しと、火神くん以外とも連携をとることで、日向先輩の3Pが決まったり、黄瀬くんを抜くこともできた。
日向先輩の3Pは、打った後に入るのがわかるくらいとても綺麗で爽快だ。
「黒子っち...。」
「黄瀬君は強いです。僕はおろか火神君でも歯が立たない。でも...力を合わせれば...2人でなら戦える!!」
黄瀬くんは少しフラストレーションが溜まった表情でテツヤくんと火神くんを睨んでいる。
「黒子っち変わったっすね。帝光にこんなバスケはなかった....」
そんなことないよ。昔はみんなも協力してチームを勝利に導いていたのに…
「けどそっちも俺を止められない!黒子っちの連携をお返しすることはできないけど...フルで能力が使えない以上後半はジリ貧になるだけじゃないスか」
そしてテツヤくんと黄瀬くんの1on1が始まった。
おそらく、テツヤくんに黄瀬くんを止めることはできない。と、なるとおそらく狙いは…
「…バックチップね」
『テツヤくんはスティールやバックチップが得意なんです』
「つくづくあなた達には驚かされるわ」
外から3Pを打とうとした黄瀬くんを、今度は火神くんの高いジャンプ力で止める。
「ちくしょう...つまり平面は黒子っちが、高さは火神がカバーするってことっスか!
“バシっっ!”
黄瀬くんが戻ろうと身体の向きを変えた時に、手がテツヤくんの顔に当たってしまった。
テツヤくんの額から血が出ているのがわかった。
『っ!テツヤくん!!』